日立製作所は10月28日、2027年3月期(2026年度)第2四半期連結決算を発表した。7~9月期の売上収益は前年同期比15%増の2兆9,044億円、調整後EBITAは518億円増の3,761億円となり、いずれも第2四半期として過去最高を更新。通期業績予想を再び上方修正した。
同日開催された説明会には、執行役専務 CFOの加藤知巳氏と、デジタルエンジニアリング&AIソリューションビジネスユニットCEOのアナンド・ビルジェ氏が登壇した。加藤氏は、電力インフラや国内ITの需要拡大が業績を押し上げたことや、AI活用による生産性向上の取り組みを説明。ビルジェ氏は、同日に設立が発表された海外ITサービス事業を担う新会社「Hitachi Digital」の成長戦略を紹介した。
4セクターすべてで増収増益、エナジーは生産性向上が利益を押し上げ
第2四半期は、エナジー、DSS(デジタルシステム&サービス)、CI(コネクティブインダストリーズ)、モビリティの4セクターすべてで増収増益となった。なお、日立が収益指標に用いる調整後EBITA(Adj. EBITA)は、調整後営業利益に企業結合で認識した無形資産等の償却費を足し戻したもの。
4~9月の上期累計では、売上収益が前年同期比17.3%増の5兆6,140億円、調整後EBITAが24.5%増の6,996億円となった。一方、親会社株主に帰属する中間利益は前年同期比11.9%減の4,166億円となった。前年の空調事業合弁会社の売却益の反動や為替差損益の悪化などが影響した。
成長をけん引したエナジーの上期売上収益は32%増の1兆8,723億円、調整後EBITAは1,021億円増の2,748億円だった。欧州の大型HVDC(高圧直流送電)プロジェクトやデータセンター関連需要、送電機器需要が受注を押し上げ、日立エナジーの受注残高は前年度末比14%増の10.5兆円となった。
DSSは国内のAIトランスフォーメーション(AX)やモダナイゼーション需要が堅調で、上期売上収益は10%増の1兆5,331億円。モビリティは鉄道車両や信号・制御事業などが寄与し、18%増の6,929億円となった。CIも半導体製造・計測・検査装置やビルサービス事業などが伸び、11%増の1兆5,866億円だった。
こうした実績や受注動向、生産性向上の進捗を踏まえ、通期予想は第1四半期に続いて上方修正した。売上収益は前回比3,000億円増の12兆円、調整後EBITAは400億円増の1兆5,600億円、親会社株主に帰属する当期利益は200億円増の9,200億円を見込む。
調整後EBITA予想の引き上げ額400億円のうち、エナジーセクターが330億円を占めるが、同セクターの売上予想は据え置いた。加藤氏は質疑で、7月の修正時に生産能力を踏まえた売上を見込んでおり、今回の利益率改善は主に生産性向上によるものと説明。導入済みERPの活用が進み、AI活用も含めて生産効率が改善したことや、大型案件の管理によって想定より追加コストを抑えられたことを挙げた。
デジタル事業の成長を示すLumadaの上期売上収益は、前年同期比31%増の2兆4,280億円となった。通期予想も5兆2,000億円へ引き上げ、25%増を見込む。このうちAIで社会インフラを革新するソリューション群「HMAX」は、上期売上収益が2,380億円、通期予想は70%増の5,100億円とした。
加藤氏は自身のプレゼンテーションの最後に、上期について、「成長性、収益性、資本効率性の面で着実に改善を進めることができた」と振り返った。一方で、経営計画「Inspire 2027」の実現に向けた課題や外部環境の不透明さも指摘。AI活用やHMAX開発への投資を継続しながら、リスク管理を強化して成長戦略を進める考えを示した。
Hitachi Digitalは「リセット」と成長加速へ、主要200顧客に集中
海外ITサービス事業については、GlobalLogicとHitachi Digital Servicesを統合する新会社「Hitachi Digital」の設立が同日に発表されている。説明会ではビルジェ氏が、統合後の成長をどのように実現するかを語った。
