北海道電力は9月18日に社長会見を行い「安定供給と脱炭素の両立に向けた供給力確保の取り組み」について説明した。

北海道では、Rapidus(ラピダス)の次世代半導体工場やソフトバンクの大型データセンターなど、GX(グリーントランスフォーメーション)産業の立地が進んでおり、中長期的な電力需要の増加が見込まれている。

こうした需要増加に対応するため、北海道電力は泊発電所の再稼働や再生可能エネルギーの導入拡大、火力発電所の新設などを進める。同時に、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、アンモニアや水素などへの燃料転換、新たなエネルギーサプライチェーンの構築にも取り組む方針だ。

北海道の電力需要、2035年度には380億kWh程度を想定

北海道電力の想定では、北海道エリアの電力需要は2024年度の276億kWhから、2030年度には340億kWh程度、2035年度には380億kWh程度まで増加する。

一方、同社グループは温室効果ガス排出量について、2030年度に2013年度比46%削減、2035年度には同60%削減する目標を掲げている。

  • 北海道エリアの電力需要の想定と温室効果ガス排出量の削減目標(提供:北海道電力)

    北海道エリアの電力需要の想定と温室効果ガス排出量の削減目標(提供:北海道電力))

泊発電所3号機、2027年のできるだけ早期の再稼働へ

北海道電力は原子力について、燃料供給の安定性や長期的な価格安定性、発電時にCO2を排出しないといった特長があり、電力の安定供給とカーボンニュートラル(CN)の実現を支える重要な電源と位置付けている。

泊発電所3号機は、2025年7月30日に原子炉設置変更許可を取得。現在は設計及び工事計画の認可や保安規定変更認可の審査、使用前事業者検査、安全対策工事などを進めている。 安全対策工事では、新設する防潮堤について2027年8月の完成を予定。同社は安全確保を最優先に、「2027年のできるだけ早期」の再稼働を目指すとしている。再稼働後は、費用低減効果に加え、カイゼンやDXなどによる効率化により、電気料金を値下げする方針だ

再エネを2035年度までに300万kW以上拡大

再エネについては、2035年度までに300万kW以上の拡大(開発規模ベース)を目標に、新規地点の開発や出資参画、水力発電所のリプレースなどを進める。

風力発電では、檜山沖で洋上風力、伊達市、上ノ国町、島牧村、壮瞥町で陸上風力の環境アセスメント手続きを進めている。

洋上風力では、開発に関する検討や事業環境整備に向けた取り組みを強化するため、2026年6月に「洋上風力推進本部」を設置。同年7月には「道南洋上風力プラットフォームズ」を設立し、人材育成事業などを通じて道南地域での洋上風力発電の早期実現を目指す。

水力発電では、奥新冠発電所でこれまで未利用だった放流水を活用し、最大出力を3,800kW増加させた。このほか、経年化した4か所の水力発電所でリプレース工事を進めている

さらに、需給調整機能を持つ純揚水式の京極発電所3号機(20万kW)は、運転開始時期を2035年度から2031年度へ前倒しし、需給調整機能の強化と再エネの導入拡大を図る。

火力発電を脱炭素化、アンモニア・水素へ燃料転換

再エネの導入を進める一方、火力発電では脱炭素化に向け、アンモニアや水素などへの燃料転換を進める。

石炭を燃料とする苫東厚真発電所4号機では、2030年度に燃料の20%(熱量比)、2032年度には40%をアンモニアへ転換する計画。CCUS(CO2の回収・有効活用・貯留)技術も活用し、脱炭素化を進める。

LNGを燃料とする石狩湾新港発電所では、各58万kWの2号機と3号機を建設する。2号機は2030年度、3号機は2033年度の運転開始を予定しており、2号機では2026年8月に発電設備の建設工事を開始した。運転開始時はLNGのみを燃料とする仕様だが、将来的には水素への燃料転換を段階的に進める計画だ。

苫小牧・厚真を起点に水素・アンモニア・CCUSの供給網

北海道電力は、水素、アンモニア、CCUSを組み合わせ、苫小牧・厚真地域を起点とした新たなエネルギーサプライチェーンの構築を進める。

国産グリーン水素では、2030年度までに国内最大級の水電解装置による水素製造プラントを整備し、再エネ由来の水素をパイプラインやローリーで供給するサプライチェーンの構築を目指す。

アンモニアについても、2030年度までにアンモニア基地を整備し、苫東厚真発電所4号機での利用に加え、北海道内や全国各地への供給を目指して共同検討を進めている。

CCUSでは、2030年度までに苫東厚真発電所4号機からのCO2の分離回収設備や輸送設備などを整備し、CO2の分離・回収・有効活用・貯留を行うサプライチェーンの構築を目指す。将来的には、他産業からのCO2受け入れも視野に入れている。

ガス事業へ本格参入、2035年度めどに次期LNG火力も

北海道電力は、これまで取り組んできたガス小売から事業領域を広げ、ガス事業へ本格参入する。

石油資源開発株式会社(JAPEX)が北海道内で運営するガス製造事業、販売事業、導管事業を2026年度中に譲り受ける予定。これにより、製造から販売まで一貫したガス事業のサプライチェーンを構築する。また、グリーン水素とCO2を原料としたe-メタンの活用などを通じ、ガスのカーボンニュートラル化を目指すとしている。

さらに、中長期的な電力需要の増加への対応などの観点から、苫東地点で次期LNG火力発電所とLNG基地の設置を検討している。LNG基地については9月28日、設備の構成や配置、建設工程などを検討する基本設計を開始したと発表した。いずれも運転開始は2035年度をめどとしており、次期LNG火力については、運転開始後10年をめどに水素などの脱炭素燃料へ転換する計画だ。

北海道電力は、これらの施策を通じ、脱炭素化と北海道における電力の安定供給の両立を目指すとしている。