米Microsoft(マイクロソフト)は7月2日(現地時間)、世界中の顧客に対し、AIを活用したFrontier Transformation(最先端の変革)を提供する新たな事業組織「Microsoft Frontier Company」を立ち上げると発表した。

AI導入から継続改善まで支援する「Microsoft Frontier Company」

同組織は業界に関する深い知見、変革管理および継続的改善のノウハウ、さらにエンタープライズ向けAIエンジニアリングの専門知識を兼ね備えた独自の体制を提供する。同社によるとFDE(Forward Deployed Engineering:顧客先に入り込み支援するエンジニア)を発展させた取り組みであり、成果重視のエンジニアリング組織だという。

同社はMicrosoft Frontier Companyに25億ドルを投資し、6000人の業界専門家とエンジニアを顧客企業へ配置するとしている。これにより、顧客と共同でAIシステムの設計・実装・展開を進めるとともに、測定可能なビジネス成果に基づいて継続的な改善を実施していく。

まず、企業が構築すべきは「インテリジェンスプラットフォーム」であり、企業独自のデータ、専門知識、業務フロー、意思決定プロセスといった固有の知的資産を、選択したAIモデルを活用してソリューションやワークフローへ組み込み、継続的に蓄積・強化できる基盤が必要となる。

これと同時に、テクノロジースタック全体にわたるAIソリューションを可視化し、統制・管理・保護できる信頼性を担保したプラットフォームも必要なほか、FinOpsを活用してAI投資のROI(Return On Investment:投資収益率)を継続的に評価することも求められている。

これら2つのプラットフォームを継続的な改善サイクルとして機能させ、AIエージェントを活用した業務プロセスを最適化するためには、業界知識に精通したエンタープライズAIエンジニアリングの専門性が不可欠とのこと。

パートナー企業とともにグローバル展開を加速

Microsoft Frontier Companyは、こうした役割を担うために設立された。すでに初期段階の成果も現れており、Microsoftのエンジニアと業界専門家は、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)と連携し、「LSEG Workspace」にAIを組み込んでいる。これにより、金融業界のプロフェッショナルは、構造化データと非構造化データを横断して複雑な質問を行い、迅速に回答を得られるようになっている。

顧客からのフィードバックとリアルタイムのユーザーテストを通じて継続的に改善される基盤上に構築されており、開発サイクルの高速化とモデル品質・適用範囲の向上を実現しているという。

LSEGに加え、Land O'Lakes、Unilever、Novo Nordiskなどでも、Microsoftの差別化されたアプローチによって、Frontier Transformationに向けた取り組みにおいて具体的な成果が生まれているとのことだ。

こうした取り組むをグローバルで展開するため、Microsoftはパートナーエコシステムとの連携を強化。Accenture、Capgemini、EY、KPMG、PwCをはじめとするグローバルSIパートナーとFDE協業体制を構築している。

顧客データ、知的財産、競争優位性は、業界内での差別化要因を失わせるような形でモデル学習に利用されることはないほか、Microsoftは多様なモデルを活用できるオープンかつヘテロジニアスのAIプラットフォームで、顧客の知的資産を保護する。

顧客は単一のモデルに縛られることなく、Microsoftのプラットフォームは、OpenAI、Anthropic、Microsoft AI、オープンソースモデル、業界特化型モデルなど、用途に応じて最適なモデルを選択できる柔軟性を提供しつつ、顧客自身が主導権を維持できるようにするという。

なお、Microsoft Frontier Companyの社長にはRodrigo Kede Lima氏が就任。一方、Microsoft Commercial Business CEOのJudson Althoff氏は「Microsoft Frontier Companyが顧客のFrontier Transformationを支援し、その成果を実現していくことを大いに期待している。最終的に重要なのは『Intelligence(知性)』と『Trust(信頼)』である。そして顧客が意味のある成果を生み出し、投資対効果を最大化できるよう支援することが、私たちの使命だ」と述べている。