上期の海外ITサービス事業について、日立はGlobalLogicとHitachi Digital ServicesによるLumada事業への貢献を説明した。両社の単独売上と、各セクターに計上されたシナジー売上の合計は、米ドルベースで前年同期比28%増。シナジー売上は46%増の28億6,000万ドルだった一方、両社の単独売上合計は12億3,900万ドルと前年並みだった。ビルジェ氏は、主要顧客への集中や両社の能力の統合を通じて、成長を加速させる考えを示した。
ビルジェ氏が統合のメリットとして説明したのは、開発から運用まで対応できる能力の拡充と、既存顧客への相互販売。GlobalLogicが持つ製品・アプリケーションのエンジニアリング能力と、Hitachi Digital Servicesの企業システムやクラウド運用の能力を組み合わせ、顧客が取引ベンダーを集約する動きに応える考えだ。
事業は、エネルギー/モビリティ/通信/製薬・ヘルスケア/金融/自動車/コネクティブインダストリーズの7分野に集中。フィジカルAI/データ/クラウド/エンタープライズプラットフォームなどのサービスを組み合わせ、主要200顧客との取引を拡大する。質疑では、この200顧客が売上の約8割を占めると説明した。
成長を支えるのが、顧客の現場に入り込み、AIやデジタル技術の実装を支援するFDE(Forward Deployed Engineer)と、現場の知識をAIに活用するHMAXなどの仕組みだ。日立グループが持つ産業分野の知識とデジタル技術を組み合わせ、インフラからデータ、アプリケーション、業務プロセスまで一貫して支援する。
足元では事業の選択と集中も進める。加藤氏は、Hitachi Digital Servicesが製造業やグループとの協業で堅調に伸びていると説明した。一方、決算説明資料では、Hitachi Digitalの売上に影響する要因として、非注力案件からの戦略的撤退を挙げている。
ビルジェ氏は2026年度を、事業をリセットし、成長を加速させるための年と位置付けた。説明資料では、2027年度に主要200顧客との取引拡大やAI・データ・クラウド事業の成長を進め、2030年度には競合上位企業並みの成長性と収益性を目指す道筋を示した。質疑では今後の2桁成長への期待を述べたものの、この時点で来年度の具体的な業績予想を示すことはなかった。
HMAXの成長の内訳とAIの生産性効果、質疑で事業リスクも説明
質疑応答では、HMAXの成長の内訳やAI活用による生産性向上、事業リスクへの対応について質問が寄せられた。なお質疑には、加藤氏・ビルジェ氏に加えて、執行役常務 Deputy CFOの畑山雅史氏、インベスター・リレーションズ本部長の玉井信一郎氏も対応した。
HMAXの伸びが既存サービスの再分類によるものかという質問に対して、会社側は、現場の製品・システムから収集したデータの活用、AIと業務知識の組み合わせ、継続収益型のデジタルサービスという3条件をすべて満たすものに限定していると説明。既存サービスも条件を満たすよう機能を拡充して登録しており、多くは新しい事業として捉えているという。ただし、再分類と純増の金額内訳は示していない。
AI活用はサービス拡大に加え、日立自身の収益性向上にもつなげる。加藤氏によると、SI事業では前年度末までに約10%の生産性向上を実現し、2026年度末に約20%、2027年度には30%の向上を目標としている。利益率にも徐々に効果が出るとの見方を示した。
一方、DSSでは7~9月期に90億円の一過性の追加コストが発生した。加藤氏はこれについて、社会分野の特定のひとつのSI案件によるものと説明し、その影響は今回の計上で収束する見通しとした。通期のDSSの調整後EBITA予想は据え置き、売上拡大や生産性向上で吸収する計画という。
需要面では、サイバーセキュリティへの関心も高まっている。会社側によると、電力/交通/製造/金融などの重要インフラを担う顧客から相談が増加しており、FDEとセキュリティ専門組織が連携して対応する。ただし、受注や売上への影響を定量的に示せる段階ではないとした。
エナジーのデータセンター案件については、延期や資金回収への懸念が問われた。会社側は、進行中の案件で遅れや入金上の問題は把握していないと回答。今期の受注が売上に反映される時期は、平均すると来年度になるとの見方を示した。





