この半導体ニュースのまとめ

・ダイフクが半導体工場向け天井搬送システムのAI制御とメンテナンス自動化を推進
・後工程向けパネルFOUP搬送AMRを開発し、既存工場やパイロットラインの自動化に対応
・フィジカルAIで物流の完全無人化を進め、2030年ごろにヒューマノイドロボットの実証へ

ダイフクは9月8日、同日から11日まで東京ビッグサイトで開催されている「国際物流総合展2026」に併せる形で記者説明会を開催し、半導体工場や物流センター、自動車工場、空港などにおける搬送技術やロボットの開発状況のほか、フィジカルAIを活用した次世代の自動化の方向性に関する説明を行った。

同社のブースは「Robotics in Motion ~動き出すロボティクスの未来~」を展示テーマに掲げ、新開発の4wayパレットシャトル「シャトルラックLX」やハンガー式ケース自動倉庫「ファインシャトル」、搬送・仕分けロボットなどを展示。ブースに設置された巨大スクリーンにはCG映像で2030年までの実現を目指す完全無人化された物流センターの姿が紹介されている。

  • 国際物流総合展2026におけるダイフクブース
  • 国際物流総合展2026におけるダイフクブース
  • 国際物流総合展2026におけるダイフクブースの様子。展示テーマ「Robotics in Motion ~動き出すロボティクスの未来~」を掲げ、2030年までの実現を目指す完全無人化への取り組みを紹介している

ダイフクは、一般製造業・流通業向けのイントラロジスティクス、半導体生産ライン向けのクリーンルーム、自動車生産ライン向けのオートモーティブ、空港向けのエアポートを主要4事業として展開する。対象となる搬送物や動作環境は異なるものの、「物を動かす」マテリアルハンドリング技術を共通基盤として、制御、ロボット、センシング、ソフトウェアを組み合わせている点を強みとする。

  • ダイフクの主要事業

    ダイフクの主要事業。一般製造業・流通業向けのイントラロジスティクス、半導体生産ライン向けのクリーンルーム、自動車生産ライン向けのオートモーティブ、空港向けのエアポートの4分野でマテリアルハンドリング技術を展開する

半導体工場の搬送車メンテナンスをロボットで自動化

半導体工場向けでは、クリーンルーム内の天井搬送システムに用いるビークルのタイヤ交換ロボットを開発している。

半導体工場では、製造工程間でFOUPなどを運ぶ多数のビークルが天井搬送システム上を走行している。通常は無人で稼働するが、ビークルの車輪などは数年に一度の交換が必要となる。

半導体工場の大規模化に伴って投入されるビークルの台数も増えており、人手で交換作業を続ける場合、工数とメンテナンス時間が増大する。特に工場を止めずに稼働率を維持するには、保守作業そのものの省人化と迅速化も課題となる。

開発中のロボットは、画像認識によって交換対象となる車輪を判別し、車輪の把持、ボルトの取り外し、車輪の交換までを自動で行う。搬送設備の運転だけでなく、搬送設備を維持する保守工程にもロボットを適用することで、半導体工場の安定稼働を支える考えだ。

AIによる天井搬送車の運行制御を2027年ごろから実用化へ

ダイフクは、半導体工場向け天井搬送システムの運行制御にすでにAIを活用しており、AIデバイスやAIモデルを用いた物体認識によって、さらに高度な運行制御を実現する技術を開発している。

従来のビークルは、あらかじめ設定されたマップ情報を基に現在位置や走行経路を把握する。開発中の技術では、走行中に認識した柱、壁、製造装置などの物体情報を位置情報へ変換し、搬送システム内での自己位置認識に利用する。

建物や製造装置の特徴から位置を判断できるようになれば、工場のレイアウト変更や製造装置の入れ替えが生じた際にも、マップの再設定や走行プログラムの修正に要する負担を軽減できる可能性がある。

ビークルが合流する場面では、周辺を走るほかのビークルとの距離や搬送の優先度を認識し、どちらを先に通過させるかをAIが判断する。優先度の高いビークルを通過させ、もう一方を合流手前で停止させるなど、搬送システム全体の流動を考慮して運行を最適化する。

