人とコンピュータの関係を考えると、二者間には常にインタフェースが存在します。本連載では人とコンピュータを介在するインタフェースに着目し、インタフェースとそれらを世に生み出すプロダクト開発について議論します。初学者の方からプロフェッショナルの方まで、何らかのプロダクト開発のヒントを持って帰っていただけるような連載を目指しています。

こんにちは、takeruです。Helpfeelでプロダクトデザイナーとして開発に携わっています。本記事では、UIデザインにおける「ユーザーコンテンツの扱い」について、実際の事例を交えながら紹介します。

UIデザインの難しさの一つに、「扱うコンテンツが常に変化すること」が挙げられます。これは固定のコンテンツを扱うグラフィックデザインやエディトリアルデザインとは大きく異なる点です。UIデザインでは文字の量、要素の数、ウインドウのサイズなど、さまざまに変化する要因を考慮しなければなりません。また、同じインターフェースであっても、誰が、いつ、どのようなコンテンツを操作するかによって印象や使い勝手が大きく変わることもあります。

特に、ユーザーが作成・アップロードするコンテンツの取り扱いには注意が必要です。開発側がユーザーの属性や利用文脈を正しく理解していなければ、設計時の想定と実際の使用時の印象に大きな乖離が生まれ、意図しないUXにつながることもあります。そのためユーザーコンテンツを扱うサービスでは様々な工夫が施されています。

Google Photosの例

身近な例としてGoogle Photosを紹介します。Google Photosの写真一覧ページでは、ユーザーがアップロードする写真の縦横比がバラバラでも、グリッドの左右と上下の端がきれいに揃っています。これは、1行に含める写真の数や行の高さを適切に計算・調整することで、多様なユーザーの写真を統一感のある表示にしているからです。

また、画像の上にはタイトルや動画再生ボタンなどのUI要素が配置されていますが、ただ配置するだけでは、明るい写真の場合に視認性が落ちてしまいます。この問題を防ぐために、画像とUI要素の間に薄い黒いグラデーションを挟むことで、写真の明度に関係なくUI要素がはっきり見えるようになっています。

  • Google Photosのグリッドレイアウト。グラデーションのON / OFFを比較(出典:Google Photos)

    Google Photosのグリッドレイアウト。グラデーションのON / OFFを比較(出典:Google Photos)

Instagramの例

Instagramは2025年1月から、プロフィール画面のグリッド表示を従来の正方形(1:1)から縦長(4:5)の矩形へ切り替え、利用者の間で大きな話題となりました。

この変更の背景には、Instagramの公式アカウントでも言及されているように、いくつかの理由があります。まず、投稿されるコンテンツの大半が縦向きであり、動画投稿も増えていること。さらに、スマートフォンの画面が大型化した現在では、従来の正方形フォーマットでは表示領域を十分に生かせず、コンテンツの情報量が制限されてしまうこと。そして、縦長のレイアウトを採用することで、写真や動画を過度にトリミングすることなく、本来の構図や意図を損なわずに表示できるようになることが挙げられています。

従来の伝統を尊重しつつも、実際のユーザー行動やデバイス環境に応じて柔軟にUIをアップデートする姿勢は、ユーザーコンテンツ中心の設計における重要な観点といえます。

  • グリッドデザイン変更の公式アナウンス(出典:Instagram)

    グリッドデザイン変更の公式アナウンス(出典:Instagram)

ポステルの法則

こうした事例の背後には、「入力には寛容に、出力には厳密に」というUX原則、いわゆる「ポステルの法則」があります。元はネットワークプロトコルの設計思想として提唱された考え方ですが、UIデザインの分野でも広く応用されています。

ポステルの法則の典型的な例として、入力フォームの設計がよく挙げられます。たとえば電話番号や郵便番号の入力において、ハイフンの有無、全角・半角、スペースの混入など、ユーザーによって入力形式はばらばらです。

このような場面で、「正しい形式で入力してください」とエラーを出すのではなく、システム側が自動でフォーマットを修正・統一する設計の方が、ユーザー体験としては優れています。つまり、入力のばらつきに寛容でありながら、出力としては整った形式を保つという思想です。

同じ考え方は、視覚的なUIにも当てはまります。たとえばGoogle Photosの例では、アップロードされる写真の縦横比がバラバラでも、それを破綻なく一覧表示に落とし込むために、グリッドの構成や行の高さを自動で調整しています。これは、ユーザーからの入力(多様な写真)には柔軟に対応しつつ、出力(表示)は整然と見せるという、まさにポステルの法則の実践です。

このように、多様な入力をそのまま受け入れるのではなく、体験としての出力側で整えるという発想は、ユーザーコンテンツを扱うUI全般に通じる基本姿勢といえるでしょう。

App Storeの例

Google Photosのように、多様なユーザーコンテンツを受け入れるデザインがある一方で、アップロードされるコンテンツ自体を制御することで視認性やデザインの一貫性を保つ事例もあります。

例えばAppleのApp Storeでは、開発者向けのガイドラインに基づき、アプリのタイトルや説明文の長さ、プレビュー画像、アイコンのデザインなどに詳細なルールが設けられています。これにより、ストア内の視認性が確保され、アプリ一覧や検索結果で一貫した体験が維持されるようになっています。特にアイコンやプレビュー画像は、各アプリが適切に特徴を伝えられるように、指定されたフォーマットに沿って作成する必要があり、デベロッパー側に一定のデザイン基準を求める仕組みになっています。

  • App Storeのガイドラインの一部(出典:Human Interface Guidelines)

    App Storeのガイドラインの一部(出典:Human Interface Guidelines)

まとめ

デザイン作業ではつい整ったサンプルを使いがちですが、実際のユーザー環境を想定し、リアルなデータで検証することが重要です。特にユーザーコンテンツが主体となるUIでは、想定外のケースにも対応できる柔軟なデザインが求められます。コンテンツの多様性を受け入れつつ、視認性や一貫性を保つ工夫をすることで、より直感的で使いやすいインターフェースを提供できます。

文:takeru