北海道電力(ほくでん)は、4月28日に「2026年度ほくでんグループ経営計画の概要」を発表した。

それによると、2026年度、ほくでんグループでは、2025年3月に策定した「ほくでんグループ経営ビジョン2035」で掲げた「北海道の発展に向けたGX実現への挑戦」と「新たな価値創造に向けた挑戦」、これらを下支えする「持続的な成長に向けた経営基盤の強化」の3つの経営テーマに沿った取り組みを進めることで、ほくでんグループの事業成長と北海道の発展の両立を目指していくという。

北海道の電力需要増加に向け、安定供給が最重要課題に

今回の経営計画で最も重視されているテーマの1つが、電力の安定供給だ。北海道ではこれまで人口減少や省エネの進展によって電力需要が減少傾向にあったが、ラピダスを中心とした半導体産業の集積、データセンターの進出などを背景に、電力需要は増加局面へ入ろうとしている。

  • 中長期的な電力需要増加を見据えた取り組み(出典:北海道電力)

    中長期的な電力需要増加を見据えた取り組み(出典:北海道電力)

そのため、泊発電所の早期再稼働や再エネ電源の導入拡大、現在建設中の石狩湾新港発電所2号機および3号機の運転開始に向けて取り組みを進めていくという。

2026年度経営計画の重要テーマの一つが、泊発電所3号機の再稼働だ。泊発電所3号機は、2025年7月30日に原子炉設置変更許可を取得。2027年のできるだけ早期の再稼働に向け、設計および工事の計画の認可や保安規定変更認可の審査、使用前事業者検査、防潮堤等の安全対策工事に取り組んでいく。

再稼働後には、再稼働に伴う費用の低減効果を反映した上で、カイゼンやDX推進などの経営効率化のさらなる深掘りによる費用の削減効果を最大限織り込み、電気料金の値下げを実施する予定だという。

原子力発電所の活用は安全性確保が大前提である。泊発電所では、さらなる安全性向上の取り組みとして、再稼働に向けた安全対策にとどまることなく、重大事故リスクの一層の低減に取り組んでいる。

安全最優先の価値観の共有として、経営トップ自らが発電所へ赴き、安全性向上に向けた思いを直接伝えるほか、意見交換を行い、「安全最優先」の価値観を現場に浸透させている。

また技術力の維持・向上の取り組みとして、シミュレータ訓練やベテランからの技術継承、再稼働に向けた設備点検や安全対策工事の実務経験等を通じて、所員の技術力の維持・向上に努めている。

さらにコミュニケーション活動の推進として、さまざまな機会を捉え、泊発電所の安全性向上の取り組みなどについて情報発信している。

  • 泊発電所再稼働に向けた取り組み(出典:北海道電力)

    泊発電所再稼働に向けた取り組み(出典:北海道電力)

  • 再エネ電源の導入拡大に向けた取り組み(出典:北海道電力)

    再エネ電源の導入拡大に向けた取り組み(出典:北海道電力)

さらに、北海道電力ネットワークにおいては、新たな連系線の整備・増強として、現在の新北海道本州間連系設備と同一ルートにおいて、2028年3月の運用開始を目指し、30万kWの連系線増強工事を進めている。運用開始後には、さらなる再エネの導入拡大、レジリエンス強化、広域的な電力取引の活性化が見込まれるという。

レジリエンスの強化では、暴風、地震・津波、火山噴火などの状況を想定した訓練を実施することで、発災時の初動対応、被害状況の把握、社内部門間や社外関係機関との連携、迅速な情報発信などを確認・検証し、激甚化する災害への対応力向上を図る。

また、自治体、自衛隊、企業などと災害時に備えた協定を締結しており、人員・資機材の輸送や道路啓開など、停電の早期復旧に向けた体制を整備している。

そのほか、サイバー攻撃に備え、情報通信担当役員を「情報セキュリティ統括管理責任者」とした体制のもと、サイバー攻撃の早期検知と迅速な対応に向けて、24時間365日のセキュリティ監視や関連情報の収集などを行っている。

  • レジリエンスの強化(出典:北海道電力)

    レジリエンスの強化(出典:北海道電力)

脱炭素化への取り組み

安定供給と並ぶ大きなテーマが脱炭素化だ。北海道は全国でも有数の再生可能エネルギーのポテンシャルが高い地域として知られている。

再エネ電源については、「2035年度までに300万kW以上の増(開発規模ベース)」という目標を掲げており、目標の達成に向けて、新規地点の開発や出資参画、経年化水力発電所の更新工事(リプレース)などを順次進めていく。

また、再エネに関する研究開発も進め、三菱HCキャピタルおよびエネコートテクノロジーズと共同で、低温環境下におけるペロブスカイト太陽電池の発電特性などに関する実証試験を実施していくという。

