--そろそろお時間なので、今後に向けたメッセージをいただければと思います

鹿野氏:実は、Co-Creation Parkは、国内外の出展したいスタートアップ企業に手を挙げてもらって、主催者が場所を提供するわけですが、現在、スタートアップ企業を支援することを目的に、設立当時のGoogleやPayPalが入居したオフィスビルの持ち主であったことなどでも知られるインキュベータのPlug and Play Tech Center(PnP)と連携して、2019年8月をめどにピッチコンテストを開催したいと思っています。そこでの優勝者には、さすがにスケジュールやブース配置の関係上、CEATEC 2019では難しいですが、CEATEC 2020のCo-Creation Parkにて出展してもらう、といったことを企画しています。

どういった企業が優勝者のパートナーにマッチするのかを、実際に会場に連れてきて、出会わせて、どう成長に向けたプロセスを構築していくのか、といったことを目指した取り組みで、Co-Creation Park powered by PnPとしてやっていければという思いです。PnPは現在、グローバルに展開していますので、その力を借りて、数年後にはPnPがそうした海外の有望スタートアップを大挙して連れてくるパビリオンを出展してもらうとか、そういったオープンイノベーションの可能性も切り開いていければと考えています。

2019年単年でできることは限られていますが、こうした2~3年先まで見据えた取り組みまで水面下では進めていますので、個人としては楽しみなことが多いという印象です。

CEATECとしては、イベントのためのイベントにしないようにしていく必要があると常に、共創というキーワードを意識して、新しいつながりを得られるコアとなるものを追求していく必要性を感じています。イノベーションが集まる場所として、単に声高にそれを叫ぶのではなく、実際の質を担保した取り組みを進めていくことが、これから先、本当に生き残っていくために必要なことだと考えています。

ですので、表向きの展示会活動とは異なる取り組みとして、工学系に限らず、さまざまな分野の大学生などをターゲットとしたIoT人材の育成といったこともやっていこうと思っています。そのため、CEATEC 2019が掲げるキーワードは表向きには「政策」「産業」「技術」「海外」の4つですが、実は5つ目として「人材育成」を実施方針の中に明記させてもらってます。もともとCEATECは、広く一般の人に来場してもらってきた展示会です。極端なことを言えば、大臣の隣で高校生が目を輝かせて、最新技術に触れる、という世界だった。そうしたことに改めて気づかされたわけです。主催も3つの業界団体なわけですし、IoTの世界が楽しいものだと、学生たちに感じてもらうということは、そうした産業の次世代育成にも通じるものがあると思っています。

--ありがとうございました。

インタビューを終えて

今回の鹿野氏の話を聞くに、CEATECは展示会であって、展示会ではない存在という理想に向かって、具体的な像が実際に形として見えてきたというのが率直な印象である。

幕張メッセのあの場所に、さまざまな企業や団体を一箇所に集め、最新の技術を幅広く一般に示す、というスタンスから、CPS/IoT展としてメインターゲットをBtoB向けに舵を切った2016年以降、共創をキーワードとしてきたわけだが、そうした中でCEATECが模索してきた目指すべき方向性が、今、ようやく実際の形となって見えてきたとでも言うべきだろうか。その実は、展示会は展示会で重要なのだが、本質は人、技術、企業、さまざまなモノやコトが出会える場を作り上げること、であり、それが実現できるのであれば形にはこだわらないという柔軟なオープンイノベーションを実現する存在とでも言えば良いのだろう。

そのため、CEATECが掲げる理想に共感してもらえるのであれば、老若男女の垣根なく、その持てる力を存分に発揮してもらえる仕組みづくりもいとわない。そんな気概が今のCEATECからは感じられる。

半年前にCEATEC JAPAN 2018に向けた抱負について鹿野氏に伺った際に、同氏は「とにかく箱の中でしかできない、という発想を外したい」という発言をされていた。今回の取材を通して、その具体的な姿かはっきりと示されたわけだが、実際には口に出さなかった取り組みも少なくないようで、その点についての質問にはニヤリと笑ってみせるほど、自分の描いた道筋に実体が伴ってきたという実感があるのだろう。

もし、こうした取り組みがうまく噛み合っていけば、CEATECはCESやIFA、MWCのような世界中から注目を集める日本発のイベントへと進化していくことも夢物語ではないかもしれない。そうした意味では、10月に開催されるCEATEC 2019の実際の姿がどうなるのか、引き続き注目していきたいと思う。