人の生活圏への出没が懸念されるヒグマへの対策をめぐり、四足歩行ロボットとフィジカルAIを活用したシステムの研究開発を開始したことを、エコモットが8月27日に発表。複数台のロボットによる自律巡回で、ヒグマやその痕跡を早期に発見して状況把握を行い、迅速に関係機関へ情報共有することで、クマ被害の低減や対策業務の省人化をめざす。

  • 四足歩行ロボットによるエッジAIヒグマ検知イメージ

    四足歩行ロボットによるエッジAIヒグマ検知イメージ

ヒグマやツキノワグマの生息域が拡がったことで、人の生活圏への出没が増え、人身事故や農業被害を招く「アーバンベア問題」が北海道・東北地方で深刻化している。

札幌市など各自治体では、人とクマのすみ分けを図る「ゾーニング管理」を推進。ヒグマの「コア生息地」、定着を抑制する「緩衝地帯」、農林業や畜産業などを守る「防除地域」、人の生活圏への侵入を防ぐ「排除地域」に区分して対策するものだが、緩衝地帯や防除地域は広大なため、監視や侵入防止対策の多くは固定カメラや有人巡回に依存しており、人材不足や高齢化が進む中での継続的な維持が課題だった。

そこで同社では、経済産業省所管の令和8年度「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)」に、「アーバンベア対策を実現する複数台四足歩行ロボットのオーケストレーション技術確立に向けた研究開発」を提案。今回正式に採択が決まったかたちだ。研究期間は2026年8月から2029年3月までとしている。

エコモットは2007年の創業以来、IoT専業のソリューションベンダーとしてセンサーや自社開発通信デバイスの提供に加え、多様な顧客ニーズに応じたカスタマイズ、現場での設置ノウハウも提供してきたという。

今回の研究開発事業では、これまで培ってきたIoTセンシング、クラウドプラットフォーム、エッジAIの各技術に、実世界で自律的に認識・判断・行動する「フィジカルAI」技術を融合。

前出の緩衝地帯や防除地域を、複数台の四足歩行ロボットが自律巡回し、ヒグマやその痕跡の早期発見、侵入経路の把握、電気柵等の状態監視、関係機関への迅速な情報共有を行うことで、人の生活圏への侵入リスクの低減と対策業務の省人化をめざす。

複数のロボットが取得した映像や位置情報をクラウド上で統合し、ヒグマの出没傾向や行動変化を継続的に分析。関係機関が共通の情報基盤のもとで迅速な意思決定を行える環境を構築する。従来の「点による監視」から、ヒグマの行動予測を取り入れた「面によるゾーニング管理」へと高度化を図る。

  • 全体構成図

    全体構成図

  • ヒグマゾーニング管理支援ロボットシステムのイメージ

    ヒグマゾーニング管理支援ロボットシステムのイメージ

具体的な研究開発の内容は、以下の通り。同社は今後の展望として、こうした研究開発の成果が、スマート農業やインフラ点検にも展開されることに期待するとしている。

  1. 屋外環境における物理データ基盤構築と自律歩行AIの確立
  2. 複数台ロボットの協調制御(オーケストレーション)
  3. エッジAIによる対象物検知とWeb統合管理システム

屋外環境における物理データ基盤構築と自律歩行AIの確立

北海道・東北地域の山林、放牧地、傾斜地などを3Dデータ化し、シミュレーション環境上で強化学習を実施。さらに、現実空間とデジタル空間を連携させたデジタルツイン環境を構築し、屋外環境に適応した四足歩行ロボットの自律移動技術の確立をめざす。

複数台ロボットの協調制御(オーケストレーション)

単体ロボットの性能向上に加え、複数台のロボットを統合的に協調制御する「オーケストレーション」技術を構築。各ロボットが収集した情報をリアルタイムに共有し、バッテリー残量や機体状態に応じて、自律的に役割や巡回ルートを最適化する。

また、故障や通信断などの異常発生時には、問題のあるロボットから他のロボットへとタスクを引き継ぐことで運用継続性を確保。広大な緩衝地帯や防除地域で、効率的かつ持続的な監視体制を支える技術基盤を構築する。

エッジAIによる対象物検知とWeb統合管理システム

カメラやLiDARなどのセンサーとエッジAIを組み合わせ、ヒグマやツキノワグマ、その痕跡をリアルタイムで検知・判定。Webアプリケーションを通じて管理者へ即時通知するとともに、出没情報や巡回データを蓄積・分析し、ゾーンごとのリスク状況を継続的に可視化する。「経験や勘に依存しない、データに基づくヒグマゾーニング管理」の実現をめざす。