宇宙には予測が秒単位でできることから、どーなるかわからんことまで色々おこります。人間がかかわる宇宙開発は、予想しやすいようで、予想しにくいものですが、「素人でも手軽に関われる」宇宙についてのあれこれを、サクっと紹介する恒例の「宇宙、どうでしょう」。2023年前半1~6月の宇宙開発編をご紹介します。前回の星空編とあわせて読んでねー。

この項目は、基本SPACEFLIGHT NOWを見ながら書いております。

えー、昨今は宇宙がらみの身近なニュースが多いですな。

月探査のアルテミス計画がいよいよテスト機を月に送り、相乗りで打ち上げられた日本のキューブサット「EQUULEUS」と「OMOTENASHI」も話題になりました。大塚実さんの記事に詳しいですな。OMOTENASHIは、月への着陸も目指しましたが姿勢制御ができなくなっての断念は残念ですが、意欲的な計画には拍手です。しかし、バルブかあ。テレビドラマにもなった池井戸潤さんの直木賞受賞作品「下町ロケット」の佃製作所を思い出しますな。

一方、スペースX社のFalcon9ロケットで打ち上げられたHAKUTO-Rは順調に月に向かっています。また、このあと紹介する2023年のイベントではJAXAがSLIM探査機を打ち上げますな。話題が多い昨今でございます。

1・2月

2月12日、日本の新型主力ロケット「H3」の打ち上げが予定されています。

地球観測衛星「だいち3号」を搭載します。H-IIAの時代が長かったですが、ついにバトンタッチですな。

  • H3ロケット試験機1号機

    2022年11月7日に実施された1段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)の後、翌8日に第2射点(LP2)から大型ロケット組立棟(VAB)に戻る際に撮影されたH3ロケット試験機1号機 (C)JAXA

スペースXのFalcon9ロケットとFalcon Heavyでの多数の打ち上げが予定です。

ウクライナでも話題になり、日本でもサービスインした衛星インターネットのStarlinkや、やはり多数の小型衛星群(クラスター)でインターネットを提供するOneWebの追加打ち上げが予定されています。またGPSや通信衛星など、まあ、すごい勢いですな。

なお、クラスター衛星については、あまりに衛星が増えすぎて、しかも他にも恒星なみに明るく見える衛星群もでてきそうで、天体観測に支障がでているとのことですが。世界のどこでもネットにつなげる利便性と人類の知的探求、うーむむですな。利便性は代替手段が見つかれば話が変わりますけど。

Starshipの軌道周回テスト

スペースXといえば、「空飛ぶイカメシ」こと「Starship」の軌道周回を目指す初めての打ち上げテストが予定されています。早い時期にということですが、これができれば次は前澤さんを乗せて月なのでしょうな。

国際宇宙ステーションへの宇宙船お届け

年末に、係留していた帰還宇宙船ソユーズからの冷却液漏れで話題になった国際宇宙ステーション。10月に入室した若田さんたちは無事に地球に帰れるんやろかという話ですが、一応、有人宇宙機を国際宇宙ステーションに送る計画はあります。

  • ソユーズMS-22から冷却液が噴出している様子

    ソユーズMS-22から冷却液が噴出している様子 (C)NASA TV

2月19日には、スペースXのクルードラゴンが国際宇宙ステーションに向かいます。

アメリカのステファン・ボーウェン宇宙飛行士とウォーレン・ホーバーグ(ウッディ)宇宙飛行士、UAEのスルタン・アル・ネヤディ宇宙飛行士、ロシアのアンドレイ・フェジャーエフ宇宙飛行士が6か月の滞在のために向かいます。国際宇宙ステーションは、通常は7人程度が定員ですので、上の4人が長期滞在なら、滞在中の宇宙飛行士7人の一部ががこれに乗って帰還するのでしょうかね。

これと相前後して、ロシアのプログレス無人補給機が国際宇宙ステーションに向かいますが、これは人が乗るものではありません。

他の国は?……欧州は?

珍しく中国の予定が見当たりません。いま、宇宙ステーションを作り上げ、着々と進めているのですが、見落としたかな。結構いきなりいろんなことする国なので、見えないだけかもしれませんが。

インドはSSLVという小型ロケットで商用打ち上げを初受託。BlackSky Globalという地球観測衛星を打ち上げます。

欧州は、このところ失敗続きなのですが、2月には大型のアリアン5型ロケットで通信衛星を打ち上げ予定です。

3・4月

スペースXの快進撃が続いていますが、久々に米国はデルタ4ヘビィロケットの打ち上げを行います。デルタシリーズ最大のロケットで偵察衛星の打ち上げですね。

一方、ロシアはソユーズMS-23を国際宇宙ステーションに向け打ち上げます。こちらは有人宇宙船です。3人の宇宙飛行士が向かいます。

4月5日 木星衛星の探査機「JUICE」の打ち上げ(25日までに)

アリアン5型ロケットで、欧州の木星探査機「JUICE」が打ち上げられます。アメリカ以外の国で初めての木星探査機ですなー。太陽から離れた天体の探査には(NASAしかもっていない)プルトニウム電池技術が必要なのですが、欧州は85m2という巨大な太陽電池パネルでなんとかしようという方針です。

JUICEは、8年後の2031年に木星周回軌道に到達予定で、特に大きな衛星のガニメデ、カリスト、エウロパの探査を行います。いずれも、地下に海か湖の存在が考えられています。着陸こそしませんが、リモートセンシングでこれら衛星について詳細なデータを収集し、生命の存在などについてもある程度迫れるのではないでしょうか。楽しみですなー。ちなみに木星の主要衛星はガリレオが17世紀の初頭に発見した4つです。あとイオがありますが。この星は他の衛星に振り回され高温で火山が噴きまくっている星ですので、ちょっと海とかはね、という感じです。JUICEはJupiter Icy Moon Exploer(木星の氷の衛星の探査機)ですのでね。JUICEには日本の研究者も多数参画しています

4月には、米国ボーイングが有人宇宙船「Starliner」の有人テスト飛行も予定されています。ずいぶんおくれていましたがようやくですな。

そうそう 日本のispaceの月着陸機HAKUTO-Rミッション1ランダーは4月ごろに月面着陸予定ですよ。これも楽しみに待ちたいですね。

5・6月

予定が見えにくいのですが……日本の月探査機「SLIM」と、X線天文衛星「XRISM」の打ち上げ、2023年度ということでこの辺ですかねー。

SLIMは意欲的な月着陸機で「横倒しで倒れながら着陸」というユニークなもの。ピンポイントでの着陸を目指す技術実証機です。

XRISMは日本のお家芸であるX線での天体観測をする天文衛星です。専門家ごのみな分光と一般にわかりやすい撮像の両方で高い性能を発揮することが期待されています。

この間、X線天文衛星は失敗がありましたので、ホント期待したいところです。ブラックホールなどの派手な天文現象はX線でよく見えてくるのでございます。楽しみです。

ということで、2023年も楽しんで参りましょー。