東京大学医学部附属病院(東大病院)は、脂質の1つであるプロスタグランジンD2(PGD2)の肥満制御における働きを調査した結果、脂肪細胞でPGD2のL型合成酵素(L-PGDS)を作ることができないマウスでは、正常なマウスと比べて体重増加が20%以上減少し、内臓や皮下の脂肪量も減少していること、ならびに糖尿病の指標となるインスリン感受性も改善されていることを確認したと発表した。

同成果は、東大病院 眼科の裏出良博 特任研究員(北里大学 薬学部 客員教授)、大阪薬科大学 薬学部 病態生化学研究室の藤森功 教授、同 前原都有子 助教、第一薬科大学 薬学部 薬品作用学分野の有竹浩介 教授、東京大学大学院農学生命科学研究科 放射線動物科学研究室の永田奈々恵 特任研究員らによるもの。詳細は英国科学誌「Scientific Reports」(オンライン版)に掲載された。

研究グループは、これまでの研究からPGD2が、脂肪細胞に蓄積した脂肪の分解を抑制することを報告していたほか、PGD2を生合成するL-PGDSの遺伝子発現が肥満マウスの脂肪組織において上昇することも発見していた。今回の研究では、肥満制御におけるPGD2とL-PGDSの働きの解明を目指し、マウスを用いた実験を行ったという。

その結果、11週間にわたって高脂肪食を与えた場合、脂肪細胞でL-PGDSを作ることができないマウスでは、正常なマウスと比べて体重増加が20%以上減少したほか、内臓や皮下の脂肪量も減少し、個々の脂肪細胞の大きさも小さくなっていることを確認したという。

また、脂肪細胞の分化の程度を測るためのマーカー遺伝子や脂肪酸の生合成に関わる多くの遺伝子の発現も、低下していること、ならびに血液中のコレステロール、脂質、グルコースの値も、正常マウスと比べて、低下していることなども確認。さらに糖尿病の指標となるインスリン感受性も改善されていることも確認されたという。 今回の結果を受けて研究グループでは、L-PGDSが肥満やインスリン抵抗性を進展させる働きが示されたとしており、今後、L-PGDSの働きを抑える化合物による肥満の新たな予防法や治療法の開発につながることが期待されるとコメントしている。

  • L-PGDSがないマウス

    脂肪細胞でL-PGDSがないマウスでは体重の増加が抑制されることが確認された (提供:東大病院)