三井不動産と日立製作所(以下、日立)は4月15日、三井不動産が全国に保有する約200棟のオフィスビルを統括する「危機管理センター」における災害時対応力の一層の強化に向け、SLM(Small Language Model:小規模言語モデル)を活用したオフライン型災害対策支援システムの開発と検証を開始したことを発表した。
このシステムではオンプレミス環境下においても実用に耐える精度を確保するため、ビル運営や災害対応に関する専門知見をAIに組み込んでいる。日立の生成AI活用プロフェッショナルサービスを通じて、業務特化型の言語モデルとAIエージェントを活用し、現場で使える災害対策支援システムを実現するという。
両社はシステムの実証を進めており、技術検証と改良を経て、早期の本格稼働を目指す。また、このシステムを日立の「HMAX for Buildings:BuilMirai」のラインアップとして提供することで、両社による取り組みの成果を他のオフィスビル管理事業者にも展開し、持続可能でレジリエントな街づくりへの貢献も目指すという。
システム開発の意義
日本では自然災害の激甚化と生産年齢人口の減少が進み、オフィスビル運営においては「安全・安心の確保」と「効率化・省人化」の両立が急務となっている。三井不動産の危機管理センターは、常設の中枢拠点として24時間365日体制で宿日直(社員2名交代制)を実施している。
震度5強以上の揺れが観測された際には、センター内に災害対策統括本部を設置し、約300人規模で各地域の対策本部と連携し、全国の情報を一元管理しながら、ビル利用者への情報提供と機能の継続および復旧を迅速に進めてきた。
しかし大規模災害時は、固定・携帯電話やインターネット接続が制限される可能性があり、通信に依存せず、さらには宿日直者の習熟度にも左右されない初動対応を可能にする仕組みが求められる。
そこで三井不動産と日立は、危機管理センターの宿日直者が通信障害などが発生するような大規模災害時でも適切に対応できることが、ビルを起点に活動する利用者の安全・安心な日常につながると考え、通信環境に左右されずに的確な支援を受けられるよう、SLMを活用したオフライン型災害対策支援システムの開発を開始した。
システム開発における両社の強みと役割
三井不動産は約200棟のオフィスビル運営で培った危機管理の現場知見と、膨大な運用マニュアルや災害対応マニュアル、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)およびBCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)のガバナンスを提供し、要件定義と評価を主導する。
危機管理センターの運用実態に即した精緻な設計で、ビルごとの個別最適と運用実装性を担保するという。
日立はエレベーターをはじめとするビル設備や管制センター運営で培った知見、「HMAX for Buildings」に代表される、データにドメインナレッジと先進AIを組み合わせて新たな価値を生み出す次世代ソリューション群の開発力を武器に、軽量で信頼性の高いオフラインAIシステムを設計・実装する。
デジタルシステム&サービスセクターが金融向けなどで培った、厳格なセキュリティ要件やミッションクリティカルな運用に根差したアーキテクチャで、三井不動産の要求を満たしたという。

