7月8日~10日に東京ビッグサイトで開催された「国際モダンホスピタルショウ2026」では、出展社セミナー「医療従事者の働き方を変える生成AI活用の最前線」が行われた。本稿では、同セミナーにおいて、済生会宇都宮病院 診療副部長 AI・DX PJリーダーの新田清一氏と、NEC 医療ソリューション統括部の目黒氏が紹介した生成AI活用事例をレポートする。
AIと対話しながら働く医療現場へ
最初に登壇した目黒氏は、NECが医療従事者の業務効率化を支援する医療DXサービスとして、「AIメディカルアシスト」と「音声入力LLMサービス」を紹介した。
「AIメディカルアシスト」は、電子カルテと連携し、診療情報提供書や退院サマリなどの医療文書を生成AIで作成・要約するサービス。電子カルテ上のデータを活用して文書を半自動で作成できるほか、チャット機能により情報検索や文書作成も支援する。
一方、「音声入力LLMサービス」は、診察中の医師と患者の会話をリアルタイムで文字起こしし、診療記録の草案を自動生成する開発中のサービス。医師は生成された内容を確認・修正するだけで済み、記録業務の負担軽減につながるという。
今後NECは、AIが業務を自律的に支援する「Agentic AI」として両サービスを発展させ、医療現場の業務フローにより深く組み込んでいく方針だ。
地域の基幹病院が直面する3つの課題
後半は「医療従事者の働き方を変える生成AIの最前線~MegaOak AIメディカルアシスト/音声入力LLMサービスは現場を変えられるか?~」というタイトルのもと、新田氏がNECのサービスの活用事例を紹介した。
同氏は地域の基幹病院が抱える課題として「働き方改革」「不十分な病診連携」「外来混雑のための短時間診療(ながら入力)」の3点を挙げた。
「地域の基幹病院には患者が集中しやすく、医師や医療スタッフの業務負荷が高まりやすい環境にあります。医療現場では、記録や書類作成の負担をいかに減らすかが、働き方改革において重要な課題になっています」(新田氏)
医師の時間外労働の主な理由としては、緊急対応に続き、「記録・報告書作成や書類の整理」が上位となっている。特に文書作成で時間がかかる作業は、膨大な診療記録から必要情報を探す「カルテの検索」と、内容を整理して文章化する「文章の要約、構成・作成」だという。
「病診連携」においても、新田氏は、「地域の医療機関へ安定した患者を逆紹介し、急性期医療に集中する体制が不可欠だ」と説明した一方で、患者への説明や診療情報提供書の作成が現場の負担となっており、省力化の余地があるとの見解を示した。
3つ目の課題は「外来診療中の電子カルテ入力」だ。患者と会話しながらカルテを入力する医師は約70%に上り、入力作業に追われることで患者と向き合う時間が減ってしまうという。一方、診察後にまとめて入力する場合も、対話内容を正確に記録することが課題となる。
AIMA導入で3カ月累計4121件利用、現場から効果の声
済生会宇都宮病院では、これらの課題に対する対策として4月から「MegaOak AIメディカルアシスト(AIMA)」を導入している。
AIMAは、文章生成とチャット機能により、診療記録や情報収集、文書作成を効率化するサービスで、新田氏は、同サービスを診療情報提供書や各部署のサマリ作成、チャットボットによる情報整理などで活用していると説明した。
導入後の利用状況を見ると、月間利用回数は4月が988件、5月が1410件、6月が1723件と増加傾向にあるという。3カ月累計の利用回数は4121件で、その内訳は文章生成が3435件、チャットが686件だ。
「6月単月の利用回数は過去最高の1723件となりました。継続利用意向は5点満点中4.0となっていて、院内完結型AIとして幅広い職種へ浸透しています。職種別では、薬剤師や看護師が文章生成を多く使い、看護師や事務職員がチャットを多く使用している傾向にあります」(新田氏)
現場の声を聴いたアンケートでは、医師の継続意向は4.5、看護師は4.0、薬剤師は3.7、医事課は4.3というスコアをマークしたという。
医師からは「院内で完結するため安心して患者情報を入力できること」「英語の診断書作成時に使用したい」、看護師からは「40分かかっていたサマリ作成が約5分に短縮された」との声があったという。
音声入力LLMは「目を見る診療」を支援
続いて新田氏は、音声入力LLMサービスの実証結果を紹介した。同サービスは、医師と患者の会話を音声認識し、リアルタイムで表示するものだ。
診察中に医師がカルテ入力を行わず患者との会話に集中でき、診察後はAIが生成した記録を確認・修正することで活用する。記録作業時間の削減に加え、診察内容を記憶しておく必要がないことも利点だという。
実証では初診患者を対象に、問診や検査結果の説明、指導の場面で試行運用を実施した。
その結果、「音声の文字化精度が高く、時系列で振り返ることができ、対話内容を覚えておく必要がない」と評価したほか、要約機能による記録作業の省力化や、カルテ入力をせず患者の目を見て診療できる点もメリットとして挙げた。
最後に新田氏は、「現場の声を開発に反映しながら、医療従事者とともに育てるAIになってくれることを期待する」と述べて講演を締めくくった。NECは今後、電子カルテデータとの連携や音声データの活用を広げ、AIが医療従事者の業務フローに自然に組み込まれる環境の実現を目指す。








