続いては、走行体に関して。2014年大会でも告知されていたが、いよいよ「EV3」が利用できるようになる形だ。レゴ・マインドストームNXTの販売終了に伴い、より高性能な後継の新製品EV3を利用した走行体ということで、2輪倒立振子型は「EV3Way」(画像7・動画1)、トライク型は「ETrikeV」(画像8・動画2)となる。なお、CS大会でも両走行体は披露されていたのでお届けしたが、若干修正されているという。

なお細かい話だが、トライク型の名称がNXTではNXTrikeなのだから、EV3ではEV3Trikeではないかと思うかも知れない。しかし、実際にはNXTrikeの方が当初の名称とは違う形で間違って発表されてしまい、それが広まってしまったためにそのまま正式名称ということなので、ETrikeVでいいそうである。

画像7。EV3Way。NXTWayと比較すると、下半身が若干マッチョになっているような感じ
動画1。CS大会の記事でもお届けしたが、EV3Wayはすでにとてもスムーズに走れている
画像8。EtrikeV。NXTrikeと比較すると、ぱっと見では色の違いぐらいしかわからない
動画2。こちらもCS大会で披露された際と一緒だが、サンプルプログラムで少々カクカクと走行する様子

さらにEV3の開発環境についてだが、2015年に公式サポートされるのは画像9の通りで、「EV3RT」、「MonoBrick」、「leJOS」の3種類。EV3RTはTOPPERS(Toyohashi OPen Platform for Embedded Real-time Systems)プロジェクトの協力を得て開発されたITRON仕様のリアルタイムOSで、MonoBrickとleJOSはLinux系だ。実際には、MonoBrickとleJOSははリアルタイムOSではないが、EV3のCPUパワーが高いので利用できるという。

画像9。EV3およびNXTのETロボコン実行委員会で公式サポートする環境とその特徴に関する一覧

そして、使用可能な言語も増加。EV3RTはCとC++で、MonoBrickがC#、leJOSがJava(このほか、マンパワー的に難しいので公式サポートは行われないが、RubyやPythonなどの環境で開発しての参加は可能)。特徴的なのが、統合開発環境も使えるようになることで、MonoBrickは「Mono-Develop」、leJOSは「Eclipse」を利用できる。その関係でデバッガの利用が可能となり、走行体をデバッガでその場で止めてすぐに変数の内容をチェックすることなど、これまでのNXTでは不可能だった開発が可能となるというわけだ。

さらにプログラムの転送方法も複数になり、EV3RTはSDカードとBluetoothを利用可能。MonoBrickとleJOSはUSBケーブル、Bluetooth、Wi-Fiの3種類だ。EV3統合開発環境構築ガイドがこちらに用意されているので、EV3での参加を検討しているチームはチェックしておこう。

そしてこれまでのNXTWayとNXTrikeが走行できる最終年となるもの2015年。EV3はCPUが64ビットになるなど、NXTと比較してCPUパワーで6倍、メモリ容量も256倍など性能的には桁違いなので、NXTとEV3はそれぞれ別にして競技を行うことも考えられたのだが、走行体としての性能が同じになるように調整したそうで、実際の競技では混走になるという。しかも、ETロボコンのデベロッパー部門は1つのレースで2チームが同時に走る(インコースとアウトコースがある)ので、1つのレース内での混走も普通にありえるというわけだ。

NXTかEV3のどちらかのみになるということはおそらくはないはずである。まず今年初参加のチームはもうEV3のキットしか購入できないから必然とEV3での参戦となるし、長年参加してきて膨大なノウハウを有するチームはNXTを利用する可能性が高い(強いチームは、メンバーが交代しても、先輩たちが積み重ねてきたノウハウがきちんと継承されている)。

その一方で、1年でも早くEV3のノウハウを蓄積したいとか、性能の高さに賭けたいというチームもあるだろうし、2014年にNXTのキットを購入したばかりなので1年でEV3に切り替えるのは予算的にもったいないという台所事情的なチームだってあるだろう。ともかく、混走は必死だろう。2009年の時はNXTが初めて登場した年で、それまでのRCXを使うチームと2種類あり、表彰は分けて行われたのだが、今回は表彰も一緒ということである。

ちなみに参加チーム向けのEV3の特別セット「EV3 ETロボコンキット」の価格は特価で、EV3 ETロボコンキット-A(画像10)が税込み5万4000円で、同B(画像11)が税込み6万5880円。セット内用は、Aセットが「教育版レゴ マインドストームEV3基本セット」×1式、「EV3 インタラクティブサーボモーターL」×1個、「ETロボコン用EV2アップグレードキット」×1セット、楕円コース×1枚、DCアダプタ×1個となっている(プログラムをBluetoothで転送する場合には、別途専用パーツが必要)。

そしてBセットは、AセットにEV3 インタラクティブサーボモーターLを2個と、「EV3 カラーセンサー」を1個追加した内容だ。EV3Way、EtrikeVのどちらも制作できるキットで、教育用レゴ・マインドストームEV3基本セットに加え、ETロボコン専用パーツなどがワンセットになっている(センサやモータなどを単品で購入することも可能)。ちなみに、特価は3月25日までで、その後は、それぞれ税込み5万7240円、税込み7万200円の通常価格となる。

画像10(左):EV3 ETロボコンキット-Aの内容。画像11(右):同Bの内容