半導体市場調査会社の台TrendForceによると、2020年第1四半期のDRAM平均販売価格は、サプライヤ各社が在庫を削減できたため、前四半期比で0~5%上昇したという。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による物流の混乱により、DRAMビット出荷数量そのものは下落。その結果、DRAM市場規模は前四半期比4.6%減の148億ドルに留まったともしている。

主要DRAMサプライヤ各社の業績も悪化

こうした結果、主要DRAMサプライヤの売上高はSamsung Electronicsが前四半期比3%減、SK Hynixが同4%減、Micron Technologyが同11%減となった。なお、Micronは会計時期が異なるので、2019年12月~2020年2月期を指していることに注意が必要である。

またシェアに関しては、Samsungが44.1%、SK Hynixが29.3%、Micronが20.8%となった。各サプライヤともに、2020年の生産計画に大きな変更を行っていないため、市場シェアについては第2四半期もほとんど変化はないものとTrendForceでは予測している。

  • DRAMランキング

    2020年第1四半期の自社ブランドDRAMサプライヤ売上高ランキング (出所:TrendForce)

価格上昇が営業利益率の改善に貢献

また、第1四半期のDRAM価格の上昇は、サプライヤ各社の利益率を改善させたという。Samsungは、前年同期の日数が2020年第1四半期に比べて比較的多かったこともあり、営業利益率は32%に下げたが、実際の収益性は確実に回復しているという。また、SK Hynixの営業利益率は前四半期の19%から26%に上昇している。Micronは1Z-nmプロセス品への移行に起因する運用コスト増大により、営業利益率は前四半期比でわずかに低下したというが、3~5月期には回復する見込みだという。

第2四半期の売上高は前四半期比2割超か

TrendForceによると、新型コロナの影響により、本来は2020年第1四半期に行われるはずだった注文が第2四半期にずれ込んだため、第2四半期もDRAMの販売価格が上昇しており、ビット出荷が回復するにしたがって、第2四半期のDRAM市場は前四半期比で20%を超す成長を遂げる可能性があるという。そのため、サプライヤ各社も売り上げ、利益ともに改善する見込みだという。

需要急増のイメージセンサの生産を優先するSamsung

技術と生産に関しては、Samsungはライン13でのウェハ処理能力をDRAMからCMOSイメージセンサの生産にシフトし続けており、同ラインでのDRAM生産の不足を補うために平澤事業所のP2Lラインで1Z-nmプロセス品の生産を開始する予定だという。

新型コロナウイルスの世界的感染拡大で、全体的な需要が弱いままであることから、同社の設備投資計画は保守的なままである。そのため、2020年に追加される予定の生産能力は限られる模様だ。

SK Hynixも、ファブM10のウェハ処理能力をCMOSイメージセンサに徐々にシフトさせており、DRAMの生産はメモリ生産の主工場であるM14で行われている。同社は、2020年第2四半期に中国無錫でのウェハ投入枚数をわずかに増やすことを決定している。それにもかかわらず、全体の生産能力を大幅に増やすことなく、主に1Y-nmプロセス品への移行を通じて生産チップ数量を拡大する予定である。

そしてMicronについてだが、同社の2020年の設備投資額の多くは、1Z-nmプロセスを量産段階に移行し、生産ビット数量を上げるために予算が組まれているため、DRAMのウェハ生産能力は、2019年とほとんど変わらない見込みである。Micronから出荷された1Z-nm試供品のテストに顧客が熱心であるため、Micronの1Z-nm製品の大量生産は間もなく実現されるとTrendForceは見ている。

全体として、上位のサプライヤ3社は、プロセスの開発と導入に多少の遅れがあったとしても、テクノロジーの移行を順調に進めており、スケジュールを遅らせるような深刻な品質問題には遭遇していない。また、DRAMの生産能力そのものは、3社ともに設備投資を抑制していることから、目立った成長を示すとは思われず、2020年のDRAMビット出荷数量の増加は、製造ラインでのウェハ投入数量の増加ではなく、主にサプライヤの1Y-nmと1Z-nmへの移行によるウェハ当たりのチップ数の増加にとってもたらされるものとなる見通しである。

Nanyaのみ前四半期比で2桁成長を達成

ちなみに台Nanyaはビット出荷数量を前四半期比で2桁%引き上げることに成功したこともあり、主要DRAMサプライヤの中で唯一、売上高を同11.3%増と2桁成長を達成した。営業利益率についても、研究開発費の効果的な管理により、前四半期の11%から12.7%へ回復している。同社はDRAMの価格上昇の恩恵から、第2四半期の収益性はさらに改善する見込みだという。