東京医科歯科大学(医科歯科大)の同大学病院入院患者由来新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ゲノム解析プロジェクトチームは4月8日、2021年2月から3月中旬までの期間において、同大学病院への入院または通院歴のある新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者12名から、免疫逃避型変異(E484K変異)系統株のさらなる感染事例だけでなく、国内系統株に新規変異が認められるなど、多様なウイルス株の市中感染事例を確認したと発表した。

同成果は、同大大学院 医歯学総合研究科 ウイルス制御学分野の武内寛明准教授・医学部附属病院病院長補佐、同・難治疾患研究所 ゲノム解析室の谷本幸介助教、リサーチコアセンターの田中ゆきえ助教らのプロジェクトチームと、医科歯科大の木村彰方理事・副学長・特任教授、同・医学附属病院 感染制御部の貫井陽子部長らの研究チームによるもの。

医科歯科大ではこれまで、同大学病院に入院または通院歴のあるCOVID-19患者を対象として、さまざまな変異を有するSARS-CoV-2系統株の感染事例について報告を行ってきた。4回目となる今回の報告では、2021年2月から3月中旬までの通院および入院患者12名から、E484K変異株の感染事例が確認されたという。

また、同大学病院でこれまでに確認していない新たな変異を有する多様な国内系統株の感染事例も確認されたとしている。ただし、感染性の増大が懸念されている「N501Y変異」に関しては、2020年11月から2021年3月中旬までに行われたこれまでの解析においては、その系統株は検出されていないとしている。

なお、日本国内への流入により、2020年12月下旬から感染性が増大していることが示唆されているのが、英国型変異株「B.1.1.7系統株」、南アフリカ型変異株「B.1.351系統株」、ブラジル型変異株「P.1系統株」などだが、2021年1月以降、B.1.1.7系統株の市中感染事例が増えつつあり、また重症化率の上昇が懸念されていることから、より強固な感染拡大防止対策を講じる必要性に迫られていると考えられると研究チームでは説明している。

また、研究チームでは、今回の結果から、日本国内においてSARS-CoV-2が新たな変異を獲得し、流行株の多様性が増している可能性を示していると考えられるとしているほか、今回確認されたさまざまな国内系統株の病原性およびワクチンへの影響などについては、現時点においては判断が難しく、引き続き解析および調査が必要となるともしている。

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    東京医科歯科大学 医学部附属病院に入院または通院歴のあるCOVID-19患者由来SARS-CoV-2全ゲノム解析から得られた系統株一覧 (出所:医科歯科大プレスリリースPDF)