Salesforceは9月30日、業界向けAIエージェント「Agentforce for Industries」の最新アップデートに関するプレス・アナリスト向け発表会を開催した。

発表会には、セールスフォース・ジャパン ソリューション統括本部 インダストリーアドバイザー本部 本部長の西田一喜氏、同本部 ライフサイエンス業界担当 シニアマネジャーの早田和哲氏が登壇し、Agentforce for Industriesの全体像と強みを解説するとともに、注力分野である製薬・医療機器メーカー向けプラットフォーム「Life Sciences Cloud」の最新アップデートを紹介した。

「Industry Cloud」の歴史

Salesforceは、業界特有のニーズに応える15の業種別ソリューション「Industry Cloud」を提供することで、各分野におけるビジネスの成長を支援している。

さらに現在は、それぞれの業界に特化した業務機能を備えたAIエージェントとして、「Agentforce for Indusries」の国内展開を行っている。

そして同社は、Agentforceを迅速に拡張するため、2025年7月に200種類以上の業界特化型AIエージェントアクションの提供をグローバルで発表した。

「これまで『Industry Cloud』は、さまざまな業界に寄り添って11年を超えるイノベーションを起こしてきました。2024年には、100を超える業種向けAIプロンプトを標準搭載した『Industries AI』を発表したほか、2025年には『Agentforce for Industries』の展開を開始しました」(西田氏)

  • 「Industry Cloud」の歩みを説明する西田氏

    「Industry Cloud」の歩みを説明する西田氏

  • 業種別クラウド「Industry Cloud」の歴史

    業種別クラウド「Industry Cloud」の歴史

このような進化を経て、現在は、「金融:Financial Services」「通信:Communications」「製造業:Manufacturing」「ヘルスケア:Healthcare」といった12種類の業界に向けたIndustry Cloudが日本国内で提供されている。

  • 日本で提供中の「Industry Cloud」

    日本で提供中の「Industry Cloud」

「Life Sciences Cloud」のアップデート内容

このような業種向けソリューションの中でも、Salesforceが特に注力しているのが「ライフサイエンス業界」だ。その一環として、製薬企業や医療機器メーカーに向けたプラットフォーム「Life Sciences Cloud」を提供している。

「今回AIエージェントに寄せられる大きな期待を受け、『Life Sciences Cloud』を大幅にアップデートしてAIエージェントの時代に向けた新機能を提供開始します」(早田氏)

  • 「Life Sciences Cloud」について説明する早田氏

    「Life Sciences Cloud」について説明する早田氏

早田氏の言葉の通り、今回新機能として発表されたのが、ライフサイエンス企業と医療従事者(HCP)との関わり方を革新する新たなAIエージェントファーストのソリューション「Life Sciences Cloud for Customer Engagement」だ。

「『Life Sciences Cloud for Customer Engagement』は、患者さんと医療従事者のエンゲージメントから新たなインサイトを引き出すソリューションです。医療用医薬品や医療機器の情報提供から、ケアのポイント、そしてアドヒアランスに至るまで、患者さんや医療従事者のニーズを理解・サポートし、患者のアウトカムを向上させます」(早田氏)

これまでライフサイエンス業界においては、医師の負担増大により、10年前と比較して医薬品1品目あたりの情報処理量が75%増加しているにもかかわらず、自身のニーズが満たされていると感じる医療従事者はわずか3分の1にとどまるという課題があったという。

さらに、製薬会社や医療機器メーカーからの情報提供が「迷惑メール」のように感じられると指摘する声が上がっているという課題もあった。

厳しくなる規制と研究開発パイプライン創出の圧力の中で、「Life Sciences Cloud」はデジタル労働力を活用することで、情報過多を解消し、有意義なエンゲージメントを促進し医療のギャップを埋めることが可能となるという。

また、「Life Sciences Cloud」により、営業からマーケティング、メディカルサイエンスリエゾン(MSL)や臨床開発部門に至るまでの部門横断的な連携も実現できるほか、Agentforceにより医薬品や医療機器の開発、承認、アクセス、投与方法が再構築されるため、人間は医療において取り組むべき業務へ注力することが可能となるという。

  • 「Life Sciences Cloud」のイメージ

    「Life Sciences Cloud」のイメージ

「『Life Sciences Cloud』を活用することにより、営業担当者は多忙な医療従事者との限られた面談時間を最大限に活用できるようになります。音声入力によるメモやコンプライアンスチェック、ポッドキャストのようなストーリー機能、簡潔なアカウントサマリーにより、外出中のMR、MSL、SRは、24時間365日いつでも重要な情報にアクセスでき、医療従事者が患者さんを最善の方法で治療できるよう支援します」(西田氏)

このソリューションは、米国市場においては2025年10月11日、日本市場においては2025年11月下旬から提供開始予定。今後、SalesforceはLife Sciences Cloudのポートフォリオを拡充し、この新しいモジュールにより業界が直面する重大な課題の解決を目指していく構えだという。