2期8年の総長をつとめて 早稲田大学・田中愛治の大学改革総括

日本およびアジアで一番学びたい大学に

 

 国際的なスタンダードで研究も教育も進める。そして、世界の頭脳が循環するような大学にしていきたい─―。 

 田中愛治氏(現在74歳)が早稲田大学総長に就任したのは2018年のこと。その時に、「2040年までに日本で一番学びたい大学に、そして、2050年にはアジアで一番学びたい大学にしたい」という抱負を述べ、大学改革に着手。その田中氏は総長を2期8年務め、その任は今年9月20日に終える。 

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 後任の総長には、早大理工学術院教授で常務理事を務める本間敬之氏(1987年同大理工学部卒、スタンフォード大客員准教授、早大理工学部教授などを歴任。62歳)が就任する。 

 田中愛治氏は1951年(昭和26年)11月生まれ。1975年に早大政治経済学部を卒業。その後、米オハイオ州立大学大学院に留学し、博士号を取得(政治学)。専門分野は政治学、政治過程論。計量政治学で『世界政治学会』の会長も務めたりした(在任は2014年から2年間)。 

 環境変化の激しい時代を生き抜くには、『しなやかな感性』を磨き、『ダイバーシティ(多様性)を尊重する人材づくり』が必要だとし、『文理融合と総合知の教育が大事』と訴えてきた。そのための都合8年間にわたる大学改革であった。 

 田中氏は、AX(アカデミック・トランスフォーメーション)という言葉を使って改革を推進。これは、DX(デジタルトランスフォーメーション)でのデータ科学を取り入れ、それを全学レベルで実行してきた。 今さら、文系、理系と分けて物事を考える時代ではない。言ってみれば大学の研究・教育に横串しを刺して大学改革を進めようというもの。 

「ええ、文学部でもスポーツ科学部でも、また政経学部や法学部、教育学部でも全ての学部(計13学部)でデータ科学を学べるようにしたんですね」 

 文理融合と総合知の教育を進めるには、データ科学を学ぶことが必要という田中氏の考えである。 

 2018年までは統計学入門だったのを、データ科学入門の教育体系に切り換えた。データ科学を学ぶために、例えば『データサイエンス学部』を新設する案も考えられたが、早大は2017年に『データ科学センター』をつくり、全学部の学生が学べるようにした。データ科学は、AI(人工知能)を用いてビッグデータを解析するもの。時勢を反映してか、統計学入門をデータ科学入門にしたら、全学部で履修者が一気に増えた。 

 この新たな試みは、コロナ禍前の2019年から開始。早稲田の場合、1学年の学生総数は約8900人。理工系の学部は通常の講義でデータ科学を学んでいるので、改めて履修する必要はない。それで履修者の数は2021年に1万人を超え、2025年には累計1万9612人と2万人近くにのぼった。 

「早稲田は、学部で3万9000人。大学院を入れて4万8000人います。その学部生、大学院生の全員がデータ科学の入門を理解するようになると思っています。これがいわゆる本当の文理融合で、総合知の第一歩だと思っています」 

 

海外からの留学生数約8100人は日本一

 

 早稲田は留学生・約8100人を抱えており、これは日本一の数。ちなみに2位は東京大学(5200人台)である。 

 早大は2004年、2代前の白井克彦総長(同大理工学部出身)の時代に国際教養学部を新設(学生数は2500人強)。アジア各国や欧米からも若者が多く入学し、これも留学生が増える要因の1つとなった。 

 国際教養学部の特長は、英語だけで学士号が取れるようにしたこと。この英語だけで学士号が取れるという流れは、他の学部にも伝播。政経学部でも100人、社会科学部でも60人が英語だけで学士号が取れるようになった。大学院の研究科でも修士号や博士号も英語で取れるような授業や研究指導が行われるようになっている。 

 この英語による教育や研究体制は……。

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