NTTドコモは2026年7月31日、国内初となるエリクソン製の大容量基地局装置「RAN Processor 6672」の導入を完了したと発表。それを活用し、3つの周波数帯を束ねて設備容量をおよそ3倍にする「Tri-Band Massive MIMO」の運用を開始したことを明らかにしています。その実力はどれほどなのか、大阪府で実施されたイベント対策でこれらの設備が活用されたので、実際に確認してみました。→「ネットワーク進化論 - モバイルとブロードバンドでビジネス変革」の過去回はこちらを参照。
エリクソンの最新機器導入で実現
2023年の通信品質低下でネットワークの評価が著しく低下したNTTドコモ。それだけに、同社は通信品質改善のためあらゆる策を講じていますが、2026年7月31日に打ち出したのが、エリクソン製の「RAN Processor 6672」を、国内で初めて導入したことです。
これはエリクソンの最も新しいベースバンドユニット(BBU)。BBUは基地局の中で、受信した電波をデータに変換してコアネットワークとやり取りする装置になりますが、RAN Processor 6672は従来のBBUに比べて4倍の収容効率と、50%の消費電力削減を実現したとしています。
それでいてNTTドコモが導入を積極化している「O-RAN ALLIANCE」の仕様、要はオープンRANに準拠していることから、同社の設備にも導入しやすい。そうしたことからNTTドコモでは、RAN Processor 6672を通信トラフィックの多い都市部を中心に導入し、トラフィック対策に生かそうとしているようです。
もう1つ、NTTドコモが新たに展開するのが「Tri-Band Massive MIMO」というもの。Massive MIMOは多数のアンテナ素子を用いて通信容量を増やすアンテナ技術で、NTTドコモも通信容量を増やすため、Massive MIMOに対応したMassive MIMO Unit(MMU)の導入を進めています。
このMMUをNTTドコモが保有する3.5GHz帯、3.7GHz帯、4.5GHz帯の3つの周波数帯に導入し、3つの周波数帯を束ねて280MHz幅という非常に広い周波数帯域幅を実現。従来の約3倍という大容量通信を実現し、品質向上に貢献するのがTri-Band Massive MIMOの大まかな仕組み。その実現に、処理性能の高いRAN Processor 6672が大きく貢献するようです。
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NTTドコモはエリクソン製の最新BBU「RAN Processor 6672」の導入と、それを活用して3つの周波数帯を束ね、280MHz幅での大容量通信を実現する「Tri-Band Massive MIMO」の導入を明らかにしている
これら機器や設備の導入に際しては、NTTドコモが具体的な通信機器ベンダーの名前を挙げてアピールしたこともあって驚きの声が挙がっていましたが、実際の通信にどの程度影響を与えるのでしょうか。
2026年8月14日から大阪府の万博記念公園で実施された「SUMMER SONIC 2026 OSAKA」で、NTTドコモが初めてこの設備を本格運用したことから、その開催前に実力を確認してみました。
4G向けだった3.5GHz帯をまとめて80MHz幅に
今回のイベントでTri-Band Massive MIMOが導入されたのは、会場近くの常設局と、会場内に設置された臨時局の2つ。いずれも5Gのスタンドアローン(SA)運用に対応しており、3.5GHz帯、3.7GHz帯、4.5GHz帯の3つの周波数帯に対応したMMUを設置しています。
このうち、3.7GHz帯と4.5GHz帯は最初から100MHz幅を5G向けに割り当てられていますが、3.5GHz帯に分類される周波数帯は元々4G向けに割り当てられたもので、NTTドコモは2014年と2018年に40MHz幅ずつの周波数免許を受けています。
しかしながら、その周波数は3440MHz~3480MHz、3480~3520MHzと連結しているため、同社ではこれらを連結し、5Gで80MHz幅を持つ1つの周波数帯として活用する取り組みを進めているといいます。
そうしたことから、今回は3.5GHz帯は2つの周波数帯を連結して80MHz幅で運用。さらに100MHz幅を持つ3.7GHz帯と4.5GHz帯と束ねることで、280MHzという広い帯域幅を実現しているとのこと。ただ、同社でも80MHz幅の3.5GHz帯をMMUで利用するための技術検証は7月下旬に完了したばかりで、運用は今回が初のことになるそうです。
では、実際のところ280MHzという帯域幅で、通信速度はどの程度高速になるのでしょうか。臨時局の付近でスピードテストを実行したところ、ダウンロードで3Gbpsを超える通信速度を実現していました。
より待機幅の広いミリ波を用いた環境であればより高速な通信速度を実現できますが、ミリ波を使うことなくこれだけの速度を実現していることには驚きがあります。
一方で気になるのが、万博記念公園は街中と違い、常に人が多くいる訳ではないにもかかわらず、常設局にTri-Band Massive MIMOを導入していること。その理由は万博記念公園の特性にあるようで、大規模イベントが頻繁に開催され通信トラフィックが急増するケースが多いことから、常設局にも容量対策が求められているのだそうです。
NTTドコモでは今回のイベントに合わせて、他にも4Gや5Gのノンスタンドアローン(NSAI運用にも対応した移動基地局車を設置し、通信容量対策を実施していましたが、一方で同社として、Wi-Fiスポットの設置による容量対策は実施していないとのこと。そうした点からも、同社が新しい設備による対策に自信を持っている様子を見て取ることができます。
今回はあくまでイベントに合わせての運用となりますが、これら設備は今後大都市部を中心として、通信容量の多い場所に積極的に配置されるものと考えられます。
それによって同社の通信品質向上が期待される所ではある一方で、その実力をフルに活用するには、端末側にも対応する通信性能が求められ、スマートフォンの価格高騰で買い替えが進まない昨今ではそうした点でも難しさがあります。
また、Tri-Band Massive MIMOの恩恵を得るには5G SAを利用する必要がありますが、NTTドコモの場合5G SAの利用にはオプション契約が必要で、現在は無料で利用できるもののユーザー側に対応が求められることも確かです。ネットワークの通信品質対策だけでなく、ユーザーが大容量通信の恩恵を受けられる環境作りも、引き続き同社には問われる所ではないでしょうか。





