物質・材料研究機構(NIMS)とIBMは7月1日、NIMSが蓄積してきた材料データや研究基盤と、IBMのAI・量子コンピューティング技術を組み合わせ、材料科学分野におけるAI活用基盤の構築を目指す協業に向けた覚書(MOU)を締結した。MOUは、材料研究に関する将来的な技術検討や共同研究開発について、両者が長期的な観点から議論を進めることを意図するものとなる。
パートナーシップの概要
材料科学分野では、研究データの複雑化に伴い、AIや量子計算による研究開発の加速が期待されています。こうした先進コンピューティング技術とNIMSに収集・蓄積される材料基盤データを活用することで、材料データの統合、研究プロセスの効率化、新規材料の発見・開発・実用化までの高速化を実現する新たな基盤技術の構築が求められているという。
両者はMOUに基づき、基盤モデル、LLM(大規模言語モデル)、エージェント技術を含む先進AI技術および数理アルゴリズムの材料分野への応用展開、材料研究への量子コンピューティング応用可能性の探索、データ統合およびインフラ整備を通じた材料科学研究基盤の構築などの技術領域においてパートナーシップを進めていく。
これらの協議内容にもとづき、パートナーシップにおける具体的なプロジェクトの構想策定を実施する。
NIMSは材料データ中核拠点(MDPF)を設置し、世界有数の大規模データ基盤(例:PoLyInfo、AtomWork-Adv、Kinzoku、RDE、など)を開発し、提供している。また、自動自律実験などにおいて世界を先導する取り組みを加速させている。
同時に世界屈指の材料研究者を擁する材料専門の研究所として材料成果を創出するとともに、国内外のアカデミア、産業界との共同研究、研究基盤の提供を通して、材料分野のイノベーション創出に貢献している。
NIMSが有する材料データ群および自動自律実験、先端設備はAIおよび量子技術を活用した新規材料探索に向けた高度な研究開発を遂行するうえで貴重な基盤となっている。IBMの先進コンピューティングと融合することで、AI for Materialsの実現に向けた取り組みを加速することが期待されるという。
一方、IBMは基礎研究部門のIBM Researchによるマテリアル・ディスカバリー技術を中核とするデジタルトランスフォーメーション・サービス「IBM Material DX」を2025年に発表している。
両者は材料科学、AI、量子コンピューティングそれぞれの強みを融合させることで、材料研究分野における技術革新を推進する可能性を検討する。さらに、これまでIBMが長年にわたり築いてきた研究パートナーシップを基盤として、日本を代表するAIおよび量子アルゴリズム分野の研究グループとの連携をさらに拡大する方策についても検討していく考えだ。
