--目指す方向性はわかりましたが、具体的には、どのようにそれを目指すのでしょう?

長尾氏:これまでのCEATECは家電ショーとしては中途半端だったと思っています。本来であれば白物家電が暮らしの中でどのようにつながっていくのか、といった姿を見せていく必要があったと思いますが、テレビとスマートフォンに偏ってしまっていました。確かに映像は華やかに見える部分もありますが、そこは人間の生活の一部であって、生活の主体ではありません。新生CEATECでは、シーン別にエリアを分けることで、単に部品を売るのではなく、そのシーンにマッチするイメージを見せてもらいたいと出展者にはお願いしており、そこのどこにビジネスチャンスがあるのか、というビジネスモデルそのものも出してもらいたいともお願いしています。

例えば、自動運転が実用化されれば、今以上にライドシェアが流行り、自前でクルマを持たない時代になることが考えられますが、果たしてそれで人間の生活に幸福がもたらされるのか、という部分がそういった部分にあたります。確かに、見せ方は難しいことは理解しています。しかし、そこが自社の成長力となる、ということを多くの人の目に見せられるのがCEATECという場でありたいと考えており、主催者側として、そうした取り組みを助けることができればと考えています。

企業側も、どう出展すれば良いのか、といった面で悩んでいますが、その点については、企業文化という殻を自らどうやって破るかが鍵になると見ています。IoTの最大の敵は社内の事業部門の間に立ちはだかる見えない壁であり、それが垂直の事業を水平に展開することの障壁となります。そのため、事業部に横串を入れる、という経営者の手腕が問われるレベルの話にもなってくるとも言えます。

こうした新たな見せ方を行うという動きは単に今年だけで終わる話ではありません。今年の取り組みは、これからのビジネスに向けた企業間での優劣が見える、といったところで、来年以降の発展につながる程度のものだと思ってますので、今年の経験を来年以降、どう生かして行ってもらえるか、という点に注目したいですね。

CEATEC JAPAN 2016のエリア分けイメージ。従来の家電などを紹介するゾーンと半導体など電子デバイスを紹介するゾーンではなく、それぞれのシーンに応じた技術紹介などが行われることが目標。長尾氏曰く、「エリアを選ぶということは、企業として、その分野に注力していきます、という戦略的メッセージとなる」とのことで、将来的には、企業としてのマーケティング力や事業展開力などが問われることにもつながってくることが想定される

--そうした中、IoTとCPSという言葉を選びました。IoTはともかく、CPSという言葉を選んだ意図はどこにあるのでしょう?

長尾氏:CPSは敢えて入れました。IoTはあくまで道具であり、CPSはそれを活用して社会を変える、という意味を込めています。ただ、世の中の人たちがわかりやすいのならばIoTだけでも良いでしょうし、政府が掲げる「Society(ソサエティー)5.0」が浸透していくなら、それでも良いと思っています。いずれにしても、本質的な目的はサイバー空間と現実が一体化して、何かを作るということにあり、将来的にそうしたことを踏まえた次代の日本を背負える企業による日本式IoTのビジョンなどが出てきてくれる場を提供できればと思っています。

そのためにはJEITAそのものも変わる必要があります。日本に工業会は数多ありますが、それらをつなぎ合わせるミッドフィルダー的な役割を汗をかいて担っていくことを目指していきます。CEATECは、そうした変わっていくビジネスの1つの象徴になると思っています。