「もっとこうなったらいいのにな。」
「あんなことができたらいいな。」
きっと誰もが一度は考えたことがあるのではないでしょうか? 私も遅刻しそうな朝や満員電車の中で、空想の乗り物を思い浮かべては、ひとっ飛びで未来館に到着する華麗な姿を想像しています(笑)。
そんな、未来の移動手段=モビリティについて考えられる期間限定の展示「未来のモビリティつくっちゃおう!~ものづくりすごろく~」を、今年2月18日から3月31日まで開催しました。
展示では「こんなモビリティがあったらいいな」が実現するまでの道のりを、立体すごろくの形で紹介しました。すごろくは「あったらいいな」の空想からスタート。仲間を募ったり、技術を集めたり、試行錯誤を繰り返したりしながら、完成へ向かうストーリーを立体的なマス目にして表現しています。
会場中央には、未来モビリティの象徴として、トヨタ自動車の技術者が制作した「トヨタミライドン」が登場! 「トヨタミライドン」は、子どもが描いた1枚の「ミライドン」の絵をきっかけに始まった未来のモビリティです。「夢は実現できる」「想像が未来をつくる」ことを子どもたちに伝えるために、トヨタ自動車株式会社の技術者たちが自動車製造で培った技術を生かし、現実世界に生み出しました。四足で歩行するリミテッドモードから、二輪バイクのようなドライブモードに変形し走行することができます。
(「ミライドン」は、2022年に発売されたビデオゲーム『ポケットモンスター バイオレット』に登場する伝説のポケモンです。)
トヨタミライドンの周りのすごろくを順番に追っていくことで、夢が実現されていく様子を思い描いていただきました。
未来モビリティ"本気(マジ)"会議を開催!
2月22日には、トヨタミライドンを製作したトヨタ自動車株式会社の土屋慎治さんと平野卓三さん、ロボットやAIの研究者である日本大学の大澤正彦准教授を招いたトークイベントを開催しました。
来館者から寄せられた未来モビリティのアイデアを、バックグラウンドが異なる専門家同士が“本気(マジ)”で議論をするというもの。ファシリテーターの私も、当日どのようなクロストークになるのかドキドキでしたが、「こんなにも注目するポイントが違うんだ!」と驚かされました。
例えば、こちらはるさんが考えた未来モビリティ「飛行機ロケットパクパクサメカー」。「海も空も移動できる、サメの形のモビリティ」で、「雲を食べて、エネルギーに変える」そう。このアイデアについて、本気で議論した一部をご紹介します。
土屋さん「飛行機と船は今もあるけれど、それらをどのように組み合わせるかがエンジニアとしては難しいポイントだなと思いました! 自分だったら、空を飛ぶためにはどんなモーターやプロペラが必要か考えて、一回つくってみて、うまくいかなかったら改造してみる。なんとか空を浮くようになったら、海の上で浮くような防水技術をどうしようか……というように、段階を経て、いろんな技術を組み合わせみることでつくってみるかなあ。」
平野さん「どうやって実現させるかを考えると…… 一人じゃできないから、仲間を集めたいですね。そして、お金を集めることや、乗るための安全性を担保しないといけないですね。パクパクサメカーを使ってお金を集める、つまり事業にしていくにはどうすればいいかなと考えていく必要がありますね。」
大澤先生「このアイデアを見て、発想が広がりました! 海も空も移動できるってことは、このモビリティのおかげで、未来の生活が変わっているということなんじゃないかと思うんです。空を飛んで、海に行く、つまり海の上に町があるというそういう世界観なんじゃないかな。未来の可能性を広げてくれるアイデアですね。」
エンジニアのお二人からは、実際につくるにはどのような段階を踏む必要があるのか。社会実装されていくには、どのような課題があるのかといった、“実現するための視点”を聞くことができました。
一方、研究者の大澤先生のお話からは、そもそも移動の概念や未来の姿が変わっているという、モビリティ単体ではなく、その先にある社会の姿まで想像が広がっていくのが印象的でした。(海の上の町、想像するだけでワクワクしてしまいますね!)
