昨年12月から「Karma」というスタートアップのモバイルWi-Fiルーターを使用している。ネットワークはClearwireのWiMAXサービスだ。

すでに接続性とデータ伝送速度で上回るVerizonのLTE回線を1つ契約しているので、 (窓際に置かないと電波をキャッチしないことが多い)Clearwireの回線をあえて契約する必要はなかったのだが、Karmaは「初のソーシャルホットスポット」とアピールしている。そこを試してみたくて、モバイルブロードバンド回線を1つ増やしてしまった。

Karmaは見た目、普通のモバイルWi-Fiルーターであり、機能も普通のモバイルWi-Fiルーターだ。特徴はサービスにある。

送られてきたKarmaはサインアップに使ったFacebookアカウントの情報に基づいてパーソナライズされていて、電源をオンにしてWi-FiデバイスでWi-Fiネットワークを検索すると「ユーザーの名前's Karma (筆者の場合はYoichi's Karma)」という名前でリストされる。これまで接続したことのないデバイスで接続すると、ブラウザが起動して、Facebookアカウントでのログインが求められる。ログインすると、すぐに使用できるようになる。

データ接続サービスを使用するためのサービス契約は不要。完全プリペイドで、料金はデータ転送量1GBが14ドル。使用期限はなく、例えば1GB分を購入したら、それを使い切るまで使い続けられる。

WiMAX対応のモバイルWi-Fiルーター「Karma」。最近のスタートアップらしく、ハードウエアやWebサイトのデザインからシンプルにまとめている

KarmaのWi-Fi接続にパスワードを設定することはできない。近くにいる人がWi-Fiネットワークを検索したら、Yoichi's Karmaはオープンネットワークとしてリストされる。

Karmaユーザーなら自分のKarmaでなくてもFacebookアカウントでログインするだけで、自分のKarmaアカウントでWiMAXネットワークにアクセスできる。Karmaユーザー以外であっても、Facebookアカウントでサインアップすると100MBのボーナスを獲得できるので、数ステップでインターネットを使用できるようになる。

カフェなどで他人のKarmaに接続すると、Karmaの仕組みを説明し、Facebookアカウントでログインを求める画面が表示される

もし誰かが自分のKarmaに接続したら、Karmaを貸した人には共有ボーナスとしてデータの残量に100MBが追加される。借りた人が貸した人のFacebookページに感謝のコメントを残したら、借りた人にも25MBのボーナスが付く。オープンネットワークのモバイルWi-Fiルーターがつながって、より大きなネットワークができるから"ソーシャルホットスポット"なのだ。

誰かが筆者のKarmaに接続したら筆者のFacebookの公開プロフィールが相手に示され、筆者も公開プロフィールを通じてKarmaを使用した人のことを確認できる。

意図せずロケーションを公開することになるという批判もあるが、Karmaはソーシャルホットスポットなのだ。プロフィールのやりとりがセキュリティの一部であるのを理解しなければ使用できない。

Karmaを使ってみると分かるが、登録とログインを全てFacebookアカウントに限定しているところがKarmaの肝である。これがKarma専用のユーザーID/パスワードでログインする仕組みだったら、家族や友達とKarmaを共有する使い方が広まってセキュリティが弱まる。家族であっても気軽にパスワードを教えられないFacebookアカウントだから、データ接続サービスが個人と共にある状態が保たれる。それによって、他人のKarmaに接続しても、自分が持っているデータ枠でインターネットを使用できるソーシャルホットスポットの仕組みが機能するのだ。

Karmaを複数で共有したくてKarma用にFacebookの捨てアカウントを作る人も出てくるかもしれないが、パーソナライズして送られてきたKarmaは基本的に登録したFacebookアカウントを変更できない。捨てアカウントが発覚してFacebookにアカウントを閉鎖されたらKarmaを使えなくなるので、普段使用しているFacebookアカウントを使うのが賢明である。

完全プリペイドで1GBあたり14ドルという価格は、他のモバイルWi-Fiルーター向けサービスよりも柔軟で手頃だ。

個人的には、Karmaを持ち歩いていないときでも人が集まるところでは誰かのKarmaを見つけられるぐらい成功してもらいたいと思っている。

だが、残念ながら宣伝力が弱く、Karmaを知っている人にいまだに会ったことがない。当然、誰かが自分のKarmaを使ったこともなく、Karmaの今後が明るいとは言いがたい。ただ、これまでに登場した無線アクセスポイントを共有するサービスに比べると、とても使いやすく、実用性も高い。それをFacebookログインで実現したアイディアは、他のサービスやハードウエア共有にも広まってほしいと思う。