この半導体ニュースのまとめ
・VISとNXPの合弁会社VSMCが、同社初となる300mmウェハ工場をシンガポールで開所
・130nmから40nmのプロセス技術に対応し、2027年第1四半期に量産開始へ
・2029年には月産約4万4000枚の生産能力と約1600人の雇用創出を見込む
Vanguard International Semiconductor(VIS)とNXP Semiconductorsが2024年9月に設立した合弁会社VisionPower Semiconductor Manufacturing Company(VSMC)は9月28日、シンガポールのタンピネスに建設した同社初の300mmウェハ工場の開所式を開催した。
工場の建設工事は完了し、現在はリスク生産の段階で、量産は2027年第1四半期に開始する予定。2029年のフル稼働時には300mmウェハで月産約4万4000枚の生産能力を見込む。
起工から22カ月で初回サンプルロットを製造
VSMCは2024年9月に、台湾の特殊用途半導体ファウンドリであるVISとNXPによって設立された。同年12月には工場の起工式を開催し、建設開始から22カ月で開所に至った。
開所式には、シンガポール貿易産業大臣のTan See Leng博士、シンガポール経済開発庁(EDB)長官のPng Cheong Boon氏、JTC Corporation CEOのJacqueline Poh氏らが出席。TSMCをはじめとするパートナー企業や顧客、サプライヤ、業界団体、政府機関の関係者も参加した。
VSMC、VISおよびNXPは、工場設備の立ち上げと初回サンプルロットの製造を計画どおりに進めており、99%を超える歩留まりを確認したとしている。ただし、この歩留まりは初回サンプルロットにおける結果であり、量産時の歩留まりや製品別の生産状況を示すものではない。
今後はリスク生産を通じて製造条件や品質、歩留まりを確認し、顧客による製品認定などを経て、2027年第1四半期の量産開始へ移行する計画である。
130nmから40nmの特殊用途半導体を生産
新工場は130nmから40nmまでのプロセス技術に対応し、ミクスドシグナル、パワー・マネジメント、アナログ、インターポーザー用途の製品を製造する。
対象市場は高性能コンピューティング(HPC)、モバイル、自動車、産業機器、コンシューマなど。最先端プロセスによるロジック半導体ではなく、幅広い産業で長期的な需要が見込まれる特殊用途半導体の供給拠点として活用する。
自動車や産業機器では、センサからの信号を処理するアナログ・ミクスドシグナル半導体や、モーター、電源、バッテリーを制御するパワー・マネジメント半導体が多数使用される。製品寿命が長く、高い信頼性と長期供給が求められるため、安定した製造能力の確保が重要となる。
HPC向けには、複数の半導体チップやメモリを接続するインターポーザー用途にも対応する。AIや高性能コンピューティングの拡大に伴って先端パッケージの需要が高まる中、ロジック半導体の微細化だけでなく、複数の半導体を統合するための製造技術も提供する。
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VSMCの300mmウェハ工場を背景にした開所式の様子。同工場では130nmから40nmまでのプロセス技術を用い、ミクスドシグナル、パワー・マネジメント、アナログ、インターポーザー用途の製品を製造する (出所:VSMC、NXP)
NXPのハイブリッド製造戦略を強化
NXPはVSMCの生産能力を活用し、自社工場と外部ファウンドリを組み合わせるハイブリッド製造戦略を強化する。
半導体メーカーが自社工場だけですべての製品を生産しようとすると、需要変動への対応や設備投資の負担が課題となる。一方、製造を外部ファウンドリへ全面的に委託した場合、供給の管理やコスト、製造技術の確保が難しくなる可能性がある。
NXPは自社の製造拠点、外部ファウンドリ、VISとの合弁工場を組み合わせることで、製品や市場に応じた生産体制を構築する。VSMCをシンガポールに設けることで、生産拠点の地理的な分散、供給管理、コスト競争力を高め、顧客の長期的な需要へ対応する考えである。
VISにとっては、同社初の300mmウェハ工場となる。特殊用途半導体の製造で培ってきた技術を、従来の200mmウェハから300mmウェハへ広げ、ウェハ1枚から取得できるチップ数の増加や製造効率の向上につなげることを狙う。
AIとデジタル管理を活用したスマート工場
新工場は、AIとデジタル管理技術を融合したフル・オートメーションのスマート製造モデルを採用する。製造装置や搬送設備、品質管理システムなどから得られるデータを活用し、工場の稼働状況や製造工程を継続的に把握。設備の運用効率や製品品質を高め、顧客へのサービス品質向上にもつなげるとしている。
半導体工場では多数の工程と製造装置を使用するため、工程間の搬送や製造条件、設備状態の管理が生産性と歩留まりを左右する。自動化とデータ活用によって製造条件の変化や異常の兆候を早期に把握できれば、安定した量産と設備停止時間の短縮につなげられる。
同工場では、2029年のフル稼働に向けて生産能力を段階的に引き上げる。フル稼働時には約1600人の雇用創出を見込んでおり、シンガポールの半導体産業における製造および技術人材の拡充にもつながる見通しである。
LEEDとGreen Markに準拠
VSMCの新工場は、建築物の環境性能を評価する「LEED」およびシンガポールの「Green Mark」の基準に準拠して設計・建設された。
再生可能エネルギー・ソリューションを取り入れるほか、炭素排出量の削減、エネルギー効率の向上、水資源の再利用に取り組む。大量の電力と水を使用する半導体製造において、製造能力の拡大と環境負荷の低減を両立する工場運営を目指す。
人材育成では、シンガポールの主要大学と覚書を締結。インターンシップや専門研修プログラムを通じて、半導体分野の製造や技術開発を担う人材の育成を進める。
VSMCは、約1600人の直接雇用に加え、装置、材料、工場設備、保守、物流などの関連企業との取引を通じ、シンガポールの半導体エコシステムを拡大する考えである。
300mmウェハを用いる特殊用途半導体の量産基盤をシンガポールに整備することで、VISとNXPは自社の製造能力と供給網のレジリエンスを強化する。VSMCは2027年第1四半期の量産開始と、2029年の月産約4万4000枚体制の確立に向け、リスク生産と顧客認定を進めていくとしている。
