インフラシェアリング大手のJTOWERは、2026年8月21日に戦略発表会を実施。インフラシェアリングの現状と今後の取り組みについて説明がなされましたが、中でも注目されるのは、周波数オークションでミリ波の地域枠免許を落札したことでしょう。4億円超もの資金を投入して周波数免許の獲得に踏み切った狙いは「周波数シェアリング」にあるようです。→「ネットワーク進化論 - モバイルとブロードバンドでビジネス変革」の過去回はこちらを参照。
屋内、屋外ともにシェアリング事業は好調
携帯各社によるモバイル通信の通信品質競争が加速している昨今。しかし、中長期的な視野に立てば、少子高齢化でモバイル通信料収入が頭打ちとなり、地方を中心にインフラの維持が難しくなってきます。
そのため、今後は複数の事業者で基地局を設置する場所、あるいは基地局自体をシェアし、コストを削減しながら広いエリアを整備する、インフラシェアリングの重要性が高まるとみられています。
そして、国内のインフラシェアリングの大手となるのがJTOWERです。同社は2024年に米国の投資会社であるDigital Bridgeに買収されています。Digital Bridgeは2025年にソフトバンクグループに買収されたことから、同社グループの影響力が強まったとみる向きもあるようですが、国内では携帯4社に対して平等にインフラシェアリングの環境を提供するという方針を続けています。
JTOWERが2026年8月21日に戦略発表会を実施し、事業の現状と今後の取り組みについて説明しました。同社の現在の主力事業は建物などの屋内シェアリングですが、その導入実績は2026年6月時点で874件、総アンテナ数も約6万6000基と順調に拡大を続けています。
さらに、2026年3月には移動通信基盤整備協会(JMCIA)の協力事業者にも選定。今後はJMCIAと協力して地下鉄などでの5Gインフラシェアリング環境整備も力を入れていくそうで、それに向けた新型の5G対応無線機の開発完了も発表しています。
一方、今後の成長領域となる屋外でのインフラシェアリングに関しては、かねてから進めてきたNTTドコモらNTTグループからの鉄塔所有権の移管が完了し、さらに新設の鉄塔を増やしたことで、2026年6月時点で運用タワー数は7498本に上るとのこと。すでに、携帯4社が何らかの形で、同社の屋外インフラシェアリング施設を活用しているようです。
また、最近の傾向として、携帯電話会社の側からシェアリング前提の整備を求められるケースが増えているとのこと。これまでシェアリング用の鉄塔をJTOWER側が建てようとしても、断られるケースが多かったような施設であっても、携帯電話会社の側からシェアリングでの整備要求が挙がることで整備しやすくなっているようです。
都市部だけでなく、地方でも同様に携帯電話会社の側からインフラシェアリングでのネットワーク整備が求められるケースが出てきているとのこと。その具体例が、8月21日に発表された長野県松本市との協定締結です。これによりJTOWERは同市にある上高地の横尾地区でインフラシェアリング環境を整備します。
同地区は電波環境が悪かったことから、松本市が携帯電話会社と話し合いを進めていましたが、携帯電話会社側がシェアリングでの整備を提案し、JTOWERを紹介することで今回の協定に至りました。
周波数シェアリングはインフラシェアリングの究極系
既存事業が好調に推移する一方で、JTOWERはさらなる事業拡大に向けた戦略もいくつか打ち出しています。中でも大きな注目を集めているのは、同社が周波数オークションに参加し、インフラシェアリング事業者として初めて周波数の割り当てを受けたことではないでしょうか。
周波数免許を落札する周波数オークションは、これまで日本では実施されていませんでした。しかし、6GHzを超える高い周波数に関しては、免許割り当てに周波数オークションが導入されることが2025年に決まっています。
そこで、2026年6月にミリ波に相当する26GHz帯の一部の免許割り当てに周波数オークション実施されました。その結果、全国で利用できる400MHz幅の周波数免許はNTTドコモが獲得。一方で200MHz幅の周波数を各地域別に割り当てる「地域枠」の入札にはJTOWERとハイテクインターの2社が参加しました。
入札の結果、JTOWERは東京23区や神奈川県横浜市など、大都市部を中心とした13地域の地域枠免許を落札しました。しかし、そもそも自ら携帯電話サービスを提供しないJTOWERが、なぜお金をかけて周波数免許を獲得するのか?という点には疑問の声があったことも確かです。
同社によると、それは「周波数シェアリング」のためとのこと。従来のインフラシェアリングは、基地局の設置場所を共有することが主でしたが、現在では中継装置や無線機など、設備自体を共有するシェアリングが進んでいます。
設備だけでなく電波、つまり周波数も携帯各社で共有できればよりコストを抑えてインフラ整備ができるうえ、電波利用の効率化にもつながります。そこでJTOWERが推し進めようとしているのが周波数シェアリングで、これはある意味インフラシェアリングの究極系ともいえるものにもなります。
ミリ波は大容量通信に適しているが広いエリアをカバーしづらいという特性上、人流が集中するスタジアムやアリーナ、繁華街などでのスポット的なトラフィック対策での活用が主になると見られています。
それだけに、JTOWERではこのような施設が多い大都市圏の周波数を獲得し、それを共用できる設備も自ら開発することで、ミリ波での周波数シェアリングを実現したいと考えています。
とりわけミリ波はここ最近、携帯各社も本格的な活用に向けた模索を進めるようになってきています。依然、対応する端末の数が少ないといった課題はあるものの、今後は利活用が広がるとみてJTOWERも周波数の獲得、そして本格的な周波数シェアリングの展開に踏み出したようです。
ただ、周波数落札のために、同社は4億6871万円という大きな金額を費やしていることもまた確か。条件の良い大都市圏の免許がメインとはいえ、ミリ波の利活用が思うように伸びなければ活用が進まないというリスクもあるでしょう。
また、機器の開発やインフラの整備が遅れてしまい、6Gのサービス開始が本格化する2030年ごろになってしまうと、今度は6Gで有力視されるセンチメートル波への関心が高まり、端末メーカーが一層ミリ波への対応を遅らせることになるかもしれません。
そうしたさまざまなリスクがあるとはいえ、今回のJTOWERのチャレンジは場所や設備だけにとどまらないビジネス拡大の機会として、大いに注目されるものでもあります。スピード感のある展開でその利活用を上手く進められるかどうか、手腕が問われる所ではないでしょうか。







