三菱重工業は2015年5月22日、愛知県海部郡飛島村にある同社の飛島工場で、「H-IIB」ロケット5号機の第1段、第2段機体を報道関係者向けに公開した。このあとロケットは種子島宇宙センターへ運ばれ、最後の組み立てと試験を経た後、宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の5号機を搭載して宇宙へ飛び立つ。打ち上げ日はまだ決まっていないが、今年の夏ごろになるという。

H-IIBのコア機体。手前の大きな円筒形のものが第1段機体で、その奥に見えるのが第2段機体。

H-IIBの第1段に装着された2基のLE-7Aロケット・エンジン。黒いものはカヴァーで、打ち上げ時にはもちろん取り外される。

H-IIBロケット

H-IIBは宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工が開発したロケットで、主に宇宙ステーション補給機「こうのとり(HTV)」を打ち上げるため、当時すでに運用に就いていたH-IIAロケットを基に造られた。全長は56.6m、最大直径は5.2m、燃料などをすべて含めた打ち上げ時の質量は531tもある、日本最大のロケットだ(ちなみに、H-IIAやH-IIBの後継機となる「新型基幹ロケット」は、さらに大型になることが予定されている)。

今回公開されたのは、H-IIBのうち第1段機体と第2段機体のみである。三菱重工ではこの2つを指して「コア機体」と呼んでいる。

第1段機体の全長は38m、直径は5.2mで、H-IIBの中で最も大きな部品だ。H-IIAよりも打ち上げ能力を増やすため、第1段ロケット・エンジン「LE-7A」を2基装着し(H-IIAでは1基)、さらにタンクを太くし、推進剤の搭載量を増やすなどといった改良が加えられている。

その上に載る第2段機体は、若干補強が施されている以外は、基本的にはH-IIAのものがそのまま流用されている。全長は11m、また直径は第1段より細い4.0mであるため、H-IIBの全体像は、コーラの瓶のように胴体の途中が細くなった姿をしている。

実際の打ち上げ時には、第1段の下部には白い固体ロケット・ブースター(SRB-A)が4基装着され、またロケットの頭には「こうのとり」を保護するための衛星フェアリングが装着される。SRB-AはIHIエアロスペース、衛星フェアリングは川崎重工業がそれぞれ製造を担当しているため、この工場にはない。H-IIB 5号機用の両部品はすでに種子島宇宙センターへ運ばれており、コア機体の到着後に装着されることになっている。

H-IIBの1号機は2009年9月11日に打ち上げられ、これまでに4機すべてが成功を収めている。1号機から3号機まではJAXAが運用を担当していたが、4号機からは三菱重工が担当しており、H-IIAと同じ「商業ロケット」として、同社の打ち上げ輸送サーヴィスのラインアップに名を連ねている。ただ、打ち上げ時の安全管理などは引き続きJAXAが担当しており、JAXAがまったくのノータッチ、というわけではない。また会見に立った三菱重工の二村幸基技師長は「安全管理は国が執行するのが望ましい。たとえば問題が発生したときに躊躇なく指令破壊を行えるのは独立した機関である」として、今後とも三菱重工が打ち上げを、JAXAが安全管理を担うという体制を続けることの意義を強調した。

2013年8月4日に打ち上げられたH-IIB 4号機 (C)JAXA

打ち上げ時の三菱重工とJAXAとの関係を示した図 (C)三菱重工