弁護士・久保利英明の【書評】『アメリカ民主党 失敗の本質』

世界中で右派ポピュリズムがなぜ伸びているのか

 著者等はかつて民主党の戦略的参謀であった。本書の第一部は、カーター、ビル・クリントン、オバマ、バイデンの民主党の歴代大統領選挙を通じて、民主党支持率の低落を分析する。

 その分析によれば、民主党は最初に公民権法への反発と福音派の伸張により南部州と農業州で支持を失った。次に労組の組織率の高かったペンシルベニアやミシガン、オハイオなど脱工業化による雇用喪失が増大した諸州で白人労働者の票を失った。

 2016年にはヒスパニックやアジア系労働者の票も失った。クリントン、オバマの時代に米国産業の中核がウォール街やシリコンバレーへ移行し、グローバル経済が進展して専門職やエリート層の支持を拡げたものの、企業の海外移転や外国企業との競争にやぶれて雇用を失った民衆の大分断が発生した。

 第二部は有権者を置き去りにした民主党の「文化的急進主義」に焦点を当てる。こうした世界政治の変質は日本の野党の失敗にもつながる。その背景は、グローバル経済と資本主義の成功により、世界中の国民が、階層分化し、分断され、富が偏在する中で、圧倒的多数が経済的不満を抱える庶民層と化した。

 逆にエリート層が希薄化し、富裕層も稀釈化された。即ち、民主党支持の基盤が変質したことへの民主党幹部の読み違いがトランプ勝利の原因であるとの分析である。

 トランプの勝利は世界変化の原因ではなく、結果であるという見立てである。

 日本に置き換えてみれば、自民党政権の圧勝は日本の窮乏化により、国民が分断され、苦境に立つ庶民が、平和や国際法の遵守よりも消費税廃止と経済振興による生活支援を是とする刹那的な心理に陥ったためと言える。これは世界の政治状況に繋がる指摘で、中間層の没落として「日本ファースト」も「MAGA」も同根と言えよう。

 5月の英国地方選でも二大政党は壊滅し、「リフォームUK」が独走した。

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