カレンダーってのは、紙にあらわしたものでもありますが、日付のルールのことですな。新月が出たぞという意味の「カレンダエ」から、はじまったそうですが、まあともかく、どこでもあります。今回は、そんなカレンダーの事情を、サイエンスをからめて紹介しちゃいます。

どんな家庭でも、どんな事務所にでも、どっかに必ずあるもの、カレンダー。PCにもスマホにも、どこでもかしこでもついてまわる、まあ、ないと困るものねー。無人島に一人で漂流したら、カレンダーなんていらんのかなとか、と思いつつ、ロビンソン・クルーソーも、カレンダーをつくるというエピソードがあるくらいですからねー。そんでロビンソンさん、あとからきた別の漂流者にフライデー(金曜日)という名前をつけてますな。

さて、そんなカレンダー(暦)ですが、めんどくさい取決めがありますねー。1年を365日という中途半端な日数にし、ひと月は30日か31日で、2月だけ28日。しかも4年に1度のうるう年がある。一週間は7日間で、曜日と日付は毎月関係が変わる。おまけに、大安だの仏滅だのがだしぬけにあって、暦の上ではディセンバー(2年後にはだれもわからんな)。

実際、フランス革命(1789年)のときは、えーい、めんどくせー、わかりにくいー、こんなん陰謀だ、カレンダーも革命じゃと、フランス革命カレンダーというのをひねくりだし、実際に13年あまりフランスで使われました。それは…。

  1. 1年は365日、12か月
  2. 3か月ごとに春夏秋冬とし、月の名前も季節にちなんだもの(葡萄月、熱月など)
  3. 1月は30日固定年末に5日の休日を加える
  4. 1週間(旬)は10日間。曜日の名前は1曜日、2曜日、3曜日…10曜日
  5. 1年の初め(1月1日)は秋分の日

いまのカレンダーよりだいぶスッキリ合理的ですね。日付間の引き算とか、曜日の計算ルーチンとか作るのもカンタンそうです。え? そんなんエクセルで 書式AAAとかすりゃわかる? ま、そりゃそうか。

また、時間も変えていまして、1日は10時間、1時間は100分、1分は100秒としています。こちらは思い切ったのですが、たとえば5時というのが昼間だったり、わけがわからなくなって、不評だったそうです。ただ、あわせて決めた1m=100cmというメートル法は世界に普及しました。

結局、フランス革命カレンダーは、1793年にはじまって、1802年に1週間=7日と曜日が復活し、1806年に廃止されています。革命以前に使っていたのはグレゴリオ暦といって、キリスト教会が決めたものだったのです。革命は教会の権威にもアンチだったのでというのもあったみたいですが、まあ、ナポレオンが手打ちをしたんです。

ということで、フランスも現行のグレゴリオ暦を使っています。というか、世界の主要な地域では、日本もふくめてグレゴリオ暦を使っているんですね。そのルーツは、実はシンプルで、科学的に決まっています。いくらキリスト教会が決めようと、自然の摂理にはさからえないし、まあ、神様が作った自然に従おうってなわけですな。

  1. 1年は地球の公転1回を基準とする
  2. 1日は地球の時点1回を基準とする
  3. 1か月は、30または31日とし、交互におく。月の名前は、1の月、2の月…を基本とする
  4. 1年のはじまりは3月とする

1年を基準とするのは、季節がひとめぐりする周期だからですな。ただ、暑さ寒さだけでやるとなかなかわからなくて、2000年以上前は、1年はまあ360日じゃね? なんかキリがいいし。とか、月の満ち欠け12回分355日がいいのかなとかやっていたようです。でも、そうやっていると、5~10日の誤差が積み重なって、10年も運用すると、カレンダーと季節がずれるのですねー。

