第4章 Windows 8.1の改良点/アプリとIE 11 - タッチ機能を強化したInternet Explorer 11

タッチ環境においてUIの重要性は大きい。リンクをタップした際の動作が緩慢だと、それだけでデバイスの印象が著しく悪くなるからだ。初期のタッチ環境を備えたデバイスで同様の感想を持ったユーザーは少なくないだろう。Internet Explorer 11は既存のタッチ対応デバイス点を鑑みて、タッチ環境でのパフォーマンス強化を行っている。前節でGPUを利用してWebGLのレンダリングを行うと述べたが、GPUの利用範囲はズームやスワイプにまで広げ、その結果"指にくっつく"のような応答性を実現したと、Internet Explorer担当コーポレートバイスプレジデントDean Hachamovitch(ディーン・ハカモビッチ)氏はIEBlogの記事で述べた。

筆者もSurface ProにWindows 8.1をインストールして試してみたが、正直なところ"指にくっつく"と言う感覚は感じられない。Webページ側の問題かといくつかのWebサイトで試してみたがピンと来ることはなかった。よくよく試してみると、この表現はWebページ上のテキストに対するものではないかと思われる。テキスト部分を軽くタッチすると0.5秒ほどの間が空き、漢字や単語など前後の文字によってハイライト表示になると言うものだった(図142)。

図142: テキスト部分をタッチして選択する感覚は、確かに"指にくっつく"と言う印象を覚える

その一方でリンクに対する動作も改良が加わっている。リンクをタップするとそのままリンク先が開くのは従来どおりだが、新たにリンクが強調表示されることで、テキストとリンクが明確になると言う。ただし、同動作を実現するには独自のメタタグを追加しなければならないため、すべてのWebサイトで恩恵に預かれると言うことはでない(図143)。

図143: リンクを長押しすると、強調表示などの処理が加わる。ただし、Webサイト側のタグ追加が必要だ

スワイプ操作で前後のWebページに切り替える機能は、既にInternet Explorer 10が備えていたが、同11ではページ間の操作時に前ページを一時停止してないようをメモリー上にキャッシング。そして閲覧後に前ページに戻ると、キャッシュデータをメモリー上から展開し、シームレスかつ瞬時にWebページの描画を可能にしている。なお、Webページの構成で一時停止できない場合は、事前に内部レンダリングをスタートするプレレンダリングを実行するため、パフォーマンスは若干低下するものの、同じUXを提供するという(図144)。

図144: Internet Explorer 11でも、スワイプ操作で直前のページに戻る動作は同じだが、内部的な処理は改善されている

新たなInternet Explorer 11と言うよりも、Windows 8.1では従来のスナップ機能が大きく変化している。具体的にはWindowsストアアプリで定義されていたSnapped(スナップされたビュー)などを廃止し、初期状態では各Windowsストアアプリを画面2分割状態で並べることが可能になった。そのため、Windowsストアアプリ版Internet Explorer 11であれば、2つのWebサイトを並べて内容を比較することができる。また、表示領域のバランスは任意の割合で変更可能だ。1920×1080ピクセルの環境では3つの画面を並べることが可能だが、環境によっては「PC設定」の「ディスプレイ」に並ぶ「その他のオプション」で「小」を選択する必要がある(図145~147)。

図145: 2つのWindowsストアアプリ版Internet Explorer 11を並べた状態

図146: 中央の区切り線を左右にドラッグすることで、表示領域のバランスを調整できる

図147: 一定のディスプレイ解像度を備える環境であれば、3つ以上のアプリを並べることも可能だ

そのため同Internet Explorer 11には、従来のタブとウィンドウと言う2つの概念を用意。タブの操作はアプリバーから行うが、ウィンドウは前述した分割状態が用いられる。そのタブはSkyDriveを経由して異なるデバイス(と同じMicrosoftアカウントを利用した環境)でタブの同期が可能になると報じられていた。少なくともWindows 8.1プレビューのInternet Explorer 11に同機能は発見できず、<タブツール>ボタンにあるはずの<Show synced tabs>と言う項目も見当たらない(図148~149)。

図148: タブで複数のWebページを切り替えられるのは従来どおり。なお、タブ数の制限は基本的に設けられていない

図149: <タブツール>ボタンにタブを同期する項目は用意されていない

ただし、同機能はInternet Explorer 11開発者向けガイド.aspx)でも、タブが同期することが記述されていることを踏まえると、シームレスに実行されるようになったのかしれない。だが、数分間ほどコンピューターとタブレットをアイドル状態にしても同期するようなそぶりを見せず、タブ同期機能に関しては確認することができなかった。

この他の変更点として目を引くのはユーザーエージェント文字列の変更である。Internet Explorer 10は「Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 10.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/6.0)」だったが、同11では「Mozilla/5.0 (Windows NT 6.3; Win64; x64; Trident/7.0; rv:11.0) like Gecko」に変更されている。具体的には「compatible」「MSIE」と言うトークン(単語)を削除し、「like Gecko」トークンを追加。また、Webブラウザーのバージョンを「rv(リビジョン)」で示している。これらの変更は、WebサーバーもしくはWebページの誤検知を未然に防ぐことが目的だと言うが、自社製品であるを示すMSIEトークンを削除したのは、以前のMicrosoftには考えられない柔軟な姿勢を読み取れるのではないだろうか。

詳細機能や各種設定は別の機会に触れたいと思うが、Internet Explorer 11は順当に進化し、現時点で必要な新技術に対応することで、他のライバルに引けを取らないクオリティに達している。今後あらゆる場面で必要となるプラットフォーム化したInternet Explorer 11は、高く評価されるべきだろう。