Q:OSとかミドルウェアとか、全部そうですね。逆に言うと、もうARMのエコシステムに入ったので、そこまで早期に言わなくてもこれからは大丈夫という訳ですね。

Rogan:ARM側から話題多少を変えますけど、今我々が結構宣伝しているのは新しいツールであるVivadoです。なぜ、それを宣伝してるかと言うと、丁度尺取虫みたいな感じだと思うんですね。まずツールが出て、それハードウェアが追いついて、またツールが出て、ハードウェアが追いつくような感じですね。

今はDeviceがどんどんややこしくなってきています。昔はFPGAは結構乱暴に使えたと思うんですよ。どういうことかと言うと、例えば、RTL合成の時に、タイミングが合わなくても、まあ最後にRouteの後で何とかできるんじゃないかなと(笑)。で、もちろん、その時代でもそうした使い方は推奨できるようなものではないんですが、現実的にはそうなってました。ところが今は非常に大規模で高速になってきたので、本当にRTCL合成の時にTimingがMeetしないと駄目ですよ、と。さらに、その後PlaceとかRouteのそれぞれの段階で、やっぱりTimingがMeetしないと駄目ですよ、と。最後に帳尻あわせする事はもう出来ませんよ、と。

後、日本のお客様と海外のお客様を比較した時に何が違うか? 日本のお客様は元々ASICを使っておられてて、一方海外のお客様は昔からFPGAを使っておられる。で、こういう話をすると、いくつものお客様に「Sam、ちょっと待ってください。我々はだいぶ前からFPGA使ってるじゃないですか」って言われるんです。

しかし、実際はどちらかというとASICのコードをそのままFPGAに変えてるだけなんです。ですから、動かない訳じゃない。動くんですけど、効率が悪くて、必要以上に大きなデバイスが必要になるし、必要以上の性能とか機能が出ない。もしこれをFPGAに最適化する形で設計すると、やはり違った結果が出るんですよ。そこで、先程の償却費とかの話にも関係するんですが、結局Volumeが関係することになるんですね。SystemはやっぱりVolumeが大切で、Volumeを確保するためにはどうしても海外で販売しないといけない。ところが海外で販売する場合、昔からFPGAに特化して設計してきた人と競合します。そうなると、効率がいい設計と、効率がそんなに良くない設計、気をつけないとコストの差が出てくるんですよ。

我々は3月締めで4月から新年度が始まるので、もう2014年度が始まっているんですが、その2014年の1つのテーマがDesign Methodologyです。最初からFunctionをよくみて、分析して。実際Big Designのお客様は相当DesignのViewをしっかりやってられるわけですが、我々もそうした方向に進もうと。以前、ASICを設計するためには規律が必要で、きちんとしたDesign Flowがありましたよね。ところがFPGAは少しWildだった(笑)。ただDeviceのサイズが大きくなると、やっぱり規律というかDesign Flowを持たなくちゃいけないな、と。現在そうしたFlowを作っている最中なんですが、実はこれに関しては日本が世界をリードしているんですね。日本から米国に、そうした過程をフィードバックするという流れに近いですね。

Q:面白いですね。

Rogan:ご存知の通り私はAMDに17年居たんですが、最初AMDに入った時、米国のやり方と日本のやり方はちょっと違っていた。で、私は日本から米国をどんどん引っ張っていったんですね。しかし、Xilinxに入ったらこれがちょうど逆だったんですよ。今はもう新しいTechnologyや新しいMethod、そうしたほとんどを日本から発信している感じです。まぁ、ほとんどは言い過ぎかもしれない(笑)。でも結構日本から発信していますよ。

Q:そのMethodologyというのは、例えば、細かくステップ分けてきちんと作っていくと言う意味ではにはASICと同じであっても、ASICの技法そのものが使えるわけじゃなくて、FPGA用にもう一度ちゃんと作り直さないといけないってことですよね。

Rogan:まず、ASICはきちっとしたDesign Methodologyがあります。それと同じ様に、XilinxもDesign Methodologyを作る必要があるんですが、ASICと同じ物では「無い」です。ですから例えばASICの場合、Resetの構成とか、Clockの構成とか、あるいは色々、FanOutの話とか必要あるんですが、FPGAの場合は基本的にはSRAMの上でやってるものですので、色々違ってくるわけです。

Q:まあ確かにASICですと、じゃFanOutどうするのかとか、Trackは9-Trackなのか12-Trackなのか、とか一杯パラメータありますが、そういうものはFPGAでは選べないですしね。

