第2章 Windows 8.1のインストール - Windows 8.1のシステム要件

Windows 8.1のシステム要件を述べる前に、Windows 8リリースから現在に至るまでの流れを簡単にまとめておこう。2013年2月末に海外のニュースサイトで、「Windows Blue」なるキーワードが話題に上がった。ことの発端はMicrosoftが次期Windows OS「Blue」のための人材を募集していると言う記事が掲載されたからだ。同社が募集していたのは、Windows Sustained EngineeringのCore Experienceチームと言うUIの中核を担当する部署だが、募集要項には"経験を持つテスト担当ソフトウェア開発技術者"と言うコメントが記載されている。つまり、この時点でWindows 8.1のUIとそこから生まれる全体的なUX(User Experience:ユーザーエクスペリエンス)の改善が加わることがわかった。

この時点でWindows BlueのMilestone 1(ビルド9289)のスクリーンショットを掲載するロシアのWebサイトが話題となる。その後ビルド9319がネットに流出するなど、Windows Blueが開発中であることが明らかになり、Microsoftは同年3月26日(米国時間)に開発中であることを同社のコーポレートコミュニケーション担当シニアバイスプレジデントである Frank X. Shaw(フランク・X・ショー)氏が「The Official Microsoft Blog」の記事で公式に認めた。

同年5月14日(現地時間)には、同社のマーケティンググループのシニアマーケティングコミュニケーションマネージャーであるBrandon LeBlanc(ブランドン・ルブラン)氏が「Blogging Windows」の記事で正式名称が「Windows 8.1」になると、同社マーケティング担当エグゼクティブバイスプレジデントのTami Reller(タミ・レラー)氏が発表したことを明かしている。そして、同年6月26日から28日(現地時間)まで開催された開発者向けカンファレンス「Build 2013」で、Windows 8.1のプレビュー版が配布された。

同年6月26日(現地時間)。ITプロフェッショナルユーザーを対象に、Windowsストア経由やWeb上でWindows 8.1プレビューを公開している。総ダウンロード数は明らかにされていないが、Reller氏がIDF(Intel Developer Forum)のキーノートで語った内容によると、MSDN/TechNetでダウンロード可能になったRTM(Release To Manufacturing version:製造工程版)版を含めると200万回のダウンロード数を超えたと言う。

HKEY_LOCAL_MACHINE \ SOFTWARE \ Microsoft \ Windows NT \ CurrentVersionキーの文字列値「BuildLab」によると、Windows 8.1は同年8月21日16時(現地時間)に完成したようだが、同月14日には同年10月18日(日本は17日)にリリースすることを「Blogging Windows」でLeBlanc氏が明らかにしている(図013)。

図013: Windows 8.1は2013年8月21日16時にビルドアップ(完成)したことがレジストリエントリから確認できる

通例なら、Microsoftの開発者向け/ITプロフェッショナル向け有料サービスであるMSDN/TechNet参加者には先行して配布されていたが、今回は「一般提供と同じタイミングでリリースする」と、同社バイスプレジデントであるAntoine Leblond(アントニー・レブロンド)氏は発表していた。Leblond氏はその理由として、RTMリリース後もハードウェアベンダーと最終調整が必要であるからだ、と述べている。

しかし、多くの開発者やITプロフェッショナルからのフィードバックを受けて、この方針を転換。バイスプレジデント兼チーフエバンジェリストであるSteve Guggenheimer(スティーブ・グッゲンハイマー)氏は自身のブログで、「フィードバックの声に耳を傾け、早期リリースするための最善の方法に取り組むことにした」とし、9月10日の急遽(きゅうきょ)リリースに至った。

前振りが長くなってなってしまったが、これがWindows BlueからWindows 8.1に至るまでの大まかな流れである。肝心のシステム要件は、CPUはPAE(物理アドレス拡張)/NXビット(実行不可属性)/SSE2(ストリーミングSIMD拡張命令)をサポートする1ギガヘルツ以上のプロセッサ、物理メモリは1ギガバイト(64ビット版は2ギガバイト)、HDD(ハードディスクドライブ)の空き容量は16ギガバイト(64ビット版は20ギガバイト)、WDDM(Windows Display Driver Model)ドライバーが用意されたDirectX 9以上をサポートするグラフィックカード。このように基本的な部分はWindows 8と同じであると、日本マイクロソフトもプレスリリースで述べている。

ただし、追加用件として用意されていた1,366×768ピクセル以上の画面解像度はそのままだが、1,024×768ピクセル以上の画面解像度でよいとされた点に注目したい。これは、スナップ機能を見直したことで1,024×768ピクセルでも2分割表示が可能になったからだ。ちなみに3分割には1,544×768ピクセル以上が必要となる。執筆時点ではWindows 8.1のシステム要件は公開されていないが、ハードウェア認定要件は6月の時点で公開済み。周知のとおり3DプリンターやNFC(近距離無線通信)デバイスのサポートも含まれているが、システム要件ではないので後に触れることにしよう。

なお、エディション構成もWindows 8と基本的に同一だ。ARM SoC上で動作するWindows RT 8.1や、x86/x64アーキテクチャ向けとなるWindows 8.1、同Pro、同Enterpriseの4種類。Windows RT 8.1はプリインストールされたハードウェアを、Windows 8.1 EnterpriseはVL(ボリュームライセンス)などで購入しなければならないため、事実上ユーザーの手の残される選択肢はWindows 8/同Proのみとなる(図014~015)。

図014: エディション別機能比較表1

図015: エディション別機能比較表2

この図014~015はMicrosoftがWeb上に掲載し、日本マイクロソフトが日本語化したものだが、ご覧のとおり新機能を除けば基本的な構成はWindows 8と同じだ。基本的な機能もしくは以前からHome Edition系を選択してきたユーザーはWindows 8を、より多くの機能を必要としてPro系エディションを使用してきたユーザーはWindows 8 Proが唯一の選択肢となる。