芝浦工業大学(芝浦工大)は11月17日、標準的なインクジェットプリンタを利用して、紙へ自律的に折り畳む順序をプログラムし、構造や動きの印刷を可能にしたと発表した。また、紙のセルロース繊維と印刷する薬液の反応をエネルギーとして、自律的に立体構造が形成され、さらに動き出すソフトロボットの開発に成功したことも合わせて発表された。

同成果は、同大学工学部 電気工学科の重宗宏毅助教、同大学工学部 機械機能工学科の前田真吾准教授、早稲田大学 理工学術院 基幹理工学研究科 機械科学専攻の岩瀬英治教授、同・先進理工学部 応用物理学科の橋本周司教授、同・創造理工学部 総合機械工学科の菅野重樹教授、同・先進理工学部 応用物理学科の澤田秀之教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、「Advanced Intelligent Systems」に掲載された。

今回の研究による紙が自動的に折り畳まれ、折り紙構造を作り出す方法は、植物の駆動メカニズムを模倣して確立された。標準的なインクジェットプリンタのインクカートリッジに薬液を入れ、紙に単純な直線を印刷することで、線を起点に紙が自動的に折り畳まれる仕組みだ。折り畳み動作には、電力などの外部エネルギー源は不要である。

そして、濃度の違う薬液をインクカートリッジに設置することで、折り畳みの順序付けも実現した。それに伴い、薬液の濃度と折り畳み時間の関係性についての解明にも成功。カートリッジの数を増やすほど、より多くの動きを紙に対してプログラムできる可能性があるという。

共同研究チームは今回の技術に対し、構造や動きを印刷することで、柔らかくもろい製品の立体的な包装に活用したり、太陽電池パネルを常に太陽に向かせることでエネルギー収集量を増やしたり、技術の幅広い応用が期待されるとしている。

また今後は、今回発表した「紙が自律的に折り畳まれる方法」と、以前発表した「電気配線を普通のプリンタで紙に印刷する方法」のふたつの技術を組み合わせることに取り組むとした。どちらも一般的なインクジェットプリンタを用いた手法であり、特殊な機材を必要としていないのが特徴だ。短時間で簡単に電子部品や紙製ソフトロボットなどの製作を可能にしていくとしている。

  • 折り紙

    自動的におられる構想物の印刷。(A)薬液濃度の異なるインクを戦略的に印刷することで、それぞれの折り目の位置や折れるタイミングを制御することができ、1、2、3の順番で折り畳むことに成功。(B)紙飛行機も折れる。(C)紙のはしごを傾けたり、かけたり、引っ込めたりする様子 (出所:芝浦工大プレスリリースPDF)