Rogan:我々は、昔はDeviceに関して、色々な仕様を出していたんですよ。例えば仕様に「これ以上だと使えない」とか「これ以下では使えない」とか。ところが、「じゃあそれ以外だったら大丈夫」かというと、ユーザーがDesign出すときに望んでいる結果を達成するためには、必ずしもそうではない。

ちょっと説明の仕方を変えましょう。今、(お客様が)Key Designをやるにあたっては、我々は3つのトレーニングを受けていただくことを要望しています。まず1つ目は、今までASICで設計されていた方がFPGAの設計に取り組まれる場合、どういう違いがあるのかをきちんと見ていただくというもの。2つ目はVivado。Vivadoは新しいツールですが、今までのツールとはぜんぜん違っていて、HLSの部分も入っているとか色々あるので、そのVivadoの使い方を理解していただくこと。

そして、3つ目が先ほど申し上げたDesign Methodology。どの順番で何をやって、どのくらい時間を考えないといけないのか。こういう演算をやる場合、この位のややこしさだとこの位時間がかかるだろう、とか。そうするともっと現実的な計画を立てることが出来るようになるわけです。

Q:それはVivadoでSynthesizeする時にこの位時間がかかるから、という話ですか?

Rogan:Synthesizeする期間ではなくて、これは設計の話です。

Q:Designそのものをするのに、この位普通はかかるから、ということでいいんですか。

神保:時間に関してと言うよりは、段取りですね。Project Leaderの目からすると、実際プロジェクトが上手くいかなくなる最後の瞬間というタイミングを押さえたいじゃないですか。だとすると、回路の機能分割から始まって、その次は実際に回路設計を書いて合成、配置配線に進んでいきますよね。そこに平行してタイミングが全部ネットしていくかとか、パワーのバジェットは合うのか、という問題を、全部我々のツールとしてサポートしていきます。

そして、その段階ごとに、何をどう見てもらう事で、手戻りが減って、プロジェクトのリスケジュールが避けれるのか。そういうFPGAを使ったシステムの開発の仕方を、各論でうまく話していくというのが、Design Methodologyとしてお伝えしている話です。

ASICの場合、Designが終わってTape outするまでをどう作るのか、という形ですが、FPGAは結局全部自分でやるじゃないですか(笑)。すると、ケアしなければいけない項目が増えてきますし、プロジェクトの時間も全然違ってくるんです。そうした事柄をお伝えして、プロジェクトが遅れる可能性、つまりリスクを減らすというのことですね。

Q:そういうのは、米国には無かったんですか?

Rogan:例えば、かつて難しいDesignがあって、米国にも同じようなDesignが先行してあったので、米国に「どうやってDesignを進めたらいいのか」と色々聞いたんですが、判らないと言ってくる。そこで、色々調べたらですね、実は無かったんですよ(笑)

ですので、そこで我々は日本のお客様のためにそうしたものを作る必要を感じ、実際に作りました。それが、実は米国でも使われているし、欧州でも使われています。要するにTechnology Edgeの部分を日本のお客様がやられるわけですが、もちろんそれはそれで自慢すべき事だと思うんです。が、そうしたEdgeの部分をやればやるほど、予想しないことを発見するわけです。

Q:ああ、なるほど。

Rogan:そうすると、予想しない事を経験したけれど、一度経験したからには、「では次はどうやってもっと良くするのか」という話になる。それにはやはりProcessを決めないといけないのかな、と思うんです。Processは決して無かったわけじゃなくて、昔からあるにはありました。しかし、最近のDeviceの場合3000万ASIC Gateと、一番早いもので28GHzのTransceiverを持っている。そうなると色々ややこしい問題が出てくる。

なので、今はこうしたFPGAの設計を1人か2人のエンジニアがやってるわけではなくて、大きいプロジェクトとして数百人のエンジニアが参加している。数百人のエンジニアに対して、上手くそれぞれやってる部分を管理しなければいけないと思うんですよ。

ですから以前は、SupplierとCustomerという関係でしたが、今はそういう大きいDesignの場合、本当にPartnerとしてやらないといけない。お互いの協力と支援が相当必要になってくるので、そういう意味でXilinxはお客様の付き合いに関して、もうNext Levelに行った感じだと思ってますね。今、お客様と交わしている会話は、5年前とはまったく違う会話になっています。

Q:Xilinxに入って、だいぶお客様とのRelationshipが変わってきた?

Rogan:おかげさまで!