• 週刊こむぎ 第116回


「是非とも初心忘るべからず」「時々の初心忘るべからず」「老後の初心忘るべからず」

能役者・能作者の世阿弥が残したとされる言葉で、「未熟だった時のことを忘れないように精進すべきである」「未熟な状態を脱しても歳をとっても、その時々に起こる変化や課題に対応し、糧にしていくべきである」といった意味に解釈されます。

仏教や禅の世界でも「初心」は大切なものとされています。何かを成そうと決意したり、取り組んだりする時の「最初の心」には「自分は〇〇を得た」という慢心や慣れ・癖になどによる思考の偏り、特定のやり方に対する執着などがなく、変化や可能性を受け入れ、試すことができる開かれた状態の心と考えることができます。

長い人生の中で、人は多くの変化や未体験の出来事にぶつかるものですが、その時々で常に同じやり方や考え方にこだわってしまうと、うまく対応できないこともあります。

また、長く同じことを続けていると、だんだん自分や周囲の中でのハードルが上がっていって、小さな達成では満足できなくなり、「良いことがあった」と思えることが少なく感じられたりするものです。

最初は褒めてもらえて嬉しかったことを、今では「そんな小さなことで褒められても嬉しくないよ」と感じたり、結果に満足できず、たとえ息抜きのための趣味であっても楽しく感じられなかったり…という経験をしたことがあるのではないでしょうか。

今「当たり前」と思っていることも、最初はそうではなかったはずです。変化が起こった時や行き詰まりを感じた時に多くのことを受け入れることができた時の「初心」を覚えておけるよう、日々の出来事に丁寧に接しながら生きていきたいものです。

■こむぎこをこねたもの、とは?

  • 週刊こむぎ 第116回

■著者紹介

Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。

「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。