そんな議論を聞いた男の子からは、こんな意見も。
男の子「雲を食べるってことは、雲があるくらいの高さまで登らないといけないですよね。海も走れる重量で、高いところも行けるのは安全なんでしょうか……?」
この意見には、土屋さん、平野さん、大澤さんも「おお~!」と驚きの声が上がりました。
すると大澤さん「今の話すごくよかったですね! 一人で考えていてもいろんな危険とかリスクに気が付けないことが多いけど、たくさんの人と共有することで考えると、『ここはリスクだからこうしよう!』と研究が進むんです。まさに共同研究のようでした。」とコメント。専門家だけではなく、来館者からの疑問や意見が、議論をさらに深めていく様子に会場全体が盛り上がりました。
また土屋さん、平野さんからは、トヨタミライドン制作時の苦労や試行錯誤についての裏話も聞くことができ、来館者のみなさんも興味津々の様子でした。
©Pokémon. ©Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.
今回ご紹介した内容はほんの一部です。トークイベントのアーカイブ動画は、未来館の公式YouTubeで後日公開予定です。
未来のモビリティを作るのは、だれ?
私たちが日常的に使っている飛行機も、つくられたのは20世紀初めごろ。それより前の時代の人たちにとっては、飛行機は未来のモビリティだったわけです。そんな未来には当たり前になっているようなモビリティをつくるのは、技術者でしょうか?研究者でしょうか?
これまでにない未来のモビリティがつくられたとしても、社会で使えるようになるには、たくさんの壁があります。
「安全性は本当に担保できているの?」
「交通ルールはどう変わるの?」
「運転者の免許基準は?」
などなど、考えなくてはいけないことは山積みです。そういったルールや制度をつくり、受け入れて、実際にモビリティを利用するのは、研究者や企業だけではなく私たち一人ひとりでもあります。
トークイベントで大澤先生は、
「良いものができたとしても、分かってもらう・伝えていくのはすごく難しいんですよね。何が大事なのかと考えてみると、コミュニケーションを取りながら、多くの人と共感を分かち合うことだと思うんです。」とおっしゃっていました。
新しい技術は専門家や研究者が生み出してくれる!と、自分とは少し関係ないことのように感じてしまうこともありますが、トークイベントでの議論を聞いて、「未来の技術は、たくさんの人を巻き込みながらつくられていくものだ」と感じました。
「こんなのあったらいいな」と想像する人。
「それ面白い!」と共感する人。
「でも安全かな?」と疑問を投げかける人。
いろんな人の声やアイデアが集まることで、未来は少しずつ形になっていくのかもしれません。
これは、未来のモビリティに限らず、新たな科学技術すべてに共有することなのかもしれません。科学も技術もどんどん発展している今、少しでも多くの人が過ごしやすい未来って、どんな社会なんだろう? どんな移動手段があったらワクワクするだろう?
そんなことを、来館者のみなさんと一緒に想像しながら考えられる展示やイベントになっていたら嬉しいなと思います。
みなさんは、どんな未来のモビリティを思い描きますか?
関連リンク
- 期間限定展示「未来のモビリティつくっちゃおう! ~ものづくりすごろく~」 https://www.miraikan.jst.go.jp/events/202602184381.html
- 大人の本気が子どもの夢になる「トヨタミライドンプロジェクト」 https://corporate.pokemon.co.jp/topics/detail/t-14/
- "トヨタミライドン"があらわれた! ポケモンとトヨタが夢を形に https://toyotatimes.jp/newscast/072.html
- 第1章 日本人、初飛行へ https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/5/1.html

執筆: 三浦 菜摘(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
【担当業務】
アクティビティの企画全般に携わり、展示解説や発信活動を実施。地球科学の最前線を紹介する企画展(Mirai can NOW第7弾「地震のほしをさぐる」)等を担当。
【プロフィル】
自然に囲まれた幼少期を過ごし、植物や生き物が大好きに。大学では植物の化石を研究していました。以前は宮城県の放送局でアナウンサーとして、科学トピックの特集などを担当していました。
科学を多くの人と楽しめる場をつくりたいと思い、未来館へ。
【分野・キーワード】
古植物、植物生態学