一方で、再エネは天候によって出力が大きく変動するため、安定供給を果たしつつ大量導入を実現するには、火力発電の持つ調整力の確保などが不可欠となる。

ただ、火力発電には温室効果ガスを多く排出するという課題もあるため、将来的な火力発電の脱炭素化を目指し、アンモニアや水素などの脱炭素燃料への転換などの取り組みを進める。

例えば、石炭を燃料とする苫東厚真発電所4号機では、アンモニアへの燃料転換やCCUS(CO2の回収・有効活用・貯留)技術の活用などにより、脱炭素化を目指していく。

  • 再エネ電源の導入拡大に向けた取り組み(出典:北海道電力)

    再エネ電源の導入拡大に向けた取り組み(出典:北海道電力)

  • 火力発電の脱炭素化に向けた取り組み(出典:北海道電力)

    火力発電の脱炭素化に向けた取り組み(出典:北海道電力)

同発電所における燃料転換については、2030年度に燃料の20% (熱量比)をアンモニアに転換し、その後、段階的に拡大していく計画だ。

さらに、2030年度までに、国内最大級の水電解装置による水素製造プラントを整備し、再エネ由来の水素をパイプラインやローリーで供給するサプライチェーンの構築を目指し、共同検討を進めている。

アンモニアサプライチェーン構築に向けた検討では、2030年度までに、アンモニア基地(拠点)を整備し、北海道内や全国各地へのアンモニア供給を行うサプライチェーンの構築を目指し共同検討を進めていく。

CCUSの事業化に向けた検討では、2030年度までに、苫東厚真発電所4号機からのCO2の分離回収設備や輸送設備などを整備し、CO2の分離・回収・有効活用・貯留を行うサプライチェーンの構築を目指している。

  • 新たなエネルギーサプライチェーン構築に向けた取り組み(出典:北海道電力)

    新たなエネルギーサプライチェーン構築に向けた取り組み(出典:北海道電力)

非エネルギー領域へ拡大、「事業共創」を本格化

ほくでんグループでは、北海道の持続的な発展に貢献するため、北海道が有する強み・ポテンシャルや地域社会が抱える課題を把握するとともに、そこから事業機会を見出し、農林水産業、観光、福祉など、地域活性化や社会課題の解決に資するさまざまな分野において、共創の取り組みにより新たな価値を創出していくという。

具体的には、農業分野における課題解決に向けた植物工場事業を展開する。プランツラボラトリーと連携してニセコエリアで展開する省エネ型小型植物工場では、葉物野菜の通年生産供給を行い、省エネやフードマイレージの削減に取り組んでいる。

また、寅福と共同で、むかわ町において検討中の太陽光利用型大規模植物工場では、気候変動や担い手不足に対応し、高い生産性を持つサステナブルな農業の形を目指す。

さらに、ごみ処理問題のサステナブルな解決に向けた取り組みも実施し、JOYCLEと連携し、「運ばず、燃やさず、資源化する」小型廃棄物処理プラントによる分散型ごみ処理サイクルの構築を目指している。

  • 事業共創の取り組み(出典:北海道電力)

    事業共創の取り組み(出典:北海道電力)

そのほか、北海道電力ネットワークは、今後の人口減少・高齢化に伴う担い手不足などの社会課題を踏まえ、電力スマートメーターの通信ネットワークを活用し、業務効率化に資する「IoT通信サービス」を提供。水道・ガス事業者向けには、メーターの指示値などの情報を提供する 。

また、上川大雪酒造と共同で京極発電所内にあるトンネルを活用し、付加価値の高い、熟成酒を造る実証事業を行っているほか、地元酒造と連携して日本酒・ジン・スパークリングワインの熟成も開始した。

成長戦略を支えるため、人的投資も強化

こうした成長戦略を支えるため、人的投資も強化する。ほくでんグループの持続的な成長を支える原動力は「人」であるとの認識のもと、従業員一人ひとりが働きがいを感じ、一層成長し活躍できるよう、「ほくでんグループ人材戦略」に基づき、人材育成や環境整備に取り組んでいる。

そして、ほくでんグループ人材戦略に基づき、人材育成と環境整備の取り組みを進め、従業員の成長・活躍を後押しし、『今ある価値を高めながら新たな価値を生み出していく企業風土』を創造することで、企業価値を向上させていくという。

また、事業変革や持続的な成長には、多様な視点や価値観が重要であるとの認識のもと、性別などにとらわれず多様な人材が、能力を十分に発揮するための取り組みを進め、女性の活躍推進に向けては、女性管理職・管理職候補者のキャリア形成意識の醸成を目的とした社内セミナーや他社・他業種との懇談会を実施していくという。

なお、北海道電力と北海道電力ネットワークは、こうした新たな挑戦を進めていくにあたり、2027年度の採用計画数として、昨年度実績226人を上回る、新卒213人、経験者71人の計284人程度の採用を計画している。

  • 人的資本経営の推進(出典:北海道電力)

    人的資本経営の推進(出典:北海道電力)