約46億年前にできた地球に初めての生物が誕生したのは、今から40億年ほど昔だと考えられている。バクテリアのような生物だったらしい。それが連綿と現在の生き物たちにつながっているのだが、その途中で、多いときには生き物全体の9割もが絶滅するような「大量絶滅」がおきている。

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    図 三畳紀末の地層から発見された首長竜の化石(研究グループ提供)

大量絶滅は過去に5回あったとされている。もっとも有名なのはその5回目、恐竜がすべて滅んだ約6500万年前の大量絶滅だろう。現在のメキシコ沖に落ちた直径10キロメートル以上とされる巨大な隕石(いんせき)が、その原因らしい。このほか、地球史上最大といわれる3回目の大量絶滅は約2億5000万年前におき、そのあと始まった「三畳紀」と「ジュラ紀」の境目にあたる約2億年前にも、4回目がおきた。

特定の希少種が姿を消していくのとは違い、大量絶滅では、地球上の大半の種が短い期間に滅んだ。なぜ、こんなにも多くの生物が一度に滅んだのか。もちろん、その点も興味深いが、逆に、どういう性質をもった生物が厳しい環境を生き延びられたのかを探る研究も、それに劣らず興味深い。

独ボン大学博士課程のターニャ・ヴィントリッヒさんらの研究グループは、ドイツにある三畳紀末期の地層から、「首長竜」と呼ばれる海の爬虫類(はちゅうるい)の化石を見つけ、このほど論文として発表した。体長が約2.4メートルの若い首長竜とみられる。首長竜は三畳紀からいたという説もあるが、体の全体を復元できる化石のようなその時代の有力な物証は乏しいため、はっきりしたことは分からなかった。ジュラ紀に入ってから登場したという見方もあった。今回の発見で、首長竜は、すでに三畳紀にジュラ紀と同様の姿に進化しており、そのまま4回目の大量絶滅を生き延びていたことが確定的になった。

首長竜は、ジュラ紀と、それに続く白亜紀に繁栄した海の大型爬虫類。ちょうど恐竜が栄えた時代に重なっている。胴体はずんぐりしていて首が長く、4本の脚はひれになっていた。同じ爬虫類でも、体からまっすぐ下向きに出た脚を使い、陸上を直立して歩くことができた恐竜とは、まったく別の種類だ。

研究グループの中島保寿(なかじま やすひさ)・東京大学大気海洋研究所研究員によると、三畳紀の地層から見つかった今回の化石には、体のさまざまな部位が残っており、それが、さきほどの首長竜の特徴とよく一致していた。さらに今回は、化石として残っていた骨の組織から、血管が発達していた痕跡が見つかった。これは、現存する生物のなかでも、哺乳類や鳥類のように体の内部で熱を発生させ、成長も速い動物に特有の構造だ。ジュラ紀の首長竜にもこの特徴がみられる。したがって首長竜は、この特徴をもったまま、大量絶滅を乗り越えたことになる。

首長竜の4本の脚はひれになっており、長い首はあまり柔軟に曲がらなかったらしい。中島さんによると、これは、沿岸ではなく外洋での生活に適した体だという。カメのような格好でも知られる近縁の「板歯類」は、三畳紀末に絶滅している。こちらは、沿岸で生活していたらしい。

今回の研究結果から、三畳紀末の大量絶滅を生き延びた首長竜は、外洋で生活し、その成長速度が速かったと推定される。外洋で生活していれば、地球環境の急激な変化にともなう海面水位の変動の影響を受けにくい可能性がある。海面が急に下がって、生活の場だった浅瀬が奪われることもない。また、成長が速ければ、早く子を産めるようになるのかもしれない。しかし一方で、成長が速ければ、たくさんのえさが必要なはずで、それが生存に有利だったかどうかは分からない。このような確かな事実の積み重ねで、大量絶滅の謎は一歩ずつ解き明かされていくのだろう。

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