  • 半導体工場向け天井搬送システムにおけるロボットとAIの活用

    半導体工場向け天井搬送システムにおけるロボットとAIの活用。画像認識によってビークルの車輪交換を自動化するほか、AIによる物体認識を走行位置や合流時の優先度判断へ活用する

半導体製造では、搬送時間や製造装置前での待ち時間がウェハの生産性に影響する。個々のビークルを最短経路で動かすだけでなく、製造装置の稼働状況や搬送物の優先度を踏まえてシステム全体を制御することが重要となる。

同社は、AIを活用したクリーンルーム向け運行制御について、2027年から2028年ごろにかけて成果を実用化していく考えを示している。

半導体後工程向けにパネルFOUP搬送AMRを開発

半導体後工程向けには、大型化する搬送物に対応した「パネルFOUP搬送AMR」を開発している。

先端パッケージングでは、ウェハだけでなく大型のパネル基板を用いるパネルレベルパッケージングの技術開発が進められている。搬送物が大型化すると、建屋の天井高や設備の配置によっては、天井搬送システムの導入が難しくなる場合がある。

特に既存工場を先端パッケージング工場へ改修する場合、当初から天井搬送を前提とした建屋構造になっているとは限らない。天井搬送システムを導入するために建屋の補強や改造を行えば、コストと工期が増加する。

また、パイロット生産ラインでは、製造プロセスや装置配置が確定しておらず、装置間の搬送経路が頻繁に変わる可能性もある。床面を自律走行するAMRであれば、固定された搬送レールを設置せず、レイアウト変更に対応しやすい。

パネルFOUP搬送AMRはLiDAR SLAM誘導式を採用し、斜行、横行、スピン、ターンに対応する。ガイドレスで停止精度±10mmを実現し、可搬重量は100kg。最小幅2mの通路で2台が対面走行でき、ワイヤレス充電にも対応する。

  • 半導体後工程向けに開発中のパネルFOUP搬送AMR

    半導体後工程向けに開発中のパネルFOUP搬送AMR。LiDAR SLAMによるガイドレス走行を採用し、斜行、横行、スピン、ターンに対応する。可搬重量は100kgで、停止精度は±10mm、最小幅2mの通路で対面走行が可能 (資料提供:ダイフク)

クリーンルームで使用するため、搬送物への振動や発塵にも配慮する。床面にグレーチングが設置された環境でも搬送物へ振動が伝わりにくくするなど、同社が無人搬送車の開発で蓄積してきた技術を活用するという。

天井搬送システムと比べてAMRの搬送能力は低くなるものの、既存建屋やレイアウトが流動的な生産ラインなど、天井搬送の導入が適さない領域を補完するシステムとして展開する。

ロボット単体ではなく搬送システム全体を最適化

ダイフクが目指すフィジカルAIは、個々のロボットへAIを搭載するだけではなく、ロボット、搬送設備、倉庫管理システムなどを連携させ、システム全体で最適な動きを実現するものとなる。

物流センターでは、入荷、搬送、保管、ピッキング、梱包、仕分け、出荷といった多くの工程がある。自動倉庫やコンベヤ、AMR、仕分けロボットなどを個別に高速化しても、前後工程の能力が合わなければ、搬送物の滞留や設備の待ち時間が発生する。

同社はWMS(倉庫管理システム)やWES(倉庫運用管理システム)を含む制御・情報システムも内製し、出荷の引き当てや搬送経路の選択、設備トラブル発生時の動作変更などへAIを活用することを検討している。

例えば、搬送台車の混雑が発生した場合に迂回経路を選択する、出荷順序に応じて自動倉庫から取り出す商品を変更する、停止した設備を回避して別のロボットへ作業を割り当てるといった制御が考えられる。

半導体工場における天井搬送車の運行制御も同じ考え方に基づく。個々のビークルを制御するだけでなく、製造装置の稼働状況や搬送優先度、ほかのビークルの動きを認識し、工場全体の生産性を高める必要がある。

同社は、物流センターや工場のレイアウト設計、設備の製造・据え付け、ソフトウェア、アフターサービスまで一貫して手掛けている。設備単体ではなく、どの工程にどの種類のロボットを導入すべきかを判断し、システムとして統合できる点をフィジカルAI時代の競争力につなげる考えだ。

