この半導体ニュースのまとめ
・ロームが量子アニーリングを半導体前工程に導入して生産最適化を実現
・生産計画の最適化により工程間の待ち時間削減と設備稼働率向上を実現
・複雑化する製造工程に対し量子計算を活用した最適化の実用化が進展
ロームは6月2日、Quanmaticの量子アニーリングを活用した最適化計算システムを、同社グループの生産拠点であるラピスセミコンダクタ宮崎工場の前工程に本格導入したと発表した。半導体製造の前工程への量子アニーリング導入は世界初としており、生産効率を約3%改善する効果を確認したとしている。
量子アニーリングで生産計画を最適化
半導体製造の前工程は、成膜や露光、エッチングなど多数のプロセスから構成されており、製品種類や装置条件、工程順序などの制約が複雑に絡み合うことで、生産計画の最適化が難しい領域となっている。
今回導入されたシステムは、Quanmaticの量子・古典ハイブリッド計算技術による最適化アルゴリズムと、ロームが蓄積してきた製造データを組み合わせたものとなる。
これにより、生産計画の自動立案と最適化が可能となり、工程間の待ち時間削減や設備稼働率の向上を実現し、結果として生産効率の改善につながったとする。また、状況変化に応じた迅速な計画の再立案も可能となり、変動の多い生産環境への対応力も向上したという。
EDS工程から前工程へ適用領域を拡大
ロームは2023年から量子技術の活用に取り組んでおり、先行してウェハ上に形成したチップの電気的特性をテストする工程である「EDS(Electrical Die Sorting)工程」で実証および導入を進めてきた。
2025年にはEDS工程においてセットアップ時のロスを約40%削減する成果を発表しており、今回の前工程への適用はその発展形となる。
前工程はEDS工程と比べて、製品、製造装置、処理条件、工程順序などの種類や制約条件が多く、より大規模かつ複雑な生産オペレーションが求められることとなる。今回の取り組みは、これまでのEDS工程で得られた知見を活かす形で進められてもので、半導体製造の本質が装置やプロセスの集合から、多数の制約条件を持つ最適化問題へと変化していく可能性を示したものと言える。
工程数の増加と条件の複雑化により、どの順序で処理を行い、どの装置を割り当てるかといった組み合わせの最適化が生産性に直結する要素となることを踏まえると、量子アニーリングはそうした組み合せ最適化に適した計算手法であり、従来手法では解ききれなかった問題に対する新たなアプローチになることが考えられる。
量子技術が製造インフラに組み込まれる時代へ
ロームは今後、今回開発した最適化システムをグループ内の他工場にも展開していく計画としているほか、前工程およびEDS工程の両方で量子アニーリングやその関連手法の活用を広げていくともしており、量子アニーリングのような新たな計算技術が製造オペレーションの中核に組み込まれる段階に入りつつあることを示すものとなる。今後、半導体製造領域はいかに現有する装置群を最適に活用していくかが事業成長を考えるうえでの1つの方向性となる可能性がある。