市場動向調査会社の仏Yole Développementは6月10日(欧州時間)、2018年におけるMEMS市場の動向とMEMSデバイスを提供する企業ランキング・トップ30を発表した。 これによると、2018年のMEMS企業トップ30社の総売上高は前年比5%増となる103億ドル規模で、市場全体が116億ドルであることを考えれば、これら30社で全体の90%を占める規模であるという。

業界トップはBroadcomで、2位の独Robert Boschとともに14~15億ドル規模の売上高でトップグループを形成し、3位以下を大きく引き離している。

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    2018年のMEMSメーカーの売上高ランキングトップ30社(単位:百万ドル) (出所:Yole Développement)

トップのBroadcomは5G向けRF MEMSでさらに躍進へ

トップのBraodcomは、2017年に続いて2年連続。2015年は4位だったが、2016年にSTMicroelectronicsとTexas Instruments(TI)を抜いて2位に浮上し、2017年にBoschを抜いてトップに立った。同社のけん引役となっているのが、スマートフォンの対応周波数の増加に伴うRFの周波数帯域フィルタやフロントエンドモジュールでの需要が増加するRF MEMS。今後も5Gの導入でさらに需要が高まることが期待されるが、同じRF MEMSを主力とする米Qorvoは減収となっており、これについてYoleは同社が6インチから8インチへとプラットフォームを移行する段において生産に遅れを生じさせたためであろうと見ている。

2位のBoschについて、Yoleの技術・市場アナリストであるDimitrios Damianos氏によれば「すべての新車が平均5つの同社製MEMSを搭載し、世界中のスマートフォンの半数が同社製MEMSを少なくとも1つ搭載している」としており、今後もBroadcomと激しいトップ争いを繰り広げていくことが見込まれるとしている。

3位のSTは車載、産業、民生まで幅広いMEMS製品を提供するほか、世界最大級のMEMSファウンドリとして他社のMEMSも生産受託している。4位のTIは、売り上げを拡大するMEMSメーカー各社の中で例外的に、この2年、業績を下降させている。要因としては、同社の主軸であるデジタルミラーデバイス(DMD)を用いたDLPの市場が飽和気味であることにあり、同社は車載など新たな用途開拓を進めている。

トップ30社中日本企業は10社

トップ30社中、日本企業は9位にTDKグループ、10位にパナソニック、14位にデンソー、16位にキヤノン、17位にAKM(旭化成マイクロエレクトロニクス)、18位に村田製作所、21位にアルプス電気、27位にエプソン、29位にオムロン、30位にソニーセミコンダクタソリューションズと、合計10社がランクインしている。

また、MEMSファウンドリとしての事業規模を見ると、トップはSTで、世界のMEMSファウンドリとして圧倒的な強みを見せている。2位はカナダのTeledyne DALSA、そして3位にソニーとなっている。ソニーは日本最大級のMEMSファウンドリとなっているが、その売り上げを前年比4割増と大きく伸ばした点が注目される。また、5位には半導体ファウンドリでトップのTSMCが入っているほか、8位にはロームも入っている

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    2018年のMEMSファウンドリ売上高ランキング。MEMSファウンドリは、一般に半導体ファウンドリを兼ねている場合が多いが、ここではMEMSファウンドリの売り上げのみとりあげている (出所:Yole Developpement)

今年後半以降緩やかな成長を期待

Yoleによると、「半導体業界は、2017年、2018年と連続して2桁%の成長を遂げたが、2018年第4四半期にスマートフォンおよび自動車の販売が減少し、最終製品、そして半導体、さらにはMEMSの在庫水準を押し上げた。このため、2018年のMEMS業界の成長率は予想より低い5%に留まった。2019年前半、これらの在庫調整が進み、年後半からは緩やかな成長となるだろう」と市場の動きを予測している。ただし、米中貿易戦争が長期化すれば、スマートフォンをはじめとする最終製品の市場が停滞し、景気の回復は遅くなる可能性があるともしている。