人とプログラムのコンビでミスを低減

それだけ膨大な数になってくると、オペレータが人である以上、必ず入力漏れや入力間違いというのはどうしても出てしまう。そのため、ゼンリンではそうしたミスを減らすための仕組みも用意されている。かつては2人のオペレータが同じ作業を行って、照らし合わせて食い違いが発生している箇所があったら、3人目のオペレータがその分の確認や修正をするという仕組みだったそうだ。現在ではさらに進んで、画像認識プログラムがオペレータのパートナーとなっている。

これは、作業の将来的な自動化に向けた第1歩として導入された意味合いもあるのだが、人と人のコンビよりも人と画像認識プログラムの方が間違いをより見つけやすいことが大きな理由だ。実は、画像プログラム単体だと性能的にはまだ人には及ばない。人の取得率に対して7~8割だという。どのようなところが不得意なのかというと、標識の前にちょっと街路樹の葉などがかかってしまって全体的に見えない場合や、事故などで標識そのものが歪んでいる場合、また色が褪せている場合などだそうだ。人ならすぐに判別がつくものが、プログラムだとまだまだ苦手としているのである。

ではなぜそんな人よりもずっと劣っている画像認識プログラムが利用されているのかというと、人が苦手とするパターンというのがあって、それには逆に画像認識プログラムの方が強かったりするのだ。人が苦手なのは、例えば何もないところにポツンとある標識だとか、同じ支柱に標識がいくつもあるような場合などだという。

多少の個人差はあっても、人がどうしても見落としたり見間違えたりしやすいパターンの場合、2人がそろって見落としてしまう可能性もあり、その場合、食い違いがないのでミスに気がつかない可能性がある。ところが、逆に人が見落としがちなところを得意とする画像認識プログラムが相棒なら、得手不得手がまったく異なることからお互いを補完し合うような形となり、人同士よりも成績が優秀になるというわけだ。

それから細道路情報の現地での情報収集は、政令指定都市や中核市クラスの都市では既に終わっているそうだが、まだ完了していない地域もあるという。よって、今日も日本のどこかを数10台の細道路計測車両が走り回って情報を収集している。スケジュール的には、最終的に2016年頃まで現地での情報収集と入力作業は続く予定だそうだ。

カーナビの精度向上に向け、道路の幅の入力

以上が標識の入力に関してだが、ここではさらに車線数や道路の幅員に関する情報の入力も行っている。車線がある場合は車線数で済ませるが、中央線のない狭い道路の場合は、幅員の検出と入力が行われる。道路の幅員は、実際にクルマが走れる範囲内を入力することになっており、画像上に表示されるわけではないが、50cm幅のグリッドがあってそれを用いて算出されるので、その数値を入力していく(画像26・27)。

道路によっては、幅員が片側1車線の両方通行から片側1車線分に急に減ったりするなど、さまざまな事情から激しく変化するところもある。そうした場合は幅員が大きく変化するので、情報が入力されるというわけだ。カーナビによっては、そうした情報も活用していて、道幅が狭くなることに対して注意を喚起するものもある。

画像26(左):幅員はプログラムが算出してくれる。×から×までの緑色の線分が幅員となる。画像27(右):交差点から交差点まで、小さな道も1つずつ幅員が設定されていく。

カーナビの精度を上げるための情報入力はまだまだ続き、交差点での曲がれる方向の処理という作業もある。例えば中央分離帯のある幹線道路に側道から出てくるような場合、地図上だと右折もできるように見えてしまうが、実際には不可能なので、それを画像で確認したらその通りに設定する(画像28)。

ちなみに中央分離帯はガードレールやコンクリート製のガッチリしたものばかりではなく、棒状のポストが何本も並ぶことで役割を果たしている道路も存在する(画像29)。それらも画像からの目視情報で入力していき、先程の側道から分離帯のある幹線道路に出てきた場合と同様に右折禁止の情報を入力するというわけだ。そのほかにも画像で人が確認しないとわからない道路上の特徴的な構造物などがあり、それらによって道路ネットワークが影響を受ける場合は、当然ながら情報として入力しておく必要があるのである。

画像28(左):中央分離帯があるところでは、当然反対車線まで行っての右折ができない。右折したいルートの場合は、それを見越してもっと手前から違うルートを案内する必要があるというわけだ。画像29(右):自転車なら反対車線に抜けられるかも知れないが、クルマは不可能。こうしたポストによる中央分離帯もきちんと設定する必要がある。