Semantic Image Segmentationは一休みして、久しぶりにハードウェアの話です。iPhoneで動きの早いものを撮影すると歪んで映ったという経験はないでしょうか? 今回は、その画像が歪んでしまう原因の電子シャッターについて解説したいと思います。電子シャッターは、グローバルシャッター、ローリングシャッターの2つに大別できます。それぞれの動作原理をみていきましょう。

グローバルシャッターとは?

画像は、図1のように画素の集合体です。横に並んだ画素の各ラインをLine 1、Line 2、…、Line Nとすると、グローバルシャッターの露光の原理は図2の通りとなります。グローバルシャッターとは、すべてのライン(すべての画素)が同一のタイミングで露光を開始することを可能にした電子シャッター方式のことです。

図1 画像の拡大図

CCD撮像素子では、このグローバルシャッターが一般的でした。一部のCMOS撮像素子でもこのグローバルシャッターを採用したものがあります。高速に動く物体を歪み無く撮影したい場合は、グローバルシャッターの撮像素子を選ぶようにしましょう。

図2 グローバルシャッターの動作原理

ローリングシャッターとは?

多くのCMOS撮像素子は、ローリングシャッター方式を採用しています。ローリングシャッターのカメラで高速で回転している飛行機のプロペラを撮影すると動画1のような奇妙は映像が撮影されてしまいます。グローバルシャッターでは、このような現象は見られません。これは、撮像素子の動作原理に起因しています。

動画1 ローリングシャッターのカメラで撮影した動画

ローリングシャッターの動作原理は図3の通りです。トリガーの入ったタイミングで、Line 1から順番に露光を開始していきます。画像の各ラインで撮像タイミングが異なるため、動画1のように歪んだ画像になってしまうわけです。

図3 ローリングシャッターの動作原理

電子シャッター以外のシャッター

前述の電子シャッター以外には、フォーカルプレーンシャッター、レンズシャッターがあります。フォーカルプレーンシャッターは、撮像素子やフィルムなどの手前にあるシャッター幕を開閉させることで露光するメカニカルシャッターです。一眼レフで採用されるシャッター方式で、高速にシャッターをきることが可能です。

レンズシャッターは、レンズの前、後、中間のいずれかにシャッターを組み込む方式です。小型化でき、音が静かというのが特徴ですが、フォーカルプレーンシャッターに比べて高速なシャッタースピードが使えないのがデメリットです。また、レンズにシャッターを内蔵するため、レンズを交換するタイプのカメラには不向きといえます。

ローリングシャッターは3次元計測の精度などに影響する必要があります。カメラを選ぶときはコストだけでなく、用途に合ったシャッター方式を選択するようにしましょう!

著者プロフィール

樋口未来(ひぐち・みらい)
日立製作所 日立研究所に入社後、自動車向けステレオカメラ、監視カメラの研究開発に従事。2011年から1年間、米国カーネギーメロン大学にて客員研究員としてカメラキャリブレーション技術の研究に携わる。

日立製作所を退職後、2016年6月にグローバルウォーカーズ株式会社を設立し、CTOとして画像/映像コンテンツ×テクノロジーをテーマにコンピュータビジョン、機械学習の研究開発に従事している。また、東京大学大学院博士課程に在学し、一人称視点映像(First-person vision, Egocentric vision)の解析に関する研究を行っている。具体的には、頭部に装着したカメラで撮影した一人称視点映像を用いて、人と人のインタラクション時の非言語コミュニケーション(うなずき等)を観測し、機械学習の枠組みでカメラ装着者がどのような人物かを推定する技術の研究に取り組んでいる。

専門:コンピュータビジョン、機械学習