ならびにHuawei Cloud Computing Technologyをはじめとする世界中の38のHuawei関連会社を新たにエンティティリストに追加したことを発表した。

米国商務省 産業安全保障局(BIS)は8月17日(米国時間)、Huawei Technologies(Huawei)およびエンティティリストに掲載されている企業の米国以外の関連会社による、米国の技術およびソフトウェアを用いて米国内外で生産された品目へのアクセスをさらに制限したこと、ならびにHuawei Cloud Computing Technologyをはじめとする世界中の38のHuawei関連会社を新たにエンティティリストに追加したことを発表した。

  • 米国商務省

    米国商務省の発表文(出所:米国商務省Webサイト)

これにより、輸出管理規則(EAR)の対象となるすべての該当製品にライセンス要件が課されたこととなる。BISは許可を求めてきても基本的に一切のライセンスを与えない方針なので「禁止」と同じだと半導体業界関係者は指摘している。

またBISは、Huaweiもしくは他のエンティティリストに載っている企業が購入者、中間者、またはエンドユーザーとして機能する場合など、エンティティリストの当事者が関与する商取引の輸出管理管轄の対象となる商品に関連するトランザクション(取引)にライセンス要件を課し、これらの措置を直ちに発効している。

外国製標準半導体もHuaweiへの販売を禁止

2020年5月、BISは米国の特定のソフトウェアおよびテクノロジーを使用して受託製造されたHuawei仕様の半導体のHuaweiへの販売を事実上禁止するようにHuaweiへの制裁を強化したが、今回はその制裁をさらに強化し、Huawei仕様の特注品だけではなく、一般標準商品(例えばSamsungやMediaTekの標準半導体製品)の取引にまで介入したものとなっている。

BISは「Huaweiが半導体製品を入手する抜け道を塞ぐために、規制ルールをさらに厳格化させた」としている。これにより、Huaweiは他社の5G対応アプリケーションプロセッサを搭載したスマートフォンを製造する方向性も断たれたことになる。

商務省の通達には「この改正により、米国のソフトウェアまたはテクノロジーを用いて開発または製造された米国外の企業の半導体チップを米国企業の半導体チップと同様にHuaweiが入手することが制限されることになる」と解説がつけられている。「制限」という言い方をしているのは、正確には、出荷が許可されるためには商務省からライセンスを得る必要があるということだが、同省は許可を出さない方針を貫いているので、事実上、「禁止」ということである。

米国商務省長官Wilbur Ross氏は「Huaweiとその関連企業は、中国共産党の政策目標を達成するために、米国のソフトウェアとテクノロジーから開発または生産された高度な半導体を入手しようと必死になってきた。我々がHuaweiが米国のテクノロジーへのアクセスを制限しているため、Huaweiとその関連会社は、米国の国家安全保障と外交政策の利益を損なう方法で米国のテクノロジーを利用するためにサードパーティを介して入手しようとしている」と今回の通達に至った経過を説明している。

米国半導体工業会が困惑の声明を即座に発表

米国の首都ワシントンD.C.に本拠を置く米国半導体工業会(SIA)は、米国商務省が発表した今回の輸出管理規則の変更に即座に反応し、8月17日(米国時間)付けでCEO兼プレジデントのJohn Neuffer氏の声明として以下のようなものを発表した。

「我々は、今回の米国商務省の発表した規則を丁寧に見直している最中だが、商用チップの販売に対する今回の広範な制限は、米国の半導体業界に大きな混乱をもたらすことを危惧している。米国企業への悪影響を押さえながら、国家安全保障の目標を達成することを目的とした、これまでの狭い範囲の規制からの拡大に我々は驚くとともに困惑している。我々は、中国に不敏感な(中国が軍事には利用せず、米国の国家安全保障に影響を与えないような)製品を巨大市場である中国に販売することにより、米国での半導体研究と革新が推進されるという見解を繰り返しておきたい。これは、アメリカ経済の強さと国家安全保障にとって重要なことである」

米国経済の成長に向け、米国政府とともに歩みロビー活動を行うSIAはその立場上、なかなか米国政府に逆らうことはできないが、今回の声明はロビー活動が奏功せず、SIAの思惑に反する規制強化が突然発表されたことに対するぎりぎりの不満表明のようである。

世界の半導体産業にも影響が懸念

QualcommはSIAとともに、米国政府に対してHuaweiグループへの半導体製品の販売制限を撤回するように、長きにわたってロビー活動を行ってきており、このままでは「米国政府の米国半導体製品の販売規制より、米国はQualcommの海外の競争相手(スマホのアプリケーションプロセッササプライヤであるSamsungやMediaTek)に年間80億ドルもの価値のある市場を手渡してしまう」と米国政府を批判していた。

そのQualcommは2020年7月、Huaweiとのライセンス紛争を解決し、Huaweiとの間で特許に関する契約を締結したばかりであるから、その焦りはなおさらである。

ただし、今回の商務省の決定は、SIAやSIAに参画する米国企業の要望を無視したものだが、米国半導体のライバルである海外半導体企業がHuaweiと取引を行うことを禁止するものであり、米国企業だけではなく、日本、台湾、韓国はじめ世界中のすべての半導体企業に重大な影響をもたらす可能性が高いと言える。もちろん、米国の指示を無視してHuaweiとの取引を行うという選択肢もないことはないが、その場合は、米国の敵対企業として認定され厳しい制裁が予想される。また、米国企業が提供するEDAツールやIP、半導体製造装置を一切使わないという選択肢もあるが、それでは先端半導体製品は作れないこととなり、半導体各社は難しいかじ取りを迫られることになりそうである。