このところ、太陽の活動が活発になっています。太陽表面での爆発(フレア)が頻発し、太陽を作るガスが宇宙に飛び散っています。んが、これは人工衛星や特殊な望遠鏡を使ってわかるもの。かつては、人知れずカラスが知らせていました。なんのこっちゃ。今回は太陽とカラスの話です。

太陽は、地球に1m2あたり1.37KWという強烈なエネルギーを送り付けています。これを全量利用可能な変換をすると、一戸建てなら屋根が50m2とかですから70KW、7万Wになります。家庭の電気など余裕でまかなえますな……

まあ、いつも昼間で、いつも晴れて、いやエネルギーを吸収する大気がなくて、屋根がいつも太陽に正対して、それが100%我々が利用できるエネルギーに変換されればですが……

まあ一桁おちても7KWですから、それでも十分といえば十分ですな。国際宇宙ステーション(ISS)などは、全エネルギーを太陽光でまかない、常時3~7人の宇宙飛行士と電子レンジなども含めた運用や研究の機器群のエネルギーをまかなっているわけです。まあ、人工衛星のほとんどはそうですな(ごく一部、やプルトニウム電池を熱源とする衛星があります。詳しくは鳥嶋さんの記事がよいですよ)。

  • 国際宇宙ステーションは巨大な太陽電池で全エネルギーをまかなう

    国際宇宙ステーションは巨大な太陽電池で全エネルギーをまかなう (C)NASA

さて、そんな強烈なエネルギーを送り付ける太陽ですが、このエネルギーの源は、太陽の中心で起きている水素の核融合反応です。これが半径70万km(地球~月の距離のさらに2倍、東京-ニューヨーク30往復分あまり)の太陽の身体(ほぼ水素とヘリウムのガス)を伝わり、ざっと10万年かかって表面に到達し、さらに可視光線や赤外線として宇宙に放出されるわけです。

さて、太陽表面は光と熱を放射するストーブのパネルみたいなものですが、ストーブとちがって気体です。海に水がタプタプしているみたいに、太陽の表面は水素やヘリウムのガスがタプタプ(というのか?)しているわけですな。

あ、なかなかカラスにたどりつかない。まあもう少しでございますよー。

その太陽の表面の様子がこちらです。ハワイにあるダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡がとらえたものです。動画もこちらで見られますよ

  • 太陽の表面のスナップショット

    太陽の表面のスナップショット。内部からわきあがる熱で対流が発生している (C)NSO/AURA/NSF

見えているのがガス(気体)だという感じがしませんが、一つ一つの細胞のようなものが対流です。アメリカ合衆国の半分くらいのサイズで熱がわきあがり、周囲に超巨大なガスの滝となって沈み込んでいるわけでございますな。

さらに、そんな煮え立っているような塩梅なので、熱があがってくるバランスがくずれて特定の範囲にエネルギーが集中すると、沸騰のような状況になって、宇宙に飛び出すことがあります。そんな様子を、太陽全体をとらえるSOHOという人工衛星がモニターしています。次の写真は、その大規模なものです。この噴出は横むきですが、地球の方に向かってくると、地球大気がゆさぶられて過熱・膨張し、低い軌道の人工衛星が軌道をみだされたり、もともと電離しているガスなので、電気が流れて地球の磁場が変動してオーロラがはげしくなったり、過去には送電線に誘導電流がながれて、大規模停電がおこったこともあります。

  • 太陽から吹き上がるガス

    太陽から吹き上がるガス。このまま宇宙の彼方までひろがっていく (C)SOHO

もちろん、こうしたガスが吹き上がりが多く起こるときが、太陽活動が活発ということになります。普段はこのガスは太陽があまりにも明るすぎて、大気による太陽光の散乱の影響(ようは青空の明るさ)を取り去れる宇宙空間からか、コロナグラフという特殊な望遠鏡を高山の空気が薄いところに設置してできるものなのです。

で、いま、実は活発なのでございますが、その指標は人工衛星に頼らずとも、特殊な望遠鏡とか使わなくてもできるのです。それは家庭用の小型望遠鏡による黒点観察です。黒点は、太陽表面にうすぐらい斑点ができるものです。先ほどのダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡での観測写真はこちらになります。

  • 太陽の表面に発生した黒点をとらえたもの

    太陽の表面に発生した黒点をとらえたもの (C)NSO/AURA/NSF

表面が少しへこんでいるように見えますね。これは黒っぽい部分は下からわきあがる熱が押さえ込まれているからです。なにに? 磁場にです。太陽をつくるガスは高温のあまり電離しているのですが、電気を帯びたガスが動けば、電気が流れ、電流あるところには磁場ができるからなのですね。その磁場が押し合いへし合いしたガスの流れのあげく束になり、まとまると、そこはこんどは電離したガスを押さえつけたり、逆に動かしたりする場所になるのでございます。

太陽活動が活発なときは、黒点ができ、そういう黒点がある場所や多い状況は,太陽から吹き上がるガスも多くなる。宇宙へも飛び出すということです。

この黒点は、小型望遠鏡でも見られますが、望遠鏡での太陽の観察には一定の知識と注意が必要です。そもそも望遠鏡ないがな、ですよね。でも、インターネットの時代ですから、あちこちで公開されています。先ほどのSOHOもそうですし(下の写真)

  • 太陽表面にあらわれた黒点

    太陽表面にあらわれた黒点。2023年1月10日の様子 (c)SOHO

身近なところでは埼玉県の川口市立科学館の公開しているリアルタイムの太陽があります(基本開館時間だけなのですが、太陽は昼間しかみられませんからあまり問題ではない)。ここでは、科学館としては非常に良質な太陽望遠鏡を運用しています。一般公開もしていますので、東京・埼玉近郊の方はぜひ足を運んでみてください。

あ、カラスの話だった。

太陽の伝説では「太陽にカラスが住んでいる」とか「太陽の友達はカラス(ギリシア神話の太陽とカラスの寓話)」とか、日本では神武天皇を八咫烏という太陽の化身が案内したとかいう話があります。八咫烏はサッカー日本代表のマークにもなっていますな。

黒点は非常に巨大なもの(太陽直径の20分の1以上になるもの)は「日食グラス」などを使うと肉眼でもわかります。そして、その巨大な黒点は太陽が活発になる時期にだけ見られるのです。で、ここしばらくは見られるチャンスがありそうなんですよ。

黒点はカラスのことではと、多くの人が考えていますし、私もそう思います。