不定形物のピッキングが完全無人化の課題

物流センターの自動化は進んでいるものの、すべての作業を無人化できているわけではない。特に課題となるのが、形状や材質、重量が異なる商品を扱うピースピッキングだという。

  • 物流センターの完全無人化に向けたダイフクの構想

    物流センターの完全無人化に向けたダイフクの構想。荷受け、搬送、保管、ピッキング、梱包、仕分け、出荷の自動化を進め、今後は不定形物のピッキングやトラックへの積み込み、ラストワンマイルの自動化を目指す

箱のように形状が一定の搬送物であれば、吸着式のロボットハンドなどを用いて持ち上げることができる。一方、袋や布、細長い物、柔らかい物などは、同じ場所を把持しても変形し、滑ったり、持ち上げられなかったりする可能性がある。

人間は物を見て触ることで、硬さ、柔らかさ、重さ、持ちやすい位置を無意識に判断し、握る力や持ち上げ方を変えている。この動作を自動化するには、カメラによる画像認識だけでなく、力覚や触覚に相当するセンサ情報を組み合わせ、対象物の性質を瞬時に判断する必要がある。

ダイフクは、XYプロッターのように水平方向へ高速移動するピッキングロボットへフィジカルAIを組み合わせる開発を進めている。多関節ロボットだけに限定せず、処理速度、コスト、信頼性を踏まえ、作業に適したロボット機構を選ぶ考えだ。

同社によると、箱など扱いやすい物については実証が進んでいるものの、ビニール袋などの柔らかい物や不定形物には引き続き課題があるという。

すべてをヒューマノイドに置き換えるわけではない

ダイフクはヒューマノイドに近いロボットの開発も進める一方、物流センターの作業をすべてヒューマノイドロボットへ置き換えることは想定していない。

多関節構造を持つヒューマノイドは、人間向けに作られた環境や設備をそのまま利用できる可能性がある。その反面、多数のモーターや関節を搭載するため、消費電力、可搬重量、処理速度、耐久性、保守コストが課題となる。

またヒューマノイドが持ち上げられる重量は限られ、重量物の搬送や高速な繰り返し作業では、専用の産業用ロボットや搬送機構の方が適する場合がある。さらに、関節やモーターが増えるほど故障要因も増えるため、24時間稼働する物流センターでの信頼性を確保する必要がある。

ダイフクは、物流センター全体の工程とレイアウトを把握したうえで、人型である必要がある作業と、専用ロボットの方が効率的な作業を見極めるとしている。

人間と同様の柔軟な動作が必要な部分にはヒューマノイドロボットを適用し、高速性や可搬重量が重視される工程では、XY型ピッキングロボット、フォーク式搬送装置、AMR、自動倉庫などを活用する。フィジカルAIを共通の認識・判断基盤としながら、作業に応じてロボットの形態を使い分ける構想となる。

2030年ごろにヒューマノイドロボットの実証へ

ダイフクは、ヒューマノイドに近いロボットを用いたボルト締結などについて、2030年ごろから実証を始めたいとしている。

自動車の組立工程では、ボルトを穴へ位置合わせし、最初は低速で回転させて正しく挿入されたことを確認した後、段階的にトルクを加えて締結する作業がある。人間は手先の感覚で位置ずれや抵抗の変化を判断するが、ロボットで再現するには画像認識、力覚センサ、動作制御を統合する必要がある。

こうした技術は自動車工場だけでなく、物流センターにおける不定形物の把持や、半導体工場における保守作業などへの横展開も可能とみられる。

実証では、作業に必要な機能や処理能力に加え、長期間の連続運転に耐えられるかを確認する。多数のモーターを搭載する構造を見直し、実際の運用に必要な自由度へ絞ることで、消費電力と故障リスクを抑えることも検討する。

物流センターで利用する場合は、少なくとも年1回程度のメンテナンスで運用を継続できる耐久性を想定し、ロボット単体の技術的な完成度だけでなく、導入コストや保守性を含む事業性を検証する考えだ。

