埼玉県立松山高等学校・新聞部が、日本科学未来館を丸ごと特集した新聞「日本科学未来館号」を制作してくれました。

高校生が未来館を取材することで、一体どのような新聞が出来上がったのでしょうか。

今回は、この新聞のご紹介とともに、展示を“体験する側”ではなく“伝える側”として未来館を訪れた高校生たちが、何を問い、何を感じ、何を伝えようとしたのかに注目してお届けします。

「日本科学未来館号」のご紹介

今回新聞を制作してくれた松山高校新聞部は、全国高等学校総合文化祭(全国大会)の新聞部門で、 3年連続最優秀賞を受賞(2026年5月現在)している実力派。

そんな彼らが未来館に丸1日滞在し、スタッフへの直接インタビューや展示取材を重ねながら、丁寧に紙面をつくり上げました。
まずはぜひ、日本科学未来館号PDF版をこちらからご覧ください!

【新聞「日本科学未来館号」 https://blog.miraikan.jst.go.jp/docs/6faaa141a4d22752538c808e9ff49e6ddbff701b.pdf

完成した紙面は現在、未来館7階のレストラン入り口にて配布しています。(館内配布版はモノクロ印刷・なくなり次第配布終了)

レストランを入るとすぐに「日本科学未来館号」があります

実は昨年末から設置を始めていたのですが、来館された皆さん、気づいていただけたでしょうか……?
7階まで足を運ばれる方は限られるかと思いますが、それでも多くの方に手に取っていただいています。

とはいえ、まだまだもっと多くの方に手に取ってほしい。読んでほしい——。

そんな思いから、まずは「日本科学未来館号」の見どころをご紹介します。

見どころ紹介

新聞の表面では、未来館を象徴する展示「ジオ・コスモス」や、量子コンピュータをDJ体験で学べる「量子コンピュータ・ディスコ」を特集。
裏面には、昨年の万博でも試験運用された当館開発の「AIスーツケース」、科学コミュニケーターが企画したパネル展示「パンデミックを防げ! 鍵は“ワンヘルス”?」、さらにすべての人が楽しめるミュージアムを目指す「アクセシビリティ推進プロジェクト」が紹介されています。

どの記事も、展示体験や未来館スタッフへの直接インタビューをもとに、未来館が伝えたいこと・目指していることが丁寧にまとめられているのが特徴です。


インタビュー対象は、展示開発を担う職員から現役の科学コミュニケーターまで幅広く、AIスーツケースについては副館長の高木が直接インタビューに応じました。

インタビューに応じる副館長の高木
取材の様子。部内では取材・ライター・写真・IT(レイアウト)の4班で作業を分担しているそうです

取材の日は私も生徒の皆さんに同行していましたが、
準備された質問の質、真剣にメモをとる様子、返答を踏まえた追加質問——取材に向かう姿が本当に素晴らしく、かっこよかったです!

質問により引き出される未来館スタッフの話もとても面白く、AIスーツケースの開発秘話などは、私も思わずメモを取ってしまったほど。

 

また、AIスーツケースの取材では、生徒の皆さんに実際に体験してもらう時間も設けました。興味津々で稼働の様子を見つめ、恐る恐る目を閉じながら体験する姿からは、技術を「知る」だけでなく「感じる」瞬間が伝わってきました。

AIスーツケース体験の様子。交代で一人ずつ体験してもらいました

新聞部の皆さんにとっても、技術開発や展示設計、イベント企画等、科学館の現場で働く人から直接話を聞く経験は、なかなか得られない貴重な機会だったはず。その経験が記事の質を一段と高めているように感じました。

 

そんな魅力たくさんの日本科学未来館号。読むことで、例えばこんなことがわかります。

  • ジオ・コスモスが“シンボル”展示と呼ばれる理由
  • 量子を“DJ体験”で理解するという発想の背景
  • AIスーツケースに込められた技術とデザインの工夫
  • 科学コミュニケーターが企画を始める時に考えていること
  • アクセシビリティを広げる活動が目指すもの ……など

気になったものはありましたか?

高校生が、何を聞き、どこをみて、どのように伝えたのか——ぜひ皆さんの目で確かめてみてください!

取材“後”の生徒に逆インタビュー!

さて、そんなこんなで完成した新聞を読みふけっていたとき、ふとこんなことを思いました。

 

「普段来館する高校生は展示を“見に”来ているけれど、
この新聞部の生徒たちは未来館を“伝える”ために来たんだよなぁ……」

 

科学コミュニケーションとは何かを日々考えている身として、
“伝える側の高校生”が未来館をどのように受け止め、どんな視点で記事を書いたのか、どうしても気になってしまい……

 

新聞部の皆さんに逆インタビューをお願いしちゃいました!