そこで、サイエンスの登場なんですねー。季節と太陽の高さが関係していることは、だれでも実感としてわかるわけですが、それを測定して法則を見つけ出したのですね。ローマ皇帝ユリウス・カエサル(シーザー)さんが、エジプトのアレキサンドリアの科学者ソシゲネスの意見を入れて、1年は365と4分の1日(4年に1回366日にする)。としたわけです。それまで3月が年初だったのですが、すでにずれちゃった分を解消するために、1月を年初にするということをしたんですなー。それで、1月がカレンダーのスタートになったそうです。それをさらにキリスト教会が改訂したグレゴリオ暦が今のカレンダーです。うるう年の入れ方に100年に1度入れないが、400年に1度は入れるというルールを追加したものです(2000年はうるう年だけど2100年はうるう年にならない)。

1日はどうかというと、これはまあ昼夜ははっきりしているので、あまり間違いようがないですね。ただ、太陽を測定していると、1日の長さは24時間ぴったりにならないのです。地球の自転そのものは非常に正確なんです。しかし、地球は23.4度傾いて回っています。そのため、今日と明日では、太陽の高さが微妙に変わるのですが、空の太陽の道筋がきれいな円にはならず、らせんになるんですね。

また、地球の公転軌道も円ではなく、楕円なので、これが太陽の空での進行速度を速めたり遅らせたりするのですね。

そのため、太陽の1周=地球の自転がわずかに伸び縮みします。1分間以内ですけどね。1日の長さが変化しちゃっているんです。

となると、1日間=24時間=60分間×24=60秒×60×24ですから、1秒の長さが変化! することになっちゃいます。これではウサイン・ボルトも困る!(いや、1秒の長さが変化するのでは、GPSからなにからまともに動きませんので)ということで、いまは1秒を原子時計で決めています。もちろん、1日の長さとマッチするようにしているのですが、それでもずれるので、たまに「うるう秒」を入れて数年分のずれを解消しているのですー。

1か月については、もともとは、月の満ち欠けが基準です。これはかなり変化するのですが、まあ、平均29.5日で29日と30日を交互にするのがいいですね。実際、日本はこれを基準に江戸時代まではカレンダーをつくっていました。いわゆる旧暦です。でも、これだと頻繁に年と月の対応を調整しなくてはいけません。三日月が見えたら3日、満月なら15日と都会人にはわかりやすくていいんです。

ところが、季節にかかわる農業や水産業の人たちには、不便です。そこで、日付とは別に、目安として立春だの啓蟄だのといった二十四節気(にじゅうしせっき)をおいて利用しました。これは、太陽が春分から15度きざみにどれだけ移動したかを基準に決めています。今でも国立天文台が毎年これを発表しています。

日本では、春分の日と秋分の日が休日になります。これらは、太陽の位置で決まっています。この日が数日前後するので、わかりにくいという人もいますが、まあ、彼岸という習慣とセットなのでこの休みをハッピーマンデーにするわけにもいかないってわけですな。前の年の2月1日に政府から発表されることになっております。ただ、いまではかなり精密に将来の予想ができるようになっており、「予想値」が発表されています(http://www.nao.ac.jp/faq/a0301.htmlなど)、おおむねまちがわないのですが、最後は国が決めるので保証できないってなもんですな。

最後に、暦のうえではディッセンバー、DECなので10月をあらわすのに、なぜか12月という件ですが、年初を3月→1月にしたことの名残です。あと、31日の月のならびは、昔の為政者のわがままで、自分の名前が付いた7月と8月を大の月にしたこと。2月が短いのは、もともとの年末で大の月おおすぎてしわ寄せが年末にということですな。

うーん、今回はちょっと小難しくなってしまいましたかねー、罪滅ぼしにクイズを1つ。ハロウィン(10月31日)とクリスマス(12月25日)は同じ日だと言い張るプログラマがいます。それはなぜでしょう? 答えは次の回で。

年末に近づくと一斉に販売されるカレンダー。写真は2014年対応のもの。(出所:新日本カレンダーWebサイト)

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。