シャトルラックLXなどで完全無人化への基盤を整備

国際物流総合展2026では、完全無人化へ向けた基盤となる新開発の「シャトルラックLX」や「ファインシャトル」が展示されている。

シャトルラックLXは、パレットを高密度に保管する4wayパレットシャトル式の自動倉庫で、搬送台車がラック内を前後左右に走行する。建屋の柱や形状を避けて柔軟にレイアウトでき、台車やリフター、ラックを追加することで、保管能力と処理能力を拡張できる。

  • 4wayパレットシャトル式自動倉庫「シャトルラックLX」の概要

    4wayパレットシャトル式自動倉庫「シャトルラックLX」の概要。前後左右に走行する複数の台車とリフターを組み合わせ、高密度保管と高い入出庫能力を両立する。台車やリフター、ラックの追加による能力拡張にも対応する

台車やリフターの一部が故障した場合も、ほかの車両や設備で運用を継続できる冗長性を持たせた。先入れ先出しと先入れ後出しの双方に対応し、Goods to Person(GTP)方式のピッキングや出荷前の荷揃えにも利用できる。

  • 「シャトルラックLX」

    ダイフクブースには実物の「シャトルラックLX」が展示されている

ファインシャトルは、ダブルディープラックとハンガー式ケースシャトルを組み合わせたケース自動倉庫で、ラック下段へケース搬送・仕分け用AMR「SOTR-M」が入り、商品をピッキングステーションまで運ぶ。

  • ハンガー式ケース自動倉庫「ファインシャトル」

    ハンガー式ケース自動倉庫「ファインシャトル」。ダブルディープラックとハンガー式ケースシャトルによって高密度保管を実現し、ラック下段のAMRやコンベヤとの連携で搬送距離を短縮する

従来の固定コンベヤをAMRへ置き換えることで、ピッキングステーションの増減やレイアウト変更に対応しやすくした。物量の増加に応じてAMRやクレーンを追加でき、設備の一部が停止した場合にも残る設備で運用を継続できる。

  • 「ファインシャトル」

    ダイフクブースには実物の「ファインシャトル」が展示されている

ダイフクは、特定の自動倉庫を一律に提案するのではなく、建屋条件、保管する品目、入出庫量、求められる処理能力に応じて、スタッカークレーン式やシャトル式などから最適な構成を選択する。ハードウェア自体に加え、複数の台車を効率良く動かす高精度な制御を競争力と位置付けている。

マテハンの知見をフィジカルAI時代の強みに

フィジカルAIの実用化に向けては、高性能なAIモデルやヒューマノイドロボットを開発するだけでは十分ではない。実際の工場や物流センターでどの作業を自動化し、ほかの設備とどのように連携させるかを設計する必要がある。

半導体工場では、搬送物を迅速に運ぶだけでなく、振動や発塵を抑え、製造装置の稼働状況に応じて搬送順序を最適化することが求められる。物流センターでは、多様な形状の商品を扱いながら、保管、搬送、ピッキング、仕分け、出荷の能力をそろえる必要がある。

ダイフクは、これまで蓄積してきた搬送設備、ロボット、システム制御、工場・物流センターの設計ノウハウにAIを組み合わせ、認識、判断、動作を一体化したフィジカルAIへ発展させる方針である。

半導体工場向けでは、2027年から2028年ごろにAIによる天井搬送車の運行制御を実用化し、搬送効率とレイアウト変更への対応力を高める。物流や製造現場では、人手が残る不定形物のピッキングや組立作業を自動化し、2030年ごろからヒューマノイドに近いロボットを含む実証へ進む。

ロボットの形を先に決めるのではなく、現場の作業、処理能力、コスト、信頼性に適した機構を選び、システム全体として最適化する。ダイフクは、こうしたマテリアルハンドリングの知見を生かし、半導体工場と物流センターの完全無人化へ向けた技術開発を進めていくとしている。

  • 2030年までの実現を目指す完全無人化された物流センターの姿

    2030年までの実現を目指す完全無人化された物流センターの姿のイメージ。上半身タイプのヒューマノイドロボットの姿もあるが、必ずしも人の形にこだわるのではなく、適材適所で最適な形状を模索していく。このCGはあくまでイメージとして分かりやすいものを示すために作られたもので、現実となった場合、ロボットの形は全然別のものになっている可能性もあるという (提供:ダイフク)