三井不動産は7月23日、ロジスティクス事業の戦略と2026年度の開発計画を発表した。
同社は、物流施設の開発にとどまらず、物流コンサルティングや自動運転への対応、研究開発施設、データセンターなどへ事業領域を広げ、「物流プラットフォーマー」から「産業デベロッパー」への進化を目指す。その一環として、データセンター事業では2035年度までに累計6000億円超を投資する計画も明らかにした。
三井不動産 ロジスティクス本部 ロジスティクス事業部長 兼 イノベーション推進室長の涌井耕人氏が、直近の開発実績、物流業界の課題に対する取り組み、産業デベロッパーとして目指す方向性について説明した。
関西で大型の「街づくり型物流施設」を開発
近年三井不動産は、大規模で交通利便性の高い立地や先進設備に加え、地域交流や防災、働きやすさなどを取り入れた「街づくり型物流施設」の開発を進めている。
例えば、大阪市淀川区で開発中の「SGリアルティ・MFLP大阪加島」は、大阪市内最大規模となる延床面積21万平方メートル超の物流施設で、免震構造や危険物倉庫を備えるほか、系統用蓄電池やコンテナ型データセンター、ペロブスカイト太陽電池の導入も検討している。
また京都府八幡市では、2棟で延床面積24万平方メートル超となる「MFLP・LOGIFRONT京都八幡Ⅰ・Ⅱ」を開発。河川整備による治水機能の向上など、地域との共生を意識した施設づくりを進める。
涌井氏は「物流施設の利用者だけでなく、地域や行政とのつながりを形成することが、施設や周辺エリアの価値向上につながる」と説明した。
物流DXと自動運転に対応する物流施設へ
三井不動産は、物流施設の賃貸・開発に加え、物流戦略の策定から施設稼働後の改善までを支援する「MFLP&LOGI」を展開している。
グループ会社のMFロジソリューションズによる物流コンサルティングに加え、荷主企業や物流事業者が課題を共有するコミュニティーも運営。AIカメラを活用して物流施設に出入りするトラックの荷役時間を可視化する実証実験も進めており、予約システムとの連携による荷待ち時間の削減など、物流DXを支援している。涌井氏は「協力したテナント企業からも評価を得ており、他施設への展開を検討している」と説明した。
同社は「ドライバーの拘束時間規制強化」への対応にも注力している。
同社は2025年4月、自動運転用高精度地図を手掛けるダイナミックマッププラットフォームと基本合意を締結しており、物流施設内で自動運転車両向け地図を提供し、高速道路のインターチェンジに近接する施設での自動運転トラック受け入れや、有人運転と無人運転の切り替え方法などを検討している。
加えて2026年7月には、自動運転トラックを開発するT2への出資を決定した。今後は車番情報や施設内の高精度地図を活用し、受付、誘導、入退場管理、荷役時間の計測を一体化した施設オペレーションを構築していく。高速道路区間の自動運転だけでなく、物流施設への進入から荷役、退出までを含む運用の具体化を進め、次世代スマート物流施設を目指す構えだ。
同社は、ドライバーの拘束時間規制強化を見据え、自動運転トラックへの対応も進めている。2025年4月にはダイナミックマッププラットフォームと基本合意を締結し、物流施設内で利用する高精度地図の提供や、自動運転トラックの受け入れ方法を検討。さらに2026年7月には自動運転トラックを開発するT2へ出資し、受付から誘導、入退場管理、荷役時間の計測までを一体化した次世代物流施設の実現を目指す。
物流用途と研究施設が混在する複合的な産業施設
三井不動産は物流施設の開発にとどまらず、研究開発施設やオフィス、データセンターなどを組み合わせた複合施設を展開し、「産業デベロッパー」への転換を進める。
「物流機能を中心とする『三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)』から、研究開発、オフィス、研修、データセンターなどを備える『三井不動産インダストリアルパーク(MFIP)』へと開発領域を広げていきます。冷凍・冷蔵倉庫、製造施設、研究施設などの需要を取り込み、複合的な産業拠点を形成します」(涌井氏)
2026年6月に竣工した「MFIP海老名&forest」は、その旗艦施設である。1、2階を物流用途、3、4階をオフィス、研究施設、ラボに対応できる区画とした。物流用途に加え、建物の約半分がオフィス・研究施設・ラボなどのマルチユーススペースで作られている建物の構成だ。
新日本空調は複数の研究開発機能を同施設内へ移転し、環境・エネルギー分野の研究や技術展示、地中熱などの未利用エネルギーの検証、異業種との共創を進める拠点を開設する予定だという。
こうしたMFIPの展開に加え、同社は成長分野であるデータセンター事業も拡大する。
データセンターに累計6000億円超を投資
三井不動産はデータセンター事業を新たな成長分野と位置付け、2035年度までに累計6000億円超を投資する方針を示した。関西北摂エリアと関東多摩エリアで新規開発を決定しており、今後は対象地域をさらに広げる考えだ。
生成AIやクラウドサービスの普及でデータ処理需要が拡大する中、同社はデータセンター事業を成長領域と位置付ける。2012年にMFIP印西で参入し、その後はハイパースケール型や都心型へと開発領域を広げてきた。
同事業においては、国内外のデータセンター事業者との関係、総合デベロッパーとしての用地取得力や開発ノウハウを生かし、三井不動産が主体となって企画・開発を進めていくという。
なお物流施設とデータセンターは原則として独立した建物であり、涌井氏は「高いセキュリティが求められるデータセンターの特性上、物流用途との同居には適さない面がある」とその経緯を説明した。
同社は物流施設で培った開発ノウハウを生かしながら、研究開発施設やデータセンターなどへ事業領域を広げ、「産業デベロッパー」への転換を進める。特に生成AIの普及を背景に需要拡大が続くデータセンター事業を成長の柱と位置付け、中長期的な投資を加速していく考えだ。





