八ヶ岳農業大学校校長兼専務理事(ポート副社長)・丸山侑佑が語る「農業だけでなく経営も教える『八ヶ岳農業大学校』へ」

標高1300メートル、八ヶ岳西麓に広がる長野県茅野市と原村にまたがる、日本の原風景とも言えるこの場所で、野菜の収穫などをしながらリモートで東京のIT企業の経営会議にも参加する……。一昨年からの私の二足の草鞋の生活です。

 同じ時期に八ヶ岳農業大学校は再スタートを切りました。もともと同校は1938年に設立された教育機関で、当時の国策の中で農業人材を育成することが使命でした。

 ところが、2010年度当時、政府による事業仕分けで補助金が打ち切りとなり、赤字体質を解消できずに経営難となっていたところ、ビズリーチの創業者で現ビジョナル社長の南壮一郎さんが一昨年に理事長に就任し、再建に取り組み始めました。

 一方の私は上場企業・ポートの創業期に取締役COOとして参画し、プライベートで訪れた八ヶ岳の魅力に惹かれて22年に家族と移住。家族でよく訪れていた同校の再建に単なる傍観者ではいられずに、南さんに連絡して再建に加わりました。

 日本の農業を若者が輝ける産業にしたい─。小さい頃は土建屋だった父の姿があまり好きではなかったのですが、社会人となって今の課題山積の日本と向き合っていると、父の仕事を含めて現場で汗水流して人の役に立つ仕事の魅力を感じます。

 そもそも当校が経営危機に陥ったのは自営ができていなかったことに起因します。事業仕分けはトリガーに過ぎず、問題の本質は自立した経営基盤の未確立です。だからこそ、同じことをやっていてはいけません。

 当校は267ヘクタールという広大なキャンパスを有しています。酪農や養鶏、野菜や花の栽培を実習生に教えていますが、ハードの投資よりも重要なのはAIの活用です。

 農業に関する世界中の論文や全国の先進的な農業従事者のボイスレコーダーをAIに読み込ませ、温度や湿度、天候、その日の作業や状況などを前日の夜までに報告すれば、翌日早朝までには、1日の作業書が提案されるようになっています。

 15年に約176万人だった農業従事者は23年には約116万人と、8年間で約60万人も減少しています。しかも、そのうちの6割が65歳以上で平均年齢が68.5歳です。この状況を打破するためには、若い即戦力となる農業人材を生み出す以外に手はありません。

 だからこそ、AIを活用することで農家の勘や経験に頼らずに、未経験者でもできる農業の実現を目指しているのです。これからの農業大学校は農業のノウハウだけを教えているだけでは意味がありません。経営も分かる人材を育てなければなりません。先ほどのAIをブロッコリーの生産で活用しており、初年度の粗利益目標を決め、達成に向けて日々励んでいます。

 当校は東京から2時間半で来ることができます。近くには蓼科温泉があり、年間約180万人が足を運びます。一方で当校は牛乳の生産を再開させて直売所で販売し、10ヘクタールの花畑をはじめとしたアグリツーリズムも展開しています。先月、花畑開園時の週末には1日で1000人超のお客様がいらっしゃいました。当校の実習生はその現場で学んでいます。

 日本の農業を守ることは食料安全保障につながります。農業は決してなくしてはならないのです。そして私が確信しているのは、農業をサイエンスと捉えてテクノロジーを使えば、ビジネスとして必ず成り立つということです。農業と経営を教える新たな農業大学校として社会の役に立っていきます。

タニタ社長・谷田千里が語る「歩くだけでポイントを獲得 新たな健康経営の提案を」