打ち上げは今夏

今回の5号機は前号機など比べ、外見にあまり目立った変化はない。ただ、H-IIAですでに実施されているコストダウン策がいくつか適用されており、例えば画像圧縮伝送装置の搭載数が、改良によって従来の2個から1個へと少なくなっているという。

また、2号機から行われている第2段機体の制御落下も実施される。ロケットの第2段機体は、「こうのとり」を軌道まで送り届ける都合上、一緒に地球をまわる軌道に乗ることになる。放っておいても数日で大気圏に再突入するが、それでも他の衛星に衝突する可能性はあり、また人家のある地域の上空で再突入すると、燃え残った部品が落下する可能性もある。そこでなるべく早期に、なおかつ人家のない太平洋上などに狙って落下させることが望ましい。そこで実施されるのが制御落下だ。

具体的には、まず「こうのとり」を軌道に送り届けた後、地球を1周させ、続いて機体の健全性を確認した上で、地上からの指令でロケット・エンジンに点火して逆噴射する。そして軌道速度を失った第2段は地球の大気圏に再突入し、燃え尽きる。この試みはH-IIBの2号機から実施されており、すべて狙った水域への落下に成功している。

コア機体は、このあと5月29日に船に載って出荷され、6月1日に鹿児島県の種子島宇宙センターに到着し、そこで最後の組み立てが行われる。そして試験を経て、「こうのとり」5号機を載せ、宇宙へ向け打ち上げられる。

現時点では打ち上げ日は「今年の夏ごろ」とされており、詳しい日付はまだ決まっておらず、決定され次第発表するという。国際宇宙ステーションへの打ち上げでは、他国の宇宙船や補給船の打ち上げスケジュールや、宇宙飛行士の活動などを含めて国際間で決定されるため、三菱重工の一存で決めることはできない。

第2段制御落下の解説図 (C)三菱重工

機体の製造状況と今後の予定 (C)三菱重工

国際宇宙ステーションへの物資補給をめぐっては、先日ロシアの「プラグリェースM-27M」補給船に問題が発生し、ステーションに到達できないという事故が起きている。今のところ運用に影響は出ていないが、「こうのとり」5号機とそれを打ち上げるH-IIB 5号機の重要性は、いつもに増して高まっている。

三菱重工の二村技師長は、「運ぶものが何であろうと、要請されたものを軌道に投入するのが我々の仕事。確実に打ち上げを成功させたい」と語った。

(取材協力: 宇宙作家クラブ)

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