この半導体ニュースのまとめ
・東レリサーチセンターが、積層デバイス内部の「電流の通り道」を可視化する新分析サービスを開始
・GCIB、XPS、REELSを組み合わせ、各層・界面の電子状態を積層方向に評価可能にした
・半導体、有機EL、太陽電池の性能ばらつきや劣化・不具合解析、新材料開発の効率向上に活用を見込む
東レリサーチセンターは6月18日、半導体や有機EL、太陽電池などの積層デバイス内部で、電流が流れやすい経路を可視化する新たな表面分析サービスを開始したと発表した。ガスクラスターイオンビーム(GCIB)、X線光電子分光(XPS)、反射電子エネルギー損失分光(REELS)を組み合わせて各層・界面の電子状態を積層方向に評価し、性能ばらつきや不良原因の解析、新材料・新構造開発の設計指針取得につなげることを可能にするという。
元素組成だけでは届かなかった「電荷の流れやすさ」を評価
対象として想定するのは、AI、モビリティ、情報通信分野の進展を支える半導体、有機ELディスプレイ、太陽電池などの積層デバイス。これらのデバイスでは、複数の機能層や界面をまたいで電子や正孔が移動することで動作しており、各層・界面における電子輸送特性が性能や劣化、不良発生に大きく影響するという。
一方で、従来の分析では、元素組成や化学状態の把握は可能でも、電荷輸送を左右する電子状態を層ごと、界面ごとに直接把握することは難しかった。同社はこの課題に対し、組成・化学状態に加えて、電荷輸送に関わるエネルギー状態を積層方向に沿って評価することで、デバイス内部で電流が流れやすい経路を可視化できるようにしたとしている。これにより、性能ばらつきや不具合の原因解析に加え、新材料・新構造の設計指針取得も可能になるという。
GCIB、XPS、REELSを組み合わせ、同一箇所を深さ方向に追う
分析の中核となるのは、GCIB、XPS、REELS測定の組み合わせ。GCIBで試料表面をナノメートル単位で連続的に削りながら、同じ位置でXPSとREELSを測定することで、積層デバイスの各層・界面における電子状態を解析する新しい表面分析サービスを構築した。表面から順次分析を進めることで、深さ方向の電子状態分布を取得する仕組みだという。
同サービスの主な特長としては、第1に、各層・界面ごとの電子エネルギー状態を定量的に可視化できること。第2に、実デバイスへ適用できる微小領域測定に対応したこと。第3に、測定時ダメージを抑えることで、有機材料を含む積層構造にも適用できること。第4に、同一領域で分析するため、電子状態と元素組成・化学状態の相関解析が可能なことの4点をあげている。単なる断面観察ではなく、デバイスが動作する上で重要な「流れやすさ」を層ごとに読み解く分析として位置付けている。
半導体の不良解析から有機EL・太陽電池の劣化解明まで展開
同社では、同サービスの提供により、半導体デバイスの性能ばらつきや不良原因の解析、有機ELや太陽電池の劣化・性能発現メカニズムの解明、新材料・新構造開発における設計指針の取得が可能になるとしている。先端デバイスでは高性能化と低消費電力化への要求が強まっており、どの層・界面がボトルネックになっているのかを把握することの重要性は増している。とくに積層構造が複雑化する半導体や発光・変換デバイスでは、局所的な電子状態のずれが大きな性能差や寿命差につながることが考えられることから、電流の通り道をつかむ分析の需要の高まりが期待される。
