製品の写真から税番候補を割り出すAI、有人運転と自律走行、遠隔操作を切り替えられるフォークリフト、そしてSCMの意思決定を支援するAIエージェント。
9月8日~11日に東京ビッグサイトで開催された「第17回 国際物流総合展2026」で、NECグループはAIとデータを活用した物流の将来像を披露した。人手不足や属人化が課題となる物流の現場を、AIはどう変えようとしているのか。会場で担当者に話を聞いた。
NECグループは「つながる革新で、物流レジリエンスを進化させる。~Beyond with NEC Logistics Platform~」をテーマに6つの展示を行った。その中でもまず目を引いたのが、生成AIを使って通関業務を支援する展示だ。
画像から税番候補を判定、通関の「ベテランの頭の中」をデータベース化
まず紹介するのは、生成AIを活用して税番判定を支援する「AI税番判定サポート」だ。NECでは、知識や経験が求められる税番判定をAIで支援することで、人手不足や業務の属人化といった課題の解決を目指している。
同社は、貨物の品名や用途などの情報を入力することで、生成AIが解釈・分析し、税番候補とその根拠情報を提示するサービス「AI税番判定サポート」を提供している。2026年8月には新機能を追加し、従来のテキスト入力に加えて、画像からの判定にも対応した。
対象となる画像は製品写真だけではない。写真入りの製品図や図面、安全データシート(SDS)、スマートフォンで撮影した写真などをアップロードでき、テキストと画像の併用に加え、画像だけでの判定も可能。
例えば、製品の詳細が分からない段階でも、営業担当者が顧客から受け取った資料を入力し、AIによって税番候補の「あたり」をつけるといった使い方も可能になる。
AIが提示した候補はさらに深掘りでき、候補が適切ではないと判断した場合には、その根拠や追加で必要な情報も示す。原産国を入力すれば、それに応じた税率の提示にも対応するという。
もう一つの新機能が、判定結果を企業内で共有する「データベース機能」だ。通関経験を持つ担当者が確定した情報をデータベースに登録すると、同じ企業のほかの利用者も閲覧できるようになる。これにより、専門知識を持たない営業担当者でも、過去に取り扱った商品であれば蓄積された実績を参照できる。
NECの担当者は、この新機能について「ベテラン担当者が持つ知識をデータベース上で共有することで、属人化の解消につながるほか、顧客への回答を迅速化するとともに、通関担当者と営業担当者のやり取りにかかる負荷を減らすことが可能」と説明した。
既存のExcelなどに蓄積されたデータの一括登録にも対応しており、長年蓄積してきた情報も活用できるという。
「頭脳」と「手足」を自動化、NECが描く次世代倉庫
続いて紹介するのは、AIと自律走行するフォークリフトなどを組み合わせ、倉庫運営の自動化を目指す取り組みだ。
NECが描くのは、「AI駆動オペレーション」をベースとした倉庫運営である。倉庫では、フォークリフトを操作する熟練作業者や、どの荷物をどこへ、どの順番で配置するかを判断する担当者など、人の経験に依存する場面が残っている。
NECは、こうした判断をAIが支援し、倉庫内の各種システムや設備を状況に応じて動かすことを将来的なゴールとしている。
その一つとして開発しているのが、「パレット入出荷自動化ソリューション」だ。荷物を「いつ、どこへ、どの順番で置くか」をシステムが計画し、自動走行するフォークリフトなどと組み合わせることで、計画を担う「頭脳」と、実際に荷物を運ぶ「手足」の双方を自動化する構想だ。
さらに、既存のフォークリフトにカメラやセンサーなどのアタッチメントを後付けし、「有人運転」「自律走行」「遠隔操作」を切り替えて利用できる自律遠隔フォークリフトも開発している。
例えば、繁忙時には人が乗って操作し、夜間には自律走行へ切り替えるほか、離れた拠点から遠隔操作するといった利用を想定しているという。
こうした倉庫運営の基盤となるのが、既存の倉庫管理システム「EXPLANNER/Lg(WMS)」だ。倉庫内の荷物の入出庫や所在などを管理するWMS(Warehouse Management System)で、複数の荷主や拠点にまたがるデータを一つのデータベースでリアルタイムに扱える。
将来的には、設備から得られるデータだけでなく、熟練者が持つ暗黙知もデータ化・知識化し、AIによる判断へ活用することで、より柔軟な倉庫運営につなげる考えだ。
「オーケストレーターAI」が複数のAIに仕事を振り分け、SCMを支援
最後に紹介するのが、2026年9月に販売を開始した「NEC SCM AIエージェント」だ。需要予測、調達交渉、生産計画や在庫計画、物流計画の最適化、需要変動の検知など、SCMを構成する複数の業務をAIエージェントによって横断的に支援する。
SCMの現場では、膨大なSKUの集計や計画策定を人手やExcelに依存しているほか、急激な需給変動や供給遅延への対応が担当者の経験と勘に依存するケースもある。こうした課題に対してNECが採用したのが、複数のAIエージェントを「オーケストレーターAI」が束ねる構成だ。
例えば、需要変動を検知するAIが急激な変化を発見すると、そのリスクをオーケストレーターAIへ報告する。オーケストレーターAIは、需要予測や生産計画、在庫計画など、対応に必要なAIエージェントへタスクを振り分け、それぞれのAIが分析や計算を行う。人間による判断が必要なポイントだけを担当者へ提示する仕組みだ。
AIにすべての判断を委ねるのではなく、データ収集や異常の検知、分析、計画案の作成などをAIが担い、人間は意思決定に集中する業務スタイルを目指す。
「NEC SCM AIエージェント」の価格は年間1800万円(税別)からで、データ量や機能に応じて変動し、別途初期費用が必要となる。NECは今後5年間で100社への導入を目標としている。
今回紹介した通関、倉庫運営、SCMの取り組みに共通するのは、現場や熟練者に蓄積された知識をデータ化し、AIによる業務支援や自動化につなげようとしている点だ。物流現場の省人化にとどまらず、人が担ってきた判断や意思決定までAIでどう支援するか。NECの展示からは、物流におけるAI活用が次の段階へ進みつつあることがうかがえた。




