この宇宙・航空ニュースのまとめ

  • アークエッジ・スペース、100kg級「月測位実証衛星」の製造拠点「新木場ラボ」を2026年7月から運用開始
  • 衛星(フライトモデル)の完成にむけて開発を進め、初号機の2028〜2029年頃打ち上げめざす
  • 月においてもGPSのような通信・測位システムの構築が求められ、国際的なフレームワークが立ち上がっている状況

アークエッジ・スペースは、100kg級の「月測位実証衛星」の製造拠点として「新木場ラボ」(東京・江東区)を新たに開設。月に向けて打ち上げる実証衛星の製造フェーズに移行したと7月8日に発表した。新拠点は同月中旬から運用をはじめ、衛星(フライトモデル)の2028年12月完成にむけて開発を進める。

  • 月測位衛星の開発拠点の整備状況(新木場ラボ)

    月測位衛星の開発拠点の整備状況(新木場ラボ)

  • ラボ内観画像 出所:アークエッジ・スペースニュースリリース

    ラボ内観画像 出所:アークエッジ・スペースニュースリリース

同社は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実施する「宇宙戦略基金」の技術開発テーマ「月測位システム技術」における実施機関として、月測位実証衛星の開発を行っている。その事業の一環として今回、「三井リンクラボ新木場2」内に自社ラボを新たに設け、衛星搭載測位ペイロードの開発や衛星システムの開発などを進める。

同ラボは月測位衛星・ペイロードの開発拠点と位置づけており、各種計測機器を導入し、クリーンルームも整備。100kg級衛星組立用の作業台車や吊上げ設備のほか、開発に必要な電気・RF試験用の測定器や、GNSS(全球測位衛星システム)シミュレータなどを配備する。

報道関係者向けに同社がラボを公開した時点では、クリーンルーム設置に伴う空調設備・内装工事を完了し、機器類を今後搬入する段階まで整備が進んだ状態となっていた。

  • 開発中の月測位実証衛星のイメージ 出所:アークエッジ・スペースニュースリリース

    開発中の月測位実証衛星のイメージ 出所:アークエッジ・スペースニュースリリース

  • 月測位実証衛星の概要

    月測位実証衛星の概要

月面探査においても、自身が今どこにいるのかを把握する技術は欠かせない。月探査活動を安全かつ効率的に進めるには、月面での絶対位置を参照するための「月測位システム」や、大量のデータ伝送などを行うための「月−地球間高速大容量通信回線」などが必要になる。月面においても地球と同様の基本的なインフラが求められる。

現在、地球で用いられているGPSをはじめとする各種測位衛星網を、月周回動道にも構築することをめざす国際的なフレームワーク「LunaNet構想」が立ち上がっており、米国(NASA)、欧州(ESA)、日本(JAXA)が主導するかたちで動いているという。

このLunaNetでは、科学探査から将来の商用運用まで見すえ、通信、測位(PNT:Positioning, Navigation and Timing、測位/航法/計時)、宇宙天気などの分野で、各国システム間の協調や相互運用・利用の確保に向けた議論が交わされているとのこと。

このうち、日本が構想する「月測位衛星システム」(LNSS)では、月の南極域(南緯75度以南)をサービスエリアとし、初期目標として水平40m以下の測位精度で“月版GNSS”を提供することを想定している。

アークエッジ・スペースは超小型衛星コンステレーションの企画・設計から量産化、運用まで総合的なソリューション提供を行う企業で、超小型衛星の開発と運用に加え、IoTや次世代海上通信インフラなど通信技術を融合させた観測・測位ソリューションの実用化に注力してきた。

同社はまた、JAXAとの複数の契約を通じて、月測位・月通信インフラの実現に向けた検討も段階的に進めてきており、2022年から2023年にかけてインフラのアーキテクチャ設計、2022年から2024年にかけて技術実証ミッション検討、そして2023年から2024年にかけて測位ペイロードの試作開発を実施。

2024年11月には、前出のJAXA宇宙戦略基金による事業の実施機関として採択されて以降、月測位ペイロードシステムの開発、100kg級超小型衛星を用いた月測位実証衛星の開発および運用システムの検討、ミッション評価システムの検討等に順次取り組んできた。

2030年以降のLNSSの定常的運用サービス(FOC:Full Operational Capability)に向けたフィージビリティ・スタディや、「LunaNet」との相互運用性を考慮して標準化される測位信号の受信機の検討にも取り組むなど、将来的なサービス提供・受信機の開発・製造を見すえた技術検討を進めている。

アークエッジ・スペースでは、月測位実証衛星初号機の2028〜2029年頃の打ち上げをめざしており、実際に月周回軌道へ月測位衛星を投入して行うミッションを実施予定。月測位衛星と、月面に配置した月面測位信号受の信機を用いて、LNSS信号の送受信実証を行う予定だ。今回新設した新木場ラボでは、こうした実証に向けた実証衛星および関連機器の開発・製造を進めていくことにしている。