このフュージョンエネルギー関連ニュースのまとめ

・三菱電機、京都大学、核融合科学研究所が、フュージョンエネルギー向けマイクロ波プラズマ計測システムを構築
・周波数コムとデュアルコムダウンコンバート方式により、長時間にわたり最大34点の多点同時計測を実現
・京都大学の核融合実験装置「Heliotron J」で実証に成功し、2030年代の発電実証や将来の商用炉適用を見据える

最大34点の長時間同時計測を実現、Heliotron Jで実証

三菱電機、京都大学エネルギー理工学研究所、核融合科学研究所の3者は6月30日、プラズマの状態を長時間にわたり多点同時に計測できる世界最高水準のフュージョンエネルギー向けマイクロ波プラズマ計測システムを構築し、京都大学が保有する核融合の研究に向けたヘリカル系プラズマ実験装置「Heliotron J」において実証に成功したと発表した。

同研究は三菱電機のほか、京都大学の長﨑百伸 エネルギー理工学研究所教授、核融合科学研究所の徳澤季彦教授らによるもの。成果の詳細は、6月29日から7月3日まで英国で開催されている欧州最大のプラズマ物理に関する国際会議「EPS Plasma Physics Conference 2026」にて発表されたという。

今回構築されたシステムは、複数の周波数成分を同時に含む「周波数コム」のマイクロ波を用いることで、プラズマ中の複数測定点に対応する反射信号を同時に取得するものとなる。さらに、受信システムに高周波信号処理の負荷を軽減できるデュアルコムダウンコンバート方式を採用することで、放電全体にわたる長時間計測を可能にしたという。

  • 開発されたプラズマ計測システムの構成概要

    開発されたプラズマ計測システムの構成概要 (出所:三菱電機/京都大学/核融合科学研究所)

フュージョンエネルギー実装にはプラズマ状態のリアルタイム把握が不可欠

フュージョンエネルギー、いわゆる核融合発電は、脱炭素社会に向けた次世代エネルギー源として期待されている。日本政府も「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」などを通じて、2030年代の発電実証を見据えた研究開発や産学官連携を進めている。

社会実装に向けては、一億度以上の核融合プラズマを安定的に制御するため、プラズマ状態をリアルタイムに把握できる信頼性の高い計測技術が不可欠となる。特に、発電実証や商用炉を見据えた場合、プラズマがどのように変化しているかを多点で連続的に捉え、制御へつなげる技術が重要になる。

その中でマイクロ波計測技術は、中性子照射により機器が損傷しやすい核融合炉内でも、重要機器をプラズマから離して設置できる点が特長だという。三菱電機、京都大学、核融合科学研究所の3者は2025年から、フュージョンエネルギー向けマイクロ波計測技術の高度化と装置実装に共同で取り組んできた。

周波数コムとデュアルコムで多点計測と長時間計測を両立

プラズマ中にマイクロ波を入射すると、周波数に応じたプラズマの電子密度の位置でマイクロ波が散乱・反射される。この反射位置は「カットオフ密度」と呼ばれ、マイクロ波の周波数を変えることで、プラズマ内部の異なる位置の情報を得ることができる。

また、反射したマイクロ波には、反射層の回転速度に応じてドップラー効果による周波数変化が生じる。この周波数変化を読み取ることで、プラズマ内部の状態変化を把握できる。今回のシステムでは、34本の櫛を持つ周波数コムを用いることで、最大34点の同時計測を可能にした。

  • マイクロ波反射計の計測原理

    マイクロ波反射計の計測原理 (出所:三菱電機/京都大学/核融合科学研究所)

従来、多数の周波数成分を扱う場合、高周波信号処理の負荷が大きくなることが課題だった。今回採用したデュアルコムダウンコンバート方式は、異なる間隔を持つ2つの周波数コム信号を組み合わせ、高周波信号を測定しやすい低周波へ変換する手法である。これにより、多数の周波数成分を同時に取得しながら、放電全体にわたる長時間計測を実現したという。

三菱電機が装置開発、京都大学と核融合科学研がプラズマ物理を解明

今回の研究では、三菱電機がマイクロ波発信・受信装置の開発と、Heliotron Jへの計測装置構築を担当。京都大学は高密度プラズマの生成とプラズマ物理現象の解明を担い、核融合科学研究所はデュアルコムダウンコンバート手法の開発とプラズマ物理現象の解明を担当した。

実証では、周波数コムのマイクロ波の発信装置から送受信系までを統合したプラズマ計測システムをHeliotron Jに構築。実際に計測した結果、プラズマの状態変化に応じた最大34点の周波数変化を長時間にわたり捉えることに成功したという。

  • プラズマ中の周波数変化の多点計測結果

    プラズマ中の周波数変化の多点計測結果。縦軸が34本の周波数成分、横軸が各周波数成分で観測された時間変化。赤色系が周波数が入射周波数に対する正の方向の変化、青色系が入射周波数に対する負の方向の変化を示す (出所:三菱電機/京都大学/核融合科学研究所)

計測点数はプラズマの電子密度状態に依存するため放電条件によって変動するものの、複数点の周波数変化を長時間同時に取得できたことは、プラズマの挙動をより詳細に理解し、将来的な制御技術へつなげる上で重要な成果になる。

2030年代の発電実証と商用炉適用を見据え、耐環境性能も検討へ

なお、3者は今後、周波数コムのマイクロ波を用いた制御技術の高度化を進め、より詳細なプラズマ計測システムの構築を目指すとしている。計測技術の高度化は、プラズマ内部の状態把握だけでなく、将来的にはプラズマ制御の精度向上にもつながる。

また、2030年代の発電実証を視野に入れ、将来の商用炉への採用も見据えた、耐環境性能に優れるシステム構築の検討も進めるとしている。