連邦政府の政策変更の発表に驚かされることは少ない。事前に演説で匂わされていたり、親しい記者にリークするなどしてメディアや人々の反応を見た上で実行に踏み切るからだ。しかし、8月25日のホワイトハウスの科学技術政策局(OSTP)の発表は晴天の霹靂、大きなサプライズだった。

連邦機関の助成を受けた研究の成果について、査読済み論文の最終原稿が出版されると同時に誰でも無料で自由に利用できるようにする新方針を打ち出した。論文の基礎となるデータについても共有を求めている。関係する政府機関は新方針に従った新ポリシーを2024年末までに固め、2025年末までに実施に移す。

この新方針に至る背景を説明すると、研究者は長年、研究成果を論文という形で学術誌に投稿して世に発表してきた。そして、学術誌の出版社は図書館などと購読契約を結ぶ「購読料」モデルで収益を上げてきた。しかし、それでは掲載された論文を読めるのは購読料を支払っている図書館などを利用できる人達だけ。購読料モデルによって情報と知識の流れが妨げられ、研究の輪の広がりや活発な議論の機会が損なわれているという批判が長く上がっていた。

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