日本製鉄は6月22日、意匠性チタン「TranTixxii」が、国指定名勝「観音院庭園」(鳥取県鳥取市)の増築された回廊・書院庇の屋根材、および回廊内のランプシェードに採用されたと発表した。庭園景観との調和に加え、自然環境への配慮と長期的な美観維持が評価されたものだという。
チタンの強み
伝統建築では銅屋根が多用され、経年変化による独特の景観美が魅力とされる。しかし近年は環境条件の変化により緑青の形成が安定しない場合があり、意匠面で期待通りの風合いが得られないほか、維持管理面でも配慮を要する場面があるという。
また、銅屋根は降雨時にごく微量の銅イオンが溶出し、池や水盤のアオコ・藻・ボウフラなどの発生抑制に寄与する一方、条件によっては軒下の苔や植栽に影響を及ぼすおそれがあるという。
これに対しチタンは、周辺環境の影響を受けにくい優れた耐食性を備え、長期にわたり安定した美観を維持できる素材とされる。塗装を必要としないブラスト仕上げや発色処理により、伝統的な庭園景観にも調和する深みのある表情を表現できるほか、金属イオンの溶出が極めて少なく、環境親和性が高いという。
「TranTixxii」を選定
観音院庭園建築工事の設計者である都市景観設計は、こうした素材特性を踏まえ、庭園景観に調和する意匠性と、建築物を取り巻く自然環境への配慮を両立できる素材として「TranTixxii」を選定したとのことだ。
「TranTixxii」はこれまでも意匠性・耐食性が評価され、多くの建築物に採用されてきた。日本製鉄によると、文化財である名勝の本質的価値である庭園全体の景観と、自然環境への配慮を明確に意識して採用されたのは今回が初めてだという。
今後は、庭園施設や水辺空間にとどまらず、神社仏閣、公園施設、美術館、観光施設、城郭建築などの文化財建造物・伝統建築への展開を図るとしている。
観音院庭園の概要
観音院庭園は、寛永9年(1632年)創建の補陀落山慈眼寺観音院に所在する庭園。寺伝によれば慶安3年(1650年)頃までには作庭されたとされる。書院に面した池や、自然地形をいかした築山、石組みを有し、補陀落山を借景とした景観美で知られる。昭和12年(1937年)に国の名勝に指定された。
物件概要によると、所在地は鳥取県鳥取市上町。採用部位は書院庇、回廊屋根・ランプシェードで、素材は屋根・庇がブラスト仕上げ、ランプシェードがND20金発色の「TranTixxii」を使用した。使用量は約0.1トンで、令和8年(2026年)3月末に完工している。


