この半導体ニュースのまとめ
・INFACがVicorの電源モジュールを内蔵した800V EVバッテリーパックを開発
・バッテリーパック内で800Vから48Vへ変換し、48Vゾーン配電を実現
・高電圧ケーブルや専用冷却系を削減し、車両の軽量化と航続距離向上に貢献
Vicorは9月10日(米国時間)、韓国の自動車部品メーカーINFACが、同社の高電力密度DC-DCコンバータを組み込んだ電気自動車(EV)向け800Vバッテリーパックを開発したことを発表した。
開発されたバッテリーパックは、Vicorの高電力密度DC-DCコンバータ「BCM6135」とレギュレータ「PRM3735」を採用。バッテリーパック内で高電圧の800Vを48Vへ変換・安定化し、車両のパワートレイン補機やボディ、シャシーなどへ48Vで電力を供給するゾーンアーキテクチャを実現する。
DC-DCコンバータをバッテリーパック内へ移設
従来のEVでは、高電圧DC-DCコンバータを400Vまたは800Vのバッテリーパック外部へ配置するのが一般的だった。この場合、DC-DCコンバータ用の筐体やブラケット、高電圧ケーブル、コネクタ、冷却系などを個別に用意する必要がある。
EVの駆動モーターやインバータは数百kWの電力を必要とする一方、そのほかのパワートレイン補機やボディ、シャシーの電子機器が必要とする電力は3.5~12kW程度で、48Vの安全特別低電圧(SELV)による配電で対応できる。
INFACは、高電圧の電源とDC-DC変換システムを離れた場所へ配置する従来構成では、配電・管理機能や冷却システムが重複し、車両のスペース、重量、コストが増える点に着目。DC-DCコンバータをバッテリーパック内へ組み込み、電力源に近い位置で800Vから48Vへ変換する構成を採用。高電圧ケーブルを短くして、車両全体には48Vで電力を供給する設計とした。
バッテリーの液冷システムを電源モジュールにも活用
DC-DCコンバータをバッテリーパック内へ配置することで、バッテリーセルの温度管理に用いる液冷システムを、電源モジュールの冷却に共用した。
従来のバッテリーパックの外部にDC-DCコンバータを配置する方法ではコンバータ用の冷却回路が別に必要だったが、今回開発されたINFACの構成では専用の冷却ループや熱インタフェースを削減できる。筐体やブラケット、冷却部品も減らせるため、部品コストと重量の低減につながる。
高電圧ケーブルの本数や長さ、太さも抑えられ、ワイヤーハーネスの取り回しや車両レイアウトを簡素化できる。接続箇所や冷却経路を減らすことで、電気的故障や液漏れが発生する可能性のある箇所も減らせるという。
また、車両外部とのインタフェース削減によって製造工程を短縮し、品質の安定化も図れるとしている。
容積793cm3、重量約1.5kgに小型化
バッテリーパック内への搭載には、電気的絶縁や安全性を確保しながら、バッテリーセルの搭載スペースを圧迫しない小型化が求められる。
INFACが開発したDC-DC変換システムの外形寸法は幅215mm、奥行き45mm、高さ82mmで、容積は793cm3、重量は約1.5kgとすることで、そうしたニーズへの対応を実現したとする。
BCM6135が高電圧から48Vへの絶縁変換を担い、PRM3735が出力電圧を安定化する。高電力密度のモジュールを組み合わせることで、限られた容積内に大電力かつ絶縁型のDC-DC変換機能を収めた。
バッテリーセルの搭載スペースを維持しながら電力変換機能を内蔵できるため、バッテリー容量や航続距離を犠牲にせず、複数のEVプラットフォームへ48Vゾーンアーキテクチャを展開できるとしている。
バッテリーパックを車両の電力ハブへ
ゾーンアーキテクチャは、車両を複数の物理的な区域に分け、それぞれの区域に配置した制御装置へ電力と通信を集約する設計手法である。車載機器の増加に伴って複雑化するワイヤーハーネスを削減し、車両の軽量化や組み立ての簡素化につながることが期待されている。
INFACの設計は、バッテリーパックを単なるエネルギーの供給源として扱うのではなく、電圧変換と配電を担う中核的な電力ハブとして活用するものとなる。
駆動系には800Vの高電圧を供給しながら、それ以外の車載サブシステムにはバッテリーパック内で生成した48Vを供給する。高電圧を車両各部へ引き回す範囲を減らし、安全性や設計自由度を高める狙いがある。
VicorとINFACは、高効率かつ小型の電力変換システムをバッテリーパックへ統合することで、48Vゾーン配電の実用化を支援し、次世代EVにおける軽量化、電力効率の向上、航続距離の延長につなげていくとしている。