唐突なお願いにも関わらず、3名の新聞部の生徒さんが快く応じてくれました。

取材にご協力いただいた新聞部の皆さんです

今回は、特に印象に残ったことや、新聞の見どころなどを中心にお話をうかがいました。

 

―今回の取材で印象に残っていることは何ですか
 

AIスーツケースは、未来館で体験できること自体を知りませんでした。副館長から仕組みや込められた思いを聞いたうえで体験できたことで、視覚障害のある人が安全に使えるよう、細かな部分まで丁寧に設計されていることがよくわかりました。科学技術がバリアフリーに活かされていく未来を肌で感じ、感動しました。」

 

「量子コンピュータ・ディスコは、量子コンピュータとディスコという組み合わせが一見関係なさそうなのに、実はよく考えられてつくられていることを知りました。体験しながら、自然に学べるよう工夫されていて、それに気づけたのは取材のおかげだと思います。」

 

「量子コンピュータもパンデミックも、言葉だけで説明されるととても難しい内容ですが、展示では“どうわかりやすく伝えるか”が徹底的に工夫されているのがわかりました。取材後は展示を見るときに『どうわかりやすく伝えているんだろう』という視点で見るようになりました。グラフや図の使い方も工夫されていて、つくるまでに相当苦労されているのだと思いました。」

 

みなさん、「つくり手の視点」で科学技術や展示を見直すことで、より深い学びを得られている印象を受けました。

取材当時の様子を思い出してもらいながら、一人ずつお話を伺いました

―新聞制作で意識したことは何ですか

AIスーツケースは、公共交通機関での利用も見すえてつくられていることを知り、しっかり伝えたいと思いました。ただ、紙面には文字数があるので、すべて書くことは難しい。似た内容はまとめ、外せない部分を慎重に選びながら構成しました。」

 

「取材相手が“伝えたいこと”を最優先に書きました。その人の考えを強めるような部分も活かして、嘘のないように心がけました。新聞である以上、自分の主観は入れられません。その分、正確に伝えることを意識しました。」

 

なるほど確かに。新聞は事実をまとめていくものであり、執筆者の想いを直接書き込むことは難しい。だからこそ、取材対象の魅力が伝わるように、相手の伝えたいことを最優先にしながら細部まで書ききる。その真摯な姿勢に、とても胸を打たれました。

ここに書ききれない話もたくさんあります!すべてお伝えしたいのですが……残念です

―日本科学未来館号の見どころを教えてください!

AIスーツケースの記事では、副館長さんの言葉をわかりやすくまとめました。1枚で未来館のすべてを伝えるのは難しいですが、未来館の魅力や細かなこだわりがわかり、『行ってみたい』『また来たい』と思ってもらえる内容になったと思います。ぜひ読んでみてください。」

 

「未来館の見どころが1枚にまとまっているのが良いところだと思います。普段は“展示を見る側”の高校生が書いている点も面白いポイントです。実際に展示を見て、気になったことを質問にしているので、読者の方も『知りたかったこと』が見つかる内容になっていると思います。」

 

「ジオ・コスモスは未来館の顔なので、ぜひ見てもらいたいです。映し出されている雲の動きが“本物のデータ”だとは知らなくて驚きましたし、そうした新しい発見を、新聞を通して知ってもらえると思います。」

 

たくさんのこだわりと想いが詰まった新聞なのだと、改めて実感しました。
ぜひ、みなさんもお手に取って、この「日本科学未来館号」をじっくり味わってみてください。

最後に

取材から新聞制作、その後のインタビューまで、未来館と真剣に向き合い続けてくださった埼玉県立松山高等学校の新聞部のみなさん。本当にありがとうございました!

改めて、日本科学未来館号PDF版はこちらからご覧いただけます。

【新聞「日本科学未来館号」 https://blog.miraikan.jst.go.jp/docs/6faaa141a4d22752538c808e9ff49e6ddbff701b.pdf


高校生の目から見た未来館を、ぜひお楽しみください。



Author
執筆: 小林 浩太(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
【担当業務】
学校連携担当として、学校向けコンテンツの企画・調査や、教員研修などを主に行う。

【プロフィル】
日常のふとした場面で科学を感じる瞬間が好き。
理科の教員として働くなかで、子どもたちが科学を通して世界への解像度を高め、より豊かに生きていけるようにと考え、日々授業と向き合ってきました。
学校と未来館をつなぐ立場として、何ができるかを日々模索中です。

【分野・キーワード】
理科/STEAM